第21回 政治は男のものではない(フランス)
日本で女性が初めて投票できたのは1946年の衆院選だった。そのとき女性の衆院議員は466人中39人、8・4%だった。あれから68年たったというのに、衆院の女性議員は480人中39人で8・1%と減ってしまった。
世界各国の議会でつくる列国議会同盟(IPU)の最新調査によると、この8・1%は189カ国中163位。世界には女性議員10%以下の国がまだ34カ国あって、日本はそのお仲間だ。
フランスはEUの中で、20世紀まで女性政治参加後進国だった。その遅れをとりもどそうと、官民あげて運動を展開した。その時のポスターがこれだ。パリジェンヌが呼びかける。
「政治は男のものではない」
「あなたの地方で運動しよう」
さらに1999年、憲法を改正して「当選者の数は男女同数に」という文言を第3条に入れた。続く4条には「政党および政治団体は、法律の定める条件において、3条の最後の段に述べられた原則の実施に貢献する」と明記した。
次に2000年、「公選職への女性と男性の平等なアクセスを促進する法律」を制定して、政党に、候補者を男女半々とすることを義務づけた。これが「パリテ法」だ。
パリテ法は、候補者を男女同数にしなければ、政党交付金を減額するのだ。減額率は、一方の性の候補者と他方の性の候補者との差の半分。たとえば、A党の候補者が男性だけだったとすると、A党への政党交付金は50%減額となる。
効果はすぐに地方選で現れた。法の対象となった人口3500人以上の市で、女性議員が22%から47・5%に躍進した。ほぼ男女半々だ。
しかし国政選挙では、女性擁立より政党交付金減額を選ぶ政党が多かった。そこで2007年、政党交付金の最高減額率を50%から75%に引き上げた。2012年、下院の女性は、19%から26・2%に増えた。
政党交付金は、日本では選挙・政治活動費の大半を占める公金だ。国民1人250円を出し合って総額320億円! 世界最高額だという。
政党本部に交付され(共産党を除く)、自民党145億、民主党 85億、公明党26億、みんなの党 18億、社民党5億…。どこかの党では、うちわやワインやSMバーに化けた可能性もある。
もし日本がフランス並みの法律をつくったら、320億円のほとんどは、国庫に没収されるだろう。
(三井マリ子/「i女のしんぶん」2014年12月10日号)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?