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自分の作ったものでお客様を幸せにしたい

シリーズ:お酒作りに関わる女性

酒造りに関わる女性の活躍は少しずつ増えてきている。
本シリーズではお酒を醸す人、酒米を造る人など、酒造りにおいて重要な工程を担う女性に着目してお話を伺った。
重労働が多い中で丁寧に楽しく酒造りをする職人の姿を読者の皆様にお伝えできたらと思う。

お酒作りに関わる女性
今回は株式会社GRITHの西村ひかるさん


株式会社GRITCHは何をしている会社?


滋賀県東近江市で米・麦を中心に、スイートコーンやさつまいもなどの農作物を生産・販売している農業法人である。スイートコーンやさつまいもは事務所近くの「あいとう直売館」や「東近江アグリステーション」に販売している。

代表の鈴村さんは実家が農家だったため、幼い頃から手伝いをしており、ずっと農業を続けているそう。今から4年前の2019年にお米生産部門として株式会社GRITCHを設立した。
同社はT・K・O(楽しく、かっこよく、面白く)をコンセプトに日々農作業をしている。農業は重労働で大変であり、生き物を扱うので思い通りに行かないこともあるが、ただ作るのではなく、一工夫、二工夫手間をかけて作っていきたいという思いが込められている。
手間のかかる無農薬で育ててみたり、女性の手で作ってみたりと様々な挑戦をし、そのストーリーも含めてお客さんに共感・購入してもらいたいと考えているのだそう。
今回は、日本酒を酒米から作る「生い優せ(ういませ)日本酒プロジェクト」について取材をした。このプロジェクトは、日々挑戦を続けている代表からお酒づくりしてみない?と、従業員である西村ひかるさんと三島純菜さん(現在は他会社に在籍)に声掛けをしたことから始まった活動だ。発起のきっかけや想いについて聞いてみた。


西村ひかるさん

岡山県出身。滋賀に来たのは結婚予定のお相手が滋賀に住んでいることが理由。
農業に興味を持ったのは、中学生の時。貧しくて農作物が育たない子供達の支援を行う団体を知った時である。食べることが好きな西村様は、好きなもの、美味しいものを十分に食べることができない子供達のために何かできることはないかと考えたそう。貧しくて農作物が育たない国に住む子供達を救いたいという気持ちから農業の道に進むことを決めたという。

好きなお酒は梅酒。日本酒はあまり飲まないそうですが、自分で造ったことから少しづつ挑戦しているそう。

生い優せ(ういませ)日本酒プロジェクトについて

このプロジェクトは株式会社GRITCH様から滋賀県東近江市にある喜多酒造に協力を依頼し実現したプロジェクトである。
スタートしたのは2022年の4月。育苗から始まり、5月に田植え、10月に収穫が行われた。収穫後、喜多酒造に酒米を運び、2023年1月に日本酒が完成した。

【完成商品】
「生い(うい)」
精米歩合:36% (山田錦)
精米歩合は喜多酒造様が今までで一番削った40%を超えようという代表の提案から。
芳醇な甘い飲み口でカヌレやチーズケーキなどデザートとの相性が抜群だそう。

「優せ(ませ)」
精米歩合:64%
キレのあるお米の旨味が感じられる。お魚やお肉などに合わせるのがおすすめで、特に滋賀郷土料理「鮒寿司(ふなずし)」と合わせてみてほしいとのこと。


プロジェクト発起のきっかけ

代表の一声でもあるが、西村さんの思いとしては、米作りがメインの会社であるのにお米から作り出せる商品があまりなく、何か作り出したいと思っていた。さらにお米は出荷する時は米袋に入っていてお米自体が見えない状態になっている。商品を見て喜ぶお客様の姿を見たいというのも思いとしてあったのだそう。お米をお米じゃないものにできるそして商品としてパッと目に見える日本酒は西村さん自身かっこいいという気持ちがあり、プロジェクトの実行に至ったのである。
できた日本酒を見ると、化粧箱やラベルなど見た目にかなりこだわりを持たれているのがわかる。商品を見て喜ぶお客様の姿が見たいという西村さんの思いも伝わってきた。

農地がある東近江市は、鈴鹿山系の綺麗な水が流れている。お米作りに大切な水を地域からのものを使っている。さらに気候が年中穏やかな気候風土であるため農作物が育ちやすい環境であるとのこと。気候に恵まれた場所で酒米作りに挑戦したのだ。

お酒を造る中で目指したものは初心者の人でも飲みやすいということである。
お酒が苦手な西村さんは日本酒はきついイメージがあり、辛い・臭いという印象が強かったそう。
20代である西村さんの同世代の友人と食事をしに飲食店に行くと、ビールやハイボールを頼む方が多いそうで、日本酒に触れる機会がないのだそう。そういった同世代の方・日本酒にあまり触れない方でも飲めるようなお酒を目指しているとのこと。

“自分が造った”滋賀のお米でできた日本酒を地域の人にたくさん飲んでほしいと思っているのだそう。

大変だったことと、そこからの喜び

酒米作りでは、GRITCHさんこだわりの無農薬で造ることが大変だったそう。普通だったら薬剤をまいて終わりのところが、その薬剤が使えず、生物性の薬品を使わなければならない。
無農薬で作る上で大変なことはまず、約1,000Lという量の薬剤を手作業で撒いていたこと。1,000Lというと、お風呂の浴槽約5個分に相当する。夏の間は何回かにわけて作業を行っていて、除草剤が使えないので、除草機で雑草を全て刈らなければいけなかったことが重労働で体力的にも苦労したのだとか。
常に田んぼを観察して作業をするということの繰り返し。しかし、逆に愛着も湧いて来るそうで、育てば育つほどに嬉しさやワクワク感も感じていたそう。
雑草を刈り終わった時の達成感はほんとにすごかった!と。

酒米を作るだけでなく酒造りも手伝ったそうで、麹室に入って蒸米を運ぶ作業の大変さに驚いたのだそう。一番驚いたことは蒸米の重さと、運ぶのに早さが必要だったこと。運んでいる間に蒸米が冷えてはいけないため早さが求められるのだ。そして麹菌を振る時の角度も決まっていて、少しでも角度が違うと師匠の指導が入るそうで、酒造りの厳しさにも触れ、熟練の感覚で酒造りをされる凄さに感動したという。
麹室の中がとても暑く、とにかく汗をかくので大変だったと仰っていた。


できた日本酒を初めて見て率直に嬉しかったと笑顔で語る西村さん。 いつも米袋で出すため商品の形が見えないが、「お酒」「液体」として商品になったものを目で見たことが嬉しかったのだそう。

お客様の声をしっかり聞きたい

西村さんに今後挑戦したいことを伺った。西村さんは、日本酒を飲んでくださった方の声をもっと聞きたいとのこと。これはご自身が作る農作物全てに言えることだそうで、お客様の声をしっかり聞いて、何がよかったのかダメだったのかを調べたいとのこと。農作物は収穫時期によって味が変わったりするので、よく買いに来てくださるお客様のご意見を大切にしていきたいのだそう。
酒米造りからのお酒造りをする生い優せプロジェクトはこれからも続けていきたいそうで、もう少しGRITCHや「生い」「優せ」の名前を知ってもらい、たくさんの人にお酒が広まってほしいと西村さんは仰っていた。

好きだからできる仕事 (編集後記)

今回取材させていただいた西村さんと代表の鈴村さんはとても仲が良く、和気藹々と農業をされているのだとお話ししていて感じました。
野菜は5時から5時半で朝早く積んで出荷するそうで、西村様は、大変だけどそれを忘れるぐらい楽しくてもっと頑張りたいと仰っていて、好きでなければできない仕事だと感じました。

西村さんの名刺は名前が手書きであることがとても印象に残っています。1回手書きし始めてからなぜか続けていると仰っていたのですが、こういうマメなところからも農作業で発揮されているなと感じました。無農薬で作るには、毎日田んぼを観察しなければならない。機械に頼るなど、楽をしてしまいたくなるような場面でも最後まで丁寧に作業する職人肌な方だと感じました。

「生い」と「優せ」ぜひ召し上がってみてください!
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Written by Junna.K

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