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左遷が決まる時

人事異動は突然やってきます。左遷とは、今までより低い役職や能力に見合わない業務に配置転換されることです。会社には労働者を配置転換する権利があります。そのため、『左遷イコール違法』ではありません

海外営業部に新入社員が配属されました。名前は李(リ)さん、27歳です。彼女は他の新入社員よりも年齢が少し上でした。その理由は、母国中国の大学を卒業後、日本の大学、大学院を卒業したエリートで、それらの勉学の時間を経て我が社に入社したためでした。彼女は英語・日本語と、もちろん母国語である中国語が話せます。とてもやる気に満ちており、会社でグローバルに仕事出来る日を心待ちにしていました。

彼女が最初に取りかかった仕事は営業事務です。お客さんからの伝票処理などを主に取り組んでいました。時には彼女のミスではない伝票処理の間違いも、営業マンからの指摘に対して真摯に向き合い、修正処理のため残業することもありました。

彼女はいつも仕事が終わってから自己研鑽をしていました。自己啓発本を読んだり、MBAの本を読んだり、正しく社員の鏡のような新入社員でした。

半年ほどしたある日、営業マンと言い合いをする彼女の姿がありました。聞くと、営業の事務処理の効率を上げるためにルールを変更したいという彼女の主張に対して、ルールを変えて、もしも処理が滞ったらお客さんに迷惑がかかるからダメだという営業マンとの言い合いでした。営業部長から言わせると、ルール変更には賛成だが、時期尚早。もっと関係する部署とのすり合わせが必要との事でした。しかし、彼女には少々頑固なところがあり、「ルール変更しなければ、私はその仕事はしない!」と言い張っていました。職場に罵声が上がり、一瞬辺りが騒然としていました。

次の日から、彼女の担当はその業務から外され、仕様書やカタログの資料作成を行う業務に回されました。確かにこの仕事は各国の言語に翻訳する能力が必要であり、彼女の得意分野でした。彼女は新しい仕事を一生懸命に取り組みました。

そうして、彼女が入社してから1年半程過ぎた頃です。今度は上司に怒る彼女の姿を見ました。「いつまでこんな仕事をしなければならないのですか!?私はもっと世界中を飛び回って仕事がしたいです!!」と、彼女の昔からの野心に火が付いたようでした。上司はその場しのぎの回答で見繕うのが精一杯でした。その光景はそれ以来、何度か見るようになりました。

さらに何ヵ月かして、彼女が私のところに相談に来ました。会社からグループ会社への出向を命じられたとの事でした。出世欲の強い彼女の事は昔から知っていたので、「良かったね!いよいよ新天地?」と聞くと、暗い顔をして「グループ会社での所属先は生産管理部です。そのために、これから何ヵ月か部品倉庫への異動になります。」といい、「これは左遷ですか!?」と泣きながら訴えかけてきました。

労働組合をやっていると様々な人間模様を見ることになります。人間の汚い部分もたくさん見ることになります。恐らく、彼女の前向き過ぎるほど前向きで、頑なに進み続ける姿勢は、逆に仇となり、協調性の無い人間と捉えられたのかもしれません。実際のところは人事異動を命じた会社側にしか知る余地はありません。

私はこう言いました。「李さんはまだまだ若い。これからいくらだってチャンスはやってくるだろう。今回の出向が自分の想い描いていた形でなくても、そこで今までみたいに一生懸命やるべきだと思うよ。無印良品って会社があるだろう?そこの松井忠三会長は、左遷から這い上がった人なんだ。そういう人だっているんだ。

会社は人事異動によって配置転換する権利がある。その人事異動が左遷かどうかなんて、李さんは気にしなくていいんだよ。もしかしたら左遷かもしれない。けど、左遷先で自分の能力を最大限使って、這い上がってやればいい!会社を見返してやればいい!左遷されたと思って下らない人生を送るのか、与えられた仕事で精一杯チャレンジしてみるのか、どっちが充実していると思う?左遷されたかどうかなんて李さんには関係無いことだよ。この人事異動が左遷かどうかは他人が決める事じゃない、自分で決めるんだ!」

その後の4月、彼女はグループ会社に出向しました。あの時、彼女は私の言葉を理解してくれたようでした。きっと出向先の会社で名を挙げて帰って来ることでしょう。これからいろんな試練に立ち向かい、それでもなお自分の信念を忘れずにチャレンジする姿勢を持てれば大丈夫です。私は信じています。

会社は利益を追求する組織です。労働者の賃金や福利厚生など、本当はゼロにしたいくらいなのかもしれません。だから労働組合が存在します。ひもとけば長い歴史があり、今の世の中、組合不要論があることも理解しています。ただ、それ以前に、自分のわがままが通らない事イコール組合不要と唱える方も少なからずいます。私は自分の勉強のため、成長のために労働組合の書記長に手を挙げました。多くの方が充実した暮らしを手に入れるサポートをしたいと思っています。労働組合に属する人間として、考えなければいけない世の中の本質をこれからも見ていきたい。勉強したいと思います。




この記事を書いた私はこんな人間です。


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