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190. 宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO 【展覧会】

6月16日まで、東京オペラシティアートギャラリーにて宇野亞喜良展が開催されています。
行く時に母に言ったら、宇野亞喜良って誰? と言われて大ショックだったのですが、皆様ご存知(だと信じている)、寺山修司をはじめとするアングラ演劇のポスターやユリイカの表紙などを手掛けたイラストレーターです。最近では資生堂マジョリカマジョルカとコラボした宇野亞喜良のイラストっぽい顔になれる「マジョリ画」が記憶に新しいです。

こういう絵の人

さて、今回の展覧会は初期から最新作まで、イラストに留まらない幅広い仕事を網羅した大規模な展示です。
900点以上という圧倒的物量に、果てしなさを感じクラクラしながら見て参りました。
ちなみに一部を除いて写真撮影可能でした。嬉しい。

展示は、画業を始めた最初の頃は時代順、その後仕事の幅が広がるとジャンルごとに章立てして紹介していく構成でした。イラストレーターとしての顔しか認識していなかったので、こんなに幅広い仕事を手掛けているのね……! と驚きの連続。
中には渋い侍を描いた歴史小説の挿絵など、宇野亜喜良だよと言われても、本当に!? と思ってしまうような、全く絵柄の違う作品も多数ありました。

1972〜73年には福島正実が編者のSF小説シリーズのカバー絵を担当。
シュールな絵で物語の世界観を表現しています。


それもそのはず、宇野さんは学生の頃画家に師事していたこともあり、絵の基礎がきっちり身についているからこそ、様々な画風に応じられる技術をお持ちなんですね。
さらにその技術に加えて、類まれなデザインセンスで独自のスタイルも生み出していったわけです。結果として”宇野亞喜良の絵”が確立されたために、宇野亞喜良と言えばアンニュイな女の子というイメージが流布したようです。
展示の最後の方にあったインタビュー動画でも、自分のスタイルにこだわりがあるというよりは、仕事として求められていることをやるプロフェショナルの姿勢を語っていらっしゃいました。

だから今に至るまで新しいジャンルにも常に意欲的に取り組んでいて、誘われて短編の実験的なアニメーションを作ってみたり、舞台美術や舞台セットの制作に携わったりと本当に活躍の幅が広い。
いわゆる宇野亞喜良スタイルも、ずっと同じという訳ではなくて新しい表現を見出したくてエロチシズムを押し出したりと、変化しているようです。

様々な絵柄が混在し、特大ポスターが天井まで並べて貼られている部屋も圧巻だったけれど、わたしは絵本の展示が一番楽しかったです。

色々あったポスターの中の一枚

宇野さんの絵本は何冊か見たことがありますが、今回の展示では知らない本も多く出展されていました。それぞれに絵の具の色合いや画風が工夫されていて、ストーリーも面白そう。読んでみたい作品が沢山ありました。
特にこどものともの怪異譚「ぼくはへいたろう」が気になっています。

宇野亞喜良と寺山修司のキリスト観の違いを描いたイラストも面白かったです↓


また最後に仕事とは別で、個展のために制作した立体物や、俳句をテーマにした新作も展示されていました。クライアントのある仕事と違って自分で全て決められる自由さを好んでいるそうで、本人の空想の世界を垣間見るような遊び心の感じられる制作物でした。
俳句は本人も詠むそうで、松尾芭蕉や寺山修司らの句をモチーフにしたユニークな絵が印象的。画中に書かれた俳句自体も味わい深いです。

イラストレーター・デザイナーの展示を観にきたのに、何だかんだ言葉を扱った作品が一番しっくりきてしまったのは、なんだかなあとも思いますが、図らずも自分が言葉から想像して自分なりの情景を頭に描き出すのが好きなんだなあと再確認することになったのでした。

とにかくジャンルも方向性も様々な、濃密な展示空間でしたので、誰しも気に入る作品があるのではないかなと思います。気になった方はぜひ訪れてみてください。

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