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138. こぐまちゃんとしろくまちゃん 【展覧会】

子供の頃から好きな絵本、「しろくまちゃんのほっとけーき」の作者、わかやまけんさんの展覧会が世田谷美術館にて4日まで開催中です。
ほっとけーき以外の作品は全然知らなかったのですが、しろくまちゃん可愛いしなあ、ということで観に行ってきました。

元々紙芝居からキャリアがスタートし、それから絵本や挿絵などの仕事、代表作である「こぐまちゃん」シリーズ、その後の仕事、と時代を追って展示が進みます。最も展示スペースが割かれているのはやっぱり「こぐまちゃん」のコーナー。
でも、「こぐまちゃん」シリーズとは全く絵柄・作風は違うのですが、「きつねのよめいり」や「おばけのどろんどろん」などの作品も、何か心を引きつける魅力があって、読んでみたくなりました。どの作品でも、画面の構成とか色使いなんかが秀逸なんですよね。


で、肝心の「こぐまちゃん」コーナー。
驚いたのが、この絵本は1冊ずつリトグラフで制作されているのだそうです!
家に帰って確認してみますと、確かに色ごとの販を重ね刷りしてあるのが分かります。触るとでこぼこしていて、細かな線のゆらぎなどにも手作業のぬくもりが感じられます。全然知らなかったなあ。
大変な手間暇をかけて刷られた本の一冊が手元にあると思うと、これまで以上に大切にしたくなりました。

また、シンプルな線と色で構成されていて、一見描くのが簡単そうなイラストも、そのデザインから色に至るまで、考えに考え抜かれてこの形になったとのこと。たゆまぬ努力が多くの人に愛されるキャラクターを生み出したんですね。(正直じっと見ているとこぐまちゃんの目とか水滴の表現とかわたしは怖いんですが(笑))

シリーズ随一の人気を誇るという「しろくまちゃんのほっとけーき」は特に原画が沢山展示されていて、時代に合わせて細かく変わる小道具(冷蔵庫の形や洗剤の表現等)などの制作の裏話や、ちょっとした目の位置の違いで全く印象の違う下絵などもありました。
「こぐまちゃん」シリーズを改めて見るとどれも魅力的で、手に取ってみたいと思わせるものばかりでした。でもやっぱり「しろくまちゃんのほっとけーき」が一等大事な存在です。
”絵だけで物語が分かる絵本”をモットーにしていたとのことですが、わたしは森比左志の独特な言語感覚も好きだったなあ、ということで幾つか引用しておきます↓

ひとつ ふたつ みっつ
たまご ぽとん
あっ われちゃった

こなは ふわふわ ぼーるは ごとごと
だれか ぼーるを おさえてて

このリズム感。読み聞かせなどしてもらうと、耳に残ってとても楽しい。
絵と言葉がぴったり合わさって、これ以上にない形になっている感じです。
会場では、自分の好きな作品が他の多くの人からも愛されているのだということが実感できて何だか嬉しくなりました。


それから展示の最後に、10年間にわたって描き続けた雑誌「保育の友」の表紙絵がずらっと並んでいました。
これらの作品群が、絵本と違ってストーリーはないのに、一枚の中から自由に想像できる楽しさに溢れた絵に仕上がっていて素敵でした。印刷だとのぺっとした印象が拭えませんが、原画で見ると水彩の色彩の柔らかさがよく分かりました。
たまにその絵とともに掲載されていたという短文も添えられていたのですが、それもうきうきわくわくする言葉が詰まっていたので、願わくば全ての文章を紹介してくれていたらよかったのにと思ったりもしました。
特に気に入ったのは象の背中に子供達が乗っている絵。下は海だし、象に乗って冒険中なのかな? とか、どこかの島からやってきたのかな? とか好き勝手妄想が膨らみます。他にも色々な動物や人が優しい色彩で描かれていて、それぞれ幾らでもおとぎ話を紡げそうな、示唆に富んだ画面なのでした。



ふらっと観に行った感じですが充実の内容で大満足でしたし、会場はゆったりと空間が取られていて見やすく、グッズコーナーも子供向けの商品が充実していて、親子で楽しめる展示だったと思います。
今後山形と岐阜にも巡回予定とのことで、お近くの方は遊びに行ってみてはいかがでしょうか。
「しろくまちゃんのほっとけーき」は名作絵本なので、読んでいない方はこちらも是非に!

ではまた。

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