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74. フリースタイルな僧侶たち 第五八号 特集:本気で地獄 【フリーペーパー】

お坊さんたちが、仏教やその周辺のことについて考えたり紹介したりするフリーペーパーです。

2020年に編集部が変わってリニューアルされたそうで、これはリニューアル後初めての冊子。
コンスタントに冊子自体はもらっているのですが読むのが追いつかず、リニューアルされたことも知らず、ようやく読みました。

今号の特集は地獄、ということで頭から尻尾まで地獄話が続きます。リニューアル前とはテーマ設定の仕方や連載、デザインまで全て少し変わったような気がします。なんというか、若者ウケしそうな感じ。

まず表紙が面白いです。
様々な人が「地獄」を感じたことについて語ったことが羅列されています。
“月の残業180時間”とか読むだけでも辛いものから、“下戸なのに肝臓が悪い”なんてどう反応すべきか迷うものまで色々です。じっくり読むと意外と時間がかかるけれど、千差万別の地獄が分かって興味深いです。
特に驚いたのは「生まれつきまぶたの裏にほくろがあって、常にこすれて痛い」というもの。まぶたの裏にほくろなんてできるの? というところがまずびっくりですし、手術するにもまぶたってひっくり返せないですから多分切開しないといけなくて怖いなあ。

自分が地獄だと感じるシチュエーションに思いを馳せてみましたが、ここから絶対に這い上がりたいと願うほど嫌な場所にいた記憶はすぐには思い出せませんでした。
その時々で嫌なことはままありますしその時は地獄だと思っているのかもしれませんが、しばらくしたら忘れるし、地獄というほどどん底を味わったことはないのかもしれない。何ともお気楽で幸せなことだと自分でも思います。


そして今号のメインはみうらじゅんへのインタビュー。
わたしのみうらじゅんのイメージは勝手に観光協会の鍾乳洞なんですが、「見仏記」や「アウトドア般若心経」といった仏教にまつわる活動もけっこうされていたようで。そういった繋がりでインタビューが依頼された模様です。
インタビューでは、何となく話している姿が浮かぶような独特なテンポで、地獄についてゆる〜く雑多に喋くっています。
読んでいてものすごくためになるとかではなくて、じわじわと考えさせられる言葉が多かったです。
本人も「地獄とは自分にとってなんなのかについて問うことに意味がある」と文中で言っていますし。

なぜ地獄というものが生まれたのか。人々は地獄を思うことでどうなるのか。そういうことがインタビュー中でも考えられているのですが、読み終わっても問いが自身の中に残っている感覚です。
語り口はゆったりしていつつ、侮れません。


それから目を奪われたのが、タイの「地獄寺」についての記事です。
地獄研究家・愛好家の椋橋彩香さんという方と編集長が、地獄寺について話しています。

そもそも地獄寺とは。
地獄を視覚的に表して、地獄に落ちないよう善い行いを促すために作られているらしいお寺だそうです。極楽浄土を体現する本殿とセットで存在する、奇妙奇天烈な施設の模様です。
言葉で表すのは非常に難しいので実際に画像検索をして見て頂くのがよろしいかと思いますが、キッチュでグロテスクな像(やたら手足や舌が長い、目玉をひん剥いている、血の涙を流しているetc)が境内にうじゃうじゃいるみたいです。
古典的な地獄の風景はもちろん、現代人の感覚に合わせてアップデートされた3D地獄絵図が広がります。

わたしたちからしてみると、秘宝館やB級スポットのように見える地獄寺。
でもタイの人たちの感覚的には特に面白くもなく、興味の湧かないものなんだとか。
コロナが落ち着いたら東南アジアに行きたいと思っているので、ぜひこのタイの地獄寺なるものにも訪れたいと思いました。それでタイ人の感覚も実際に目の当たりにしたい。


わたしにとって地獄は身近な言葉ではありませんし、辛いことについて「地獄だ〜」と言う感覚もいまいちピンときません。
だからこそ今号を読んで、地獄を感じている人々の心理を知りたいと思いましたし、極楽と地獄、天国と地獄など安直なキーワードになりがちな言葉を改めて考えてみようという気になりました。

仏教にもとりたてて興味があるわけではないですが、なぜか毎号手に取っている「フリースタイルな僧侶たち」。
今回は知的好奇心を刺激される内容でした。今後も楽しみです。

ではまた。

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