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30. 泉屋博古館(前編) 【展覧会】

古代中国の青銅器からインスピレーションを受けた現代の鋳金作品の展示「泉屋ビエンナーレ2021 Re-sonation ひびきあう」が見たくて、散々悩んだ挙句一泊二日でさくっと京都に行ってきました。

結果的には一緒に展示されていた企画「中国青銅器の時代」の方が面白かったのですが、無料配布の資料がとても充実していて、きちんと読んでから記事にまとめたいので、今回は前編としてもう一つ同時開催されていた展示「伝世の茶道具」の話をしようと思います。


泉屋博古館とは?
住友家旧蔵の美術品を保存・公開するために設立された美術館。
京都と東京にあるが、東京の方は現在リニューアルのため休館中。
京都の方は青銅器館と企画展示館に分かれていて、間に中庭があります。中庭からは丁度紅葉中の東山が見えました。(ヘッダー画像参照)
前庭もあったらしいのですが今回は見ませんでした。
建物の細かい意匠まで凝っていて居心地の良い空間でした。


【伝世の茶道具 珠玉の住友コレクション】
住友家が代々集めてきた様々な茶道具が、小振りな展示室ながらも充実したラインナップで展示されていました。
書の良し悪しも茶杓の違いが茶席に及ぼす影響もさっぱり分からないわたしでも、たっぷり1時間ほどしっかり楽しめたので、素人目にも優れた技巧の作品や、わたしの好みに合ったものなどご紹介しますね。


目を引いたのは最初のスペースに展示されていたバラエティ豊かな香合。
月日貝という貝に金の椿の蒔絵を施したもの、ユーモラスな猿みたいな顔をした丸い狸香合、螺鈿で布袋さんの姿をあしらったものなど。
茶席にこんな可愛らしいものが置かれていたらさぞかし楽しかろうと思います。

それから同じようにバリエーション豊かで表情の違いが面白かったのが茶入です。
林檎みたいに丸くて蓋がまるでヘタみたいに見える容器には、名前もそのまんま、林檎を意味する「文琳」です。
釉薬の具合が柿そっくりに見えるものもあるし(形は潰れ気味の球も、干し柿の如く細長いのも)
器の形を怒り肩とかなで肩とか言うのも、わたしには新鮮で興味深かったです。
そんなとりどりの茶入も仕覆に包み込まれると全く見ないのですが、茶人たちにはその袋も趣深いようで、じっくり鑑賞されている方の姿が多く見受けられました。


個人的な趣味では好きな形の花器と釜が一つずつあって、まず

・古銅象耳花入 銘キネナリ
やっぱり古代中国の青銅器の文様が好きなので。古銅に古代っぽい柄を施したフラスコ型の花器です。
艶のある黒色は品があって、また展示のされ方も畳の上だったので一層雰囲気が出ていました。

・古天明姥口釜
大きい図体に対してかなり小さい蓋がついていて(だから、すぼまった口の老婆を思わせるということで姥口と言うらしい)、蓋から胴体にかけて同心円状の模様がつけられています。
余計な飾り気のないさっぱりした様と、水紋のように見える模様がお気に入り。
もし普通に家で使えたら、これ一つあるだけで様相ががらっと変わって素敵な空間になりそうな気がします。(もちろんまずはこれに見合った部屋にしなければ駄目ですが)


実物を見ていない方に画像もなしに伝えるのは大変だ……。
ともかく自分に縁のなさそうな展覧会でも、意外と収穫があるかもしれませんよ、ということで……(笑)

とはいえ、充分楽しめましたが、高校の文化祭でお抹茶とお茶請けを頂いたことがあるだけの人間には、ぼんやりと全体を眺めて気に入ったものがあれば注意深く見る、くらいのことしか出来ないので、実際の茶席をイメージして組み合わせの妙などを楽しめたら、より豊かな時間になったことでしょう。ちょっと口惜しい。


泉屋博古館。
関西に行く際には必ず寄りたい美術館です。
今回の小旅行は他にも新しくお気に入りのお店が幾つかできたり、大変有意義な時間を過ごせたので、これからは大阪ばっかりじゃなくて京都にもちょくちょく行きたいですね。

再来週には後編として青銅器の魅力を語れたらと思います。
ではまた。


後編書きました。合わせてご覧ください。


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