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4. 観用少女(プランツ・ドール)

前回夢に向かってひた走る少女の話をご紹介したので、少女繋がりで今度は世にも美しく、気に入った人間には極上の微笑みと幸福を授ける少女型人形、観用少女の話を。

作者は川原由美子さん、他の作品は読んだことがないので分かりません。

物語は一話か二話完結で、様々な背景を持つ登場人物と、その人と縁のあった観用少女の関わり合いが描かれます。

さてさて先程から説明もなしに連発しております観用少女とは、

途方もなく高価で、この世のものとは思われぬほど美しい姿をし、ミルクと砂糖菓子と愛情を栄養として育つ(ソラノマ+plusの紹介ページより)

人形のこと。
本当に自分を愛してくれるひとに出会うまあで眠り続ける少女が見せる微笑みは何とも愛らしく、登場人物たちが溺愛するのも頷けます。

ストーリーは正直、しっくりくるものからあまり響かなかったものまであります。
でもこの作品は表情の描き方と言葉の選び方が秀逸で、主人公の心情をつぶさに伝えつつ軽やかに世界を形作るので、一編一編がきらめく玉のように結晶して見えます。
飽きるとか読むのが面倒になるとか、そういうことはありません。

それから作品に奇妙な安心感をもたらしているのが、唯一のレギュラーメンバーである、観用少女を売る店の店主です。
ちょっといかがわしい雰囲気のある、口のうまい彼は中華風ファッションに身を包み(毎回違うデザインなのでご注目!)、売る気があるんだかないんだかな商売をしています。とらえどころがないけれど、この現実と非現実のあわいのような世界観にぴたりとはまっているように思います。
この記事を書くためにwikipediaを覗いたところ、登場人物には名前がないとあり、そういう細かな部分同士が呼応して、全体の空気を形成しているのでしょう。

一頃わたしも人形の話を多く書いていた時期がありましたが、人よりも美しく、余計なことは話さず静かにそこにいる人形は、不思議な魅力がありますね。
「観用少女」は今pixivコミックに掲載されていて、週一の更新で読む度に、数年前に一度ブックオフで見掛けた時に買わなかったのが悔やまれます。

幻想系の作品の好きな方には人形もお好きな方が多いようなイメージがあります。しかしあいにくわたしは立体としての人形の素養がなく、結びとして語れる言葉を思い付けません。
仕方なしにインターネットをこねくり回していたところ、季刊エスの2004年春「人形人間時代」特集号に大好きな漫画家、楠本まきさんと鳩山郁子さんの対談が載っていることを知りました。
「人形人間時代」と言えば思い起こされるのは稲垣足穂ですが、エスの方も是非とも入手しなくては。

ではまた。

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