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119. 長靴ノート 秩父市を読み解くヒント 3 【フリーペーパー】

秩父市役所のやぶぐらし課というところが出しているフリーペーパーです。(やぶぐらし課って何だろう……)

地域活性化のためのフリーペーパーって色々な地域が出していてすごく沢山あるんですが、このフリーペーパーは、こういう場所で住みやすいです、とかこういう制度があります、とか移住に直結する事柄ではなくて、こんな人がいますと人を紹介しているのが何だか親しみがわきます。この人に会ってみたいな、と思うし、この人がこんな暮らしをしている秩父が気になるな、ともなりやすいと感じました。

紹介されている人々はそんなに多くないし、言葉も程よくくだけていて読みやすいです。

話の中で印象に残ることのあった方々を(ほぼ全員ですが)以下に挙げておきます。


・居酒屋「高虎」
年に一回、お祭りの前日、宵宮にだけ現れる居酒屋だそうです。
地元のおじちゃん5人組が切り盛りし、近所の人たちが飲みにくる。この地区では歩いていける場所に飲み屋がないそうで、大事なコミュニケーションの場になっているのだとか。
仕事帰りにふらっと寄れる飲み屋がないのは寂しいけれど、“毎年必ず現れる場”があるのは素敵だなあと思います。お祭りの前だからきっと皆わくわくしているだろうし、話も盛り上がりそう。よく知っている面子でも、いつもとは違う姿が見られたりしそうです。

・猟師さん
害獣である鹿を狩って、捌いて、加工販売をしている人のインタビュー。
無駄なく美味しく鹿肉を利用するためにどんな活動をしているかが書かれていました。
害獣認定して駆除しているのは人間の身勝手な都合なので、せめて無駄にせず余さず利用するよう心がけるのはやっぱり大事だと思います。猟師の方の姿勢はさておき、記事の書き方がけっこう利己的だったので違和感がありました。
あと、

鹿は全体重の2割しか肉が取れない

と書いてあって、えっ、それしか食べられないの!? と驚き。足が細いし雄は角が大きいからかしらん……。


・葬儀社の方
葬儀社に勤めている方のお話。
「昔はどこも家での葬儀が当たり前だった」「10年くらい前から会館葬が増えてお葬式のやり方が分からないという相談がくるようになった」と仰っていて、昔は家でお葬式をやっていたのかと初めて知りました。
考えてみれば、フィクションの世界ですが、障子を取っ払った大きな部屋に親族が集まってお葬式を執り行うような様子を見たことがある気がします。
多分都会だと10年どころかもっと前から地域でお葬式をすることは少なくなっていて、地方だからこそその場所ならではの催事が根強く地域の中で受け継がれていたのではないかと思います。
以前は生まれるのも死ぬのも自宅だったんだなと思うと、昔の人たちと現代人では人生観もかなり違うだろうと想像されます。この辺り、おそらく民俗学の本などに詳しそうなので、きちんと調べてみたいところです。

・編みぐるみが得意なおじいちゃん
30代の頃にはまって以来、78歳の今でもずっと編み物をしているおじいちゃんのお話。
若い頃は建設関係の仕事をしていて、昼休みにブルドーザーの上で編み物をしていたほどだそうで、話し振りも作った作品もとても可愛らしいです。
この間のおかんアートと同じで、作品がコミュニケーションツールとして活躍していて、編み物教室なんかも開催しているのだとか。
こんなに長い間楽しく続けられる趣味に出会えるなんて、何だか羨ましい気持ちです。

・子育て中の方
地域の盆踊りについて紹介していたのですが、
最初は円を作って踊っているのですが、だんだん動きが激しくなって最後には、みんなで右へ行ったり左へ行ったり。最後には笑ってしまうほどの面白い動き。
とあって、一体どんな踊りなんだ? とすごく気になりました。


色んな職業の、色んなことを考えている人が至る所に暮らしていて、その中で日常で会うことがあるかもしれない人なんてほんの一握りです。それで実生活では会うことのないかもしれない誰かに紙面で会えるというのはなかなか面白いことです。しかもその人の暮らしている場所に行けば実際に会える。
こういう地域紹介も良きですね。

ではまた。

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