ねぶたに見る動態デザイン

8月も終わりに近づいて参りましたが、今年の夏は皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
今月は我々GK社員も1週間の夏休みを頂いておりました。その休みを利用し、わたくしは青森のねぶた祭りを見てまいりました。


青森ねぶた祭は東北三大祭りの一つに数えられるお祭りで、巨大な灯籠を山車に載せ、お囃子や跳人と一緒に行列を作りながら街を練り歩くというものです。その大きさは幅9m、奥行き7m、高さは5mにもなり、紙で作られ内側から照らされて光ることから「紙の彫刻」や「灯りの彫刻」などとも呼ばれています。


ねぶたは伝説や伝承を題材としており、多くは戦いの場面等が描かれます。その造形はまさしく動きの一瞬を捉えており、そこに表現される武者はいずれも左右や前後に体を大きく揺らし、逆立つ髪や翻る着物、張り詰めた筋肉などが生き生きと表現されています。その躍動感と力強さは、見る者にとてつもない感動を与えます。


山車には車輪がついており、ねぶたを動かす曳手達と指揮を執る扇子持ちとが息を合わせて山車を移動させていきます。ただ移動するだけではなく 前後に大きく傾いたり旋回したり、まるで生きているかのような動きをさせることで、ねぶたはより美しく、躍動的にみえるのです。


ねぶたで描かれる武者達の体は戦いの中でもつれ、重なり合い、その造形は決して写実的なものではありませんし、手や足の位置も正確ではありません。ですがそうして意図的に崩されたバランスが動きのエネルギーを生み、全体の構成や武者同士の関係性によってそのエネルギーを殺さずにバランスを取るというデザインは、まさに我々が日々取り組んでいる動態デザインであると感じます。


造形として動きを捉え、またその全体が動き出したときに最も躍動感を感じさせるねぶたのデザインを目の当たりにし、我々が日々取り組む動態デザインの真髄を東北の夏祭りに見ることが出来ました。

(CMFG動態デザイン部デザイナー:TA)


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写真は、今回の祭りで個人的に最も心動かされた作品「浄焔日本武尊」を撮影したものです。


JRねぶた実行プロジェクト「浄焔日本武尊(じょうえんやまとたけるのみこと)」 作: 竹浪 比呂央氏

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