「UXとCMFGデザイン」

顧客体験(UX:ユーザーエクスペリエンス)をデザインするという概念はアップルストアーが日本に上陸した2003年頃には聞かれるようになってはいたが、あくまでサービスデザイン領域の話だと思っていた。ところが近年のデザイン概念の多様化と我々の実務も大きく変化してきた中で、実は身近な行為であったと思い至るようになった。そこで今回はUXデザインとCMFG(カラー・マテリアル・フィニッシュ・グラフィック)デザインの関係性について、CMFGデザイナーの視点で少々書いてみたい。
 
プロダクトデザインの役割の一つに、エンジニアと協業しながら対象物の機能性をユーザーに適切かつ明確に伝えるということがある。それだけではデザインとして十分とは言えないため、使い手との関わりで生まれる動き、実際に使われるシーン、生活環境で活きるモノのあり様といった、モノとコトの関係の本質を追求する姿勢で我々はモノづくりを行っている。CMFGデザインにおいては営業、マーケティングといった顧客接点側の関係者との協業がより多いこともあり、ユーザー理解を深めながらその使い手の感情に直接訴えるデザインとして、時にテーマ性を持たせながら情緒的な訴求ストーリーで提案を行うことも多い。それが今日UXデザインの分野で「カスタマージャーニー」と呼ばれるものに通じる提案手法である事に気がついたのは、比較的最近の事である。また、顧客訴求価値に戦略的な説明が求められるCMFGのデザイナーがその組み立てに長けていくのは、これも自然な流れであったように思う。
 
webや宣伝広告のようなUXデザインが本業とも言える業界に目を向けてみると、UXデザインに用いられる表現技術の進化には近年目を見張るものがあり、映像や体験を簡易に具現化させる専用のソフトによって、より効率的に提案が行える環境が整ってきていると感じる。一方、体験価値とは本来目に見えないものであり、当然ながら定型的に表現できるものではない。よって価値の魅力をどこに設定しどう伝えるかは無限の可能性があり、その意味では今後UXが求められるあらゆるシーンで新しいデザインが生まれてくる予感があり、見た目だけではなく触感も伴うCMFG視点でもチャレンジのしがいがあると感じている。
 
それでは、この分野で我々GKダイナミックスの強みは何であろうか。それは自らが体験しながら生み出す、合理的かつ感性的に「気持ち良く感じる行為のデザイン」と、魅力的な「モノとしてのアウトプット」を、高い整合性で提供できる事、これに尽きるのであろう。今まさに、これを極めなくてはいけないと感じている。

(CMFG動態デザイン部 デザインディレクター H・S)
 

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