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装幀「闇に用いる力学 特装版」001

坂野公一

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「闇に用いる力学 特装版」竹本建治著(光文社)

本書は、著者の竹本健治さんが約25年の歳月を費やして書き上げられた三部(赤気篇、黄禍篇、青嵐篇)からなる超大作で、その刊行を記念して通常版と特装版、そして電子書籍版の3つのパッケージで販売される運びとなりました。2021年7月28日発売予定。特装版の価格は33,000円(税込)、限定300部で現在予約受付中です。詳細は下記光文社特設サイトをご覧ください。
光文社特設サイト 

坂野は本作品の装幀者としてご指名をいただき、通常版、特装版、電子版のトータルなデザイン・監修を担当しています。
そもそも特装版や愛蔵版は、豪華な匣に収められることが多いものです。もちろん本書も豪華な匣に収められます。光文社担当編集者・鈴木一人氏からのご依頼第一声も「匣、どうしましょう?」だったように記憶しています。つまり、匣に機能性と付加価値を両立して持たせることが、最重要課題のひとつでした。

ここでふと、本書のデザインのご依頼をいただいたのはいつごろだったろうかと思い起こしてみます。もはや正確な時期は定かではないのですが、実はかなり前からこのお仕事に携わってきました。
手元のスケッチブックを捲って記録を辿ると、2017~18年頃には特装版の匣のスケッチめいたものを描いている痕跡が認められ、恐らく依頼の電話を受けながらスルスルっとメモ的に描き記したのかなと思いつつ、それらを見返しています(いずれお見せします)。
もしかしたら、「今度こういう本を作ろうと思っているんですよ~」という打診レベルのお話をいただいたのは、もっと前だったかもしれません。

とはいえ、まずは書籍の本体を作ることが先決。InDesignで本文のレイアウトフォーマットを作製し、その後組版が完成、そのゲラを元に竹本さんが校正&修正を重ねる時間をデザイン検討に割り当てる形で作業が進む中、気がつくと3年近くが経過していました。
今年に入って発売日が7月28日に決定し、それに向けてより具体的な部分のデザインを詰める作業を進めてきましたが、この度いよいよ完成の目処が立って非常に感慨深いです。現在はデザインにかかわる部分はすべて校了しており、印刷所、匣業者の皆さんが鋭意製作を進めて下さっています。ありがとうございます。
ちなみに、トップの写真はほぼ完成品に近い試作品を撮影したものです。

昨今、書籍が刊行される際に「特装版」や「愛蔵版」といった豪華な装幀で作られることは珍しくなってきたのですが、それでも「勝負作」はこのような豪華本で展開されることがあります。特装版を作るにあたっては、通常の書籍装幀とは違う部分も多いため、制作・製作時に様々なイレギュラーな事態が起こりやすく、解決までに一進一退を繰り返したり関係者各位にご迷惑をおかけしたりと、完成までの苦労は正直誰かに伝えずにはいられないものがあります。でも、実はそれも楽しかったり……。そして恐らくこういった情報は、今後誰かがこの手のお仕事をされる際に役に立つであろうと確信します。また、竹本さんのファンや本が好きな方々にとっては、モノとしての本が完成するまでのストーリーとして、興味深く読んでいただけるのではないかと。
そんな思いから、本書のデザインをどのように考え作ってきたかを、僭越ながらここでご紹介していきたいと思います。よろしければご覧くださいませ。

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