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秋春制移行議論を経て感じたチェアマン制の限界について



はじめに

26-27シーズンから秋春制に移行することが決定した。
個人的には一貫して秋春制移行には反対の意見だ。

しかし決定した以上は、求心力と推進力を持って臨んで欲しいと思う。

なのだが、今回の秋春制移行の議論についてはずっとモヤモヤ感が付き纏っている。そしてこのモヤモヤ感の正体こそ、まさに求心力の不在にあると感じている。


まず始めに言っておきたいのは、
ここで書く内容は野々村チェアマン個人に対する批判ではない。

野々村チェアマンの仕事に対する具体的な批判も書くが、あくまでもそれはチェアマン制が限界を迎えているという視点での意見だ。
チェアマンという立場では、できることよりもできないことの方が多く、全体での合議制を基本としているためスピード感を持って改革を進められないジレンマの方が多いと思う。


チェアマン制からリーグ会長制に移行すべき

日本にプロスポーツリーグが野球しかなかった1993年にJリーグを創設するのにチェアマン制は非常に意味のある制度だったと思う。
地域密着を掲げて企業スポーツと一線を画し、日本社会にスポーツ文化を根付かせるためには利潤の追求ではなく、理念の追求を推し進める公平中立を旨としたチェアマン制はとても意義深い存在だった。

その後に誕生したプロスポーツリーグが地域密着を基本としているのを見ると、Jリーグの創設は日本社会の形を変える大きなインパクトがあった。

しかし創設から30年を経たJリーグでは、もはやチェアマン制は役割を終えていると感じる。

秋春制の移行により「Jリーグを世界で戦う舞台へ」と推進していきたいのであれば、Jリーグはチェアマン制を廃しリーグ会長制へ移行するべきではないかと感じている。


秋春制移行議論における最大の不満

今回の秋春制移行議論で一番不満に感じる点はサポーターの不在だ。
Jリーグが秋春制の具体的なアイデアを提案して、それをJクラブが検討する。
常にこのサイクルで議論が進み、Jクラブが個別にサポーターの意見を聞くことはあっても、Jリーグ側がサポーターの意見を気にしているようには思えなかった。

まるで秋春制移行議論はJリーグとJクラブが議決する案件で、サポーターの意見は関係ないとでも言いたいかのように蚊帳の外に置かれているように感じた。

Jリーグはサポーターに正しく内容を伝えることの難しさのジレンマを口にしていたが、サポーターの意見は聴かずにクラブの同意を得ることのみに注力していたのだから伝わるはずがないだろう。


秋春制移行への最も分かり易い議論の形

Jリーグ側が提案する情報をJクラブが検討して意見を述べる。
結論ありきのこれは、はたして議論と呼べる話し合いなのだろうか?

Jリーグという大企業がイニシアチブを握り、Jクラブという下請け企業と納得できるまで時間を掛けて充分な話し合いを続けてきましたというアリバイ工作にしか感じられなかった。

秋春制移行議論における最も分かり易い議論の形は、
秋春制に対して賛成と反対の候補者2者によるリーグ会長選挙だったのではないのだろうか?


E-1選手権での決定的な不信感

チェアマン制の限界は以前から感じていたが、決定的な不信感に繋がったのは昨年(2022)7月に開催されたE-1選手権だ。

当初このE-1選手権はパリ五輪代表で参加する予定だったが、急遽森保監督の鶴の一声でA代表での参加となった。
とはいえ国際試合期間(以下IW)に開催される大会ではないので海外組は招集されず国内組での編成となった。
その結果、横浜FM7名/広島6名という非常に偏った編成が行われた。

これから終盤戦へ向かう大事なシーズン中に行われたE-1選手権にも関わらず、Jリーグのトップである野々村チェアマンはこの異常な編成に対して何の異議も唱えなかった。

1クラブ最大3名まで、などの制約を設けていれば恐らく宮市亮は代表には選ばれず怪我をしなかったのではないかと想像する。

結果的に2022年は横浜FMが優勝したが、終盤に川崎に猛追された。もし川崎に逆転優勝を許していたらE-1選手権での選手編成は大問題となり、森保監督が猛批判に晒されると同時に、この編成を受け入れた野々村チェアマンも森保監督以上の批判に晒されたのではないのだろうか。


日本代表 < Myチーム

秋春制移行の目的はJリーグの資金力・競技力向上で、将来的に日本代表の30%程度が国内組になるのが理想と言っているが(こんな発言自体5年前でも考えられなかったのに)、欧州組優位の情勢はしばらく続くだろう。

今後もIW以外に行われる日本代表の試合は五輪組とのスケジュール調整を含み国内組で編成されるだろう。さらに欧州組の所属クラブとの調整が上手くいかず招集できない状況も発生するだろう。
そうなった場合、先述のE-1選手権のように日本代表及びJFAとJクラブの利益相反の状況は頻発することが予想される。

その時にJリーグのTOPの立場にいる人物はどちらの方向を向くのだろうか?

日本人である以上、日本代表の活躍は嬉しい期待したい。
でも、Myチームに対する愛情はそれを超えている。
日本代表vs大分トリニータの試合があったら、迷うことなく大分を全力で応援するぜ、絶対!!!


JリーグのTOPはJクラブの代表であるべきだ

Jリーグチェアマンが日本社会におけるスポーツ文化の醸成を考えるのは立派なことだと思うし、これまでの活動はもっと賞賛されても良いと感じている。
しかし、その志はリーグ会長制に移行しても引き継がれる文化に既になっていると思う。

「Jリーグを世界で戦う舞台へ」

Jリーグは護送船団方式を止め、賞金も傾斜配分に切り替えることでJリーグにビッグクラブの出現を願っている。

世界で戦えるJリーグを本気で目指すのであれば、JリーグのTOPに立つ人物はJクラブの代表であるべきだ。
利益相反する状況に出会ったら、求心力を発揮して迷わずJクラブの利益を守ることを優先する人物にJリーグを率いて欲しい。

秋春制移行を実行するのであればチェアマン制からリーグ会長制への移行を真剣に議論する時期に差し迫っていると感じる。


公平中立を旨とするチェアマンの舵取りでは乗り越えられない波がやってきている。



(文中敬称略)

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