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【暴論11】大停電が起きた方がよかった

2022年3月22日に東京電力管内で電力使用率が100%を超え、大規模停電が起こると危惧された。結果として停電は回避されたが、個人的には大規模停電が起きた方がよかったと思う。

大規模停電を経験しない限り、日本人は電気のありがたみを理解しない。残念ながら人間というものは痛みを感じない限り、問題を認識できないからだ。

今回の電力逼迫は複数の原因がある。直接的な原因は3月16日に福島県沖で発生した地震による火力発電所の停止と、季節外れの寒さであった。しかし間接的には日本の慢性的な電力不足が要因としてある。

原因1 原発の停止

東日本大震災と福島第一原発の事故以来、多くの原子力発電所が停止をしている。その結果毎年夏と冬に、電気の使用率は危険水準の95%に迫っている。もし大規模な火力発電所が停止したら、大停電につながる。もし真夏か真冬に大停電が起きれば死者が出る危険性が高い。

今回幸運と各人の節電のおかげで大停電は免れたが、いつまでこのような綱渡りをするつもりなのかと思う。2011年の夏にも原発を全部停止したため、電力供給がギリギリであったため、当時電力会社からすればいっそ停電を起こして原発の必要性を訴えるべきだという考えも密かにあっただろう(電力会社は絶対口には出せないだろうが)。

2018年9月6日に発生した北海道胆振地方東部地震で北海道の広範囲でブラックアウト(停電)が発生し、大きな問題となった。これがもし真冬であればもっと凍死者が多く出ていただろう。このときも泊原発が停止したことが問題視されたが、残念ながら今も泊原発は停止したままである。

原因2 東北地方からの電力に依存

本件について東京電力の電力が逼迫しているのが、東北の地震が原因と聞いて、違和感を覚えないだろうか?なぜ東京(関東)の電力会社が東北地方の発電所から電力を供給されているかという事実について。

3月16日に発生した地震によって運転が停止したのは、福島県の新地発電所や原町発電所などである。いずれも東京はおろか、関東でもない。

そもそも福島第一原子力発電所は東北の福島県にある。東京電力の設備にも関わらず。柏崎刈羽原子力発電所も東電の管轄だが、新潟にある。結局東京の人間はリスクの高い原発を東北に押しつけ、自分達は安全地帯にいる。その事実を認識した方がいい。

原因3 老朽化した火力発電所

気候変動の危機感から新規の火力発電所の建設はなかなか進んでいない。しかし本気で気候変動のリスクを考えるなら、新規の発電所を建てた方がいい。新しい発電所の方がCO2排出量が少なく、経済性が高い。それにも関わらず、いまだに石炭火力反対の運動をしている人には理解に苦しむ。

ヨーロッパは今ロシアーウクライナ紛争が原因で、天然ガスが不足している。このまま天然ガス一筋で電力供給を維持するのは不可能だろう。それ以前から原発の復権がフランスを中心に進められていたが、ドイツが反対しているせいで上手くいっていない。天然ガスはクリーンという変な論理で進めていたヨーロッパも限界を迎えている。そのうえ日本はいまだに石油火力発電の割合も高い。

火力発電所も嫌、原子力発電も嫌、でも停電はもっと嫌では、生活は成り立たない。

ヨーロッパ主要国の電源構成(2019年)。(注)日本の電源構成は2018年度のもの。

原因4 再生可能エネルギーへの過度の期待

近年エネルギーへの投資はほとんどが太陽光発電や風力発電である。しかし法人向け太陽光発電、いわゆるメガソーラーは日本国内に適切な土地がほとんどない。そのうえ無茶な建設計画で周辺住民の反対に遭うことも多い。希望が持てるとしたら洋上風力であるが、まだ未知数である。

なによりの問題点は、再生可能エネルギーは電力の安定化に全く寄与しないことである。太陽光は曇りや夜間は発電できないし、風力はもっと予想がしにくい。今回の停電の危機も再生可能エネルギーはまったく役に立たなかった。

今後の展望

経済産業省の試算では、2023年1月の電力余力は0.1%になるという(個人的にはこれはかなりありえない。来年の天気が予測できているのだろうか)。このまま抜本的な改革を行わない限り、毎年の夏冬に電力危機が訪れる。

日本の産業上の優位点は、電力供給が安定していることだけだと言っても過言ではない。人件費、国内需要、人材の質、地価などを見比べて、国際的に日本が優位な点はほとんどない。もしこのまま電力の安定供給まで劣るようになれば、日本の産業上の優位性はますます落ちるのではないかと危惧している。

出典:電気事業連合会


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