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銀鏡と秦河勝、66面を追い掛けたら、何処に辿り着く

赤穂・龍野での映画「銀鏡」に向けて、赤坂監督が銀鏡に伝わる面様のお話しを書いてくれたので、こちらにUPさせて頂きます。

〜星への祈りー宿神面に伝わるお話〜

宮崎県西都市銀鏡に伝わる星に祈りを捧げる銀鏡神楽。500年以上の歴史を持つ銀鏡神楽では三十三番の舞があり、この神楽に登場する神 楽面は御神体として祀られ、 土地の人々からは「面様」と呼ばれ信仰の対象となっています。そして、いくつかある「面様」のうち、式十番の宿神三宝荒神の神楽で登場する 「宿神面(しゅくじんめん)」には、こんな言い伝えが残されています。

宿神面・下を出しているのが特徴・マオリやトーテムポールを思い起こさせる。


世阿弥は風姿花伝で、秦河勝が「六十六番」の舞を紫宸殿で聖徳太子に披露したこ とが申楽・能楽のはじまりであると伝えていますが、銀鏡に伝わる言い伝えでは、 秦河勝は聖徳太子から六十六番の面を作るよう命を受けたといいます。彼は、東大 寺の西南西(申の方角)にある猿沢の池に沈んでいた楠の木を引き揚げ、その古木 から六十六の面を掘りだしました。その六十六面のうち、半分の三十三面が翁面、 そして残りの三十三面は鬼面であったといいます。宮崎にはそのうちの三面が伝わ り、銀鏡神楽の宿神面はそのうちの一面だというのです。

秦河勝 この新しい自画像好き



この言い伝えは、陰陽五行思想に基づいた「宿神面の本質」を言い表しています。 まず「東大寺」は東ですから、陰陽五行思想では「木気(命の芽生)」を意味しま す。この「木気」を育むために、水は木を育てますから必要なのは「水気」です。 水気の極は、十二支を円環状に配した時、真北すなわち北極星の方角となります。 陰陽五行思想では、「真北=子の方角」は北極星であり命が依りくる方角、すなわ ち宿神の住まう場所と考えることができます。西南西に位置する猿沢の池は、十二 支の子を北に配すれば「申」の方角であり、「申」は陰陽五行思想では金気(命の 終わり)に配されています。また、猿沢の池は(猿=申)ですし、さらに龍神が棲 むといわれていたことから、「龍=辰」でもあります。この子・辰・申は、十二支 の円環上で結ぶと正三角形を描き、陰陽五行思想では「三合の理」とされ「子(水 気)の三合」は水気の循環の促しです。水気の極に配される北極星という宇宙神か ら命の種をいただき、その理をこの世に循環させる働きを意味します。さらに、池 に沈んでいた木は、水気を身に纏う木気と考えることもできます。水気を循環さ せ、木気という命の芽生を促す。それは、宇宙神からの命の種をこの世にもたらし 育むという正しく宿神の働きそのものを表しているといえるでしょう。

(図は『陰陽五行思想からみた日本の祭り』吉野裕子著・人文書院より引用)


宿神、それは森羅万象の命の由来である星とその命が生きるこの大地との繋がりを 私たちに教えてくれます。その働きに感謝しつつ、星を見上げればいつもとは少し 何かがちがう心の風景に気がつくかもしれません。願わくば、星の見えない夜も心が宙に星を描けるような世界が育まれますように ー、祈りを込めて。

ドキュメンタリー映画『銀鏡 SHIROMI』
映画監督 赤阪友昭


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