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【ADVゲームレビュー】ROBOTICS;NOTES / PlayStation3 (2012)

ROBOTICS;NOTES / PlayStation3

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科学アドベンチャーシリーズの第三弾。

このコーナーは、科学アドベンチャーシリーズばかりになってきているけれど、アドベンチャーゲームにハマったタイミングで第四弾の「CHAOS;CHILD」がやりたい、と思ったのが運の尽き。
第一弾から順にプレイしないと気が済まないという性格上の問題で、ようやく第三弾に辿り着いたのである。

名作「STEINS;GATE」の次の作品というのが、良くも悪くもこのゲームの評価を作ってしまった感がある。
「STEINS;GATE」のトゥルールートの世界線での物語という設定で、天王寺綯が主要キャラとして登場。
それを売り文句にしている一方で、序盤は正統派の青春群像劇を突き進むものだから、事前に抱いていた期待が微妙にズレてしまったのでは。
実際、序盤はシナリオにどう絡むかがいまいちわからない中での部活動シーンが続くため、世界観に身が入るまでに時間を相当要することに。
ヒロインのあき穂が上滑りする様子を、冷めた目で見る時間が延々と続いていくような退屈さを感じてしまった。

とはいえ、スイッチが入ってからは、カタルシスが半端ない。
なんだかんだで科学アドベンチャーシリーズなのだ、ということを思い出させる理論の連発。
そのうえで、青春ドラマとしての盛り上がりが最高潮となるようにシナリオを整理した印象で、ご都合主義的な部分はあるにしても、余計な部分を省いて突っ走った最終章は、巨大ロボットのバトルというベタな設定も相まって、勢いのまま、寝るのも忘れてやりきってしまった。
序盤のゆったりした展開は、種子島の牧歌的な雰囲気を表現したとのことだが、ややスロースターターすぎたきらいはあるので、そこで飽きさせない何かがあれば、そこまで「STEINS;GATE」との比較だけで語られることはなかったのではなかろうか。


【注意】ここから、ネタバレ強め。


多くのユーザーが評価しているように、序盤にのめり込めない主要因は、主人公・八汐海翔の煮え切らない態度なのかと。
ひたすら傍観者に徹しており、そのくせ、年上相手にも上から目線。
彼が動かないことで、物語も動かないので、言ってしまえば本作のスローな展開を作った主犯である。
また、その他の主要キャラも全員が何らかのコミュ障であり、ぶつかるだけぶつかって誰も譲らず、やはり話が前に進まない。
それはそれで高校生らしい部分なのかもしれないが、終盤の怒涛の展開をご都合主義に見せてしまうのは、ロボ部員が打ち解けるまでに時間をかけすぎたからだと思うだけに、主人公にリーダーシップがないというのが、なんとも致命的だった。
そうでなくても、発作持ちで運動ができないあき穂が肉体労働系の作業をしているのを横目に、自分はひたすらゲームに興じているというシーンは、さすがにモヤモヤするでしょ。

ゲーム性としては、ポケコントリガーという機能がベースになっている。
過去シリーズのトリガーよりも自由度が増した分、難易度も高まった印象。
特に、シナリオを分岐させるTwitter系アプリ"ツイぽ"が厄介で、着信音が鳴るわけではないため、場面が変わる都度、アプリをマニュアル処理で開かなければ、重要な選択肢やキーワードを見逃すことになる。
しかも、スキップを使った際、過去シリーズのようにトリガー部分での自動ストップをしてくれないため、フラグを立てるための再プレイが非常に面倒になってしまった。
バトル時のコマンド入力や、レポート探しなど、トリガー以外でゲーム要素を増やす試みは評価したいところ。
メインシナリオで語りきれない裏設定や伏線をツイぽで語らせるというアイディアは面白かったので、更新通知を届けるなりして、視認性を高めてほしかった。

個人的に良かったのは、ルート分岐とトゥルールートの関係性。
一般的に、ルート分岐モノは、メインシナリオと異なる"if"の世界の話になりがちで、シナリオが複雑になればなるほど"このエピソードはどのルートでの話だっけ?"と混乱してしまう。
ところが、この「ROBOTICS;NOTES」は、個別ルートとトゥルールートが同じ世界線での話になっており、そこで語られるエピソードには時間的な重複がない。
綯→淳和→フラウ→愛理という時系列で、すべての個別ルートを制覇すると、その先にある、あき穂ルートに突入するという仕組み。
要するに、すべてのエピソードが公式ルートになるため、記憶の齟齬が生じないのだ。
その結果、物語が動き出す後半戦に入るまでに、何度もフラグを立てたり外したりする煩わしさが先立つことにはなるのだが、ルート分岐の概念としては、なかなか気の利いたシステムだったと思う。

とにかく、ゲームが面白くなるのはトゥルールートに入ってから。
そこまでは我慢の時間と割り切れば、ユーザーレビューによる期待値が低かった分、余計に楽しみながらプレイできた。
なお、全12章のうち、トゥルールート以降のシナリオ割合が1/3と、面白くなってからのボリュームも相応にあり。
シリーズの中でも本作だけ群を抜いて投げ売り価格で購入できるので、シリーズの他作品のプレイ経験があれば、手に取ってみるのも悪くはないだろう。
なお、PS4とSwitchでELITE版も発売中。
本作については、文量よりもメリハリ重視でELITE版を選んでみても良かったのかもしれないな。


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