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【ADVゲームレビュー】帰ってきた 名探偵ピカチュウ/Nintendo Switch(2023)

帰ってきた 名探偵ピカチュウ/Nintendo Switch

2019年にニンテンドー3DSソフトとしてリリースされた「名探偵ピカチュウ」の続きを描いた完結編。


内容紹介


「探偵コンビ」のティムとピカチュウは、行方不明となっているティムの父親・ハリーを捜していた。
そんな最中に起こった「宝石盗難事件」をきっかけに、2人は大きな謎に迫っていく。
なぜ、ハリーは姿を消したのか?
なぜ、ピカチュウはティムとだけ喋ることができるのか?
そして、ティムとピカチュウは、ハリーを見つけることができるのか?
はたして、物語の結末やいかに......

「帰ってきた 名探偵ピカチュウ」公式サイト



解説/感想(ネタバレなし)



前作「名探偵ピカチュウ」は未プレイだが、映画版は視聴済。
ポケモンが日常生活に溶け込んでいる世界観や、謎解きモノだという前評判への興味から、続編からではあるが手を出してみた。
結論としては、前作に出てきた設定については説明不足も多く、ある程度流れは掴んでおいたほうが良さそう。
一応、映画版とは異なるストーリー展開になっているので、100%のネタバレではなし。
今更ニンテンドー3DSを振り返るのも、ということであれば映画版でも要点は押さえられる。
ただし、最大の伏線である"ハリーはどこに?"というテーマについては、さすがにネタを変えるわけにはいかなかったようで、引っ張る割りにはバレバレというお寒い状況になってしまうのは否めず、ご留意を。

近年では、RPGスタイルでも日常の中にいるポケモンは描かれ出しているが、ADVゲームとして再構築されることで、世界観が深掘りされた感はある。
ポケモンが起こす犯罪をどう処理するのか、パートナーの責任やリスク管理、あるいは権利に至るまで、それなりに掘り下げられたと言えるだろう。
割り切って、大人向けの「シン・名探偵ピカチュウ」が出たら、より深みのある作品になるのかもしれない。
とはいえ、やはりターゲットとして子供は外せないということで、だいぶデフォルメしているうえに、謎解きの難易度もかなり易しい。
サブクエストまで含めるとかなり作業チックな動きになってしまって、謎解きを目当てにしてしまうと退屈と言わざるを得ないかな。

ちなみに、小学生の娘は、簡単すぎてつまらないと2章でプレイするのをやめてしまった。
子供向けを意識して誰にでもクリアできるようにするのは良いのだが、それで達成感まで奪ってしまったら本末転倒。
せっかくヒントを充実しているのだし、ペナルティもなしにするのなら、もう少し複雑性やひらめき要素を追加して、ゲームバランスを調整する必要があったのかと。
ピカチュウ単体で他のポケモンと協力するギミックは可能性を感じただけに、本作の直接的な続編は難しくとも、今後に続くポケモン×ADVゲームのポテンシャルに期待したい。



総評(ネタバレ注意)


ストーリーに、もうひとひねり欲しかったな、というのが率直な感想。
バトルやポケモンゲット等の魅力と引き換えに、立体的な物語が生み出せていたかと問われると、やや厳しい評価になってしまうか。
好意的に捉えれば、ガイドがしっかりしていて方向を見失わない初心者向けのADVなのだが、実際、子供がつまらないと投げ出してしまったのを見ると、懐疑的にならざるを得ない。
ゲーム性は簡単でも、ストーリーの良さで名作になっているゲームはたくさんあるわけで、ポケモンファンとしては、本作もそのひとつになってほしかった。

一方で、グラフィックはさすが。
主人公とパートナーがはっきりしていることで、アニメーションも充実している。
最後のバトルは、もはやアニメを超えていたのでは。
もったいないのは、そこでのアクションパートが少なすぎて、一箇所でAボタンを連打するのみ、という。
QTEというよりも、ポケモンメザスタなのよね。
最後の最後で外に放り出されてしまった感覚で、眺めていたらエンディングになっていた印象。
全部ミュウツーが何とかしてくれた、というラストもあっさりしすぎで、いまいち没入しきれなかったかな。

ピカチュウ目線でのポケモンとの会話や、パートナーと分かれて別行動をとるなどの展開は、パートナーが固定ではないレギュラーシリーズでは出来ない本作だからこその工夫。
だからこそ、ポケモンの能力を上手く使って施設から脱出するとか、ハリーとミュウツーのやりとりを描くとか、最後の最後にピカチュウ目線のギミックを使う場面だったと思ってしまう。
映画で先出しされて衝撃が薄れてしまったことも含め、技術点は高いのだが、面白さに直結しにくい不遇さを感じずにはいられない。
中古市場で投げ売りされているのが、それを物語っているのでは。

#読書感想文

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