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【ADVゲームレビュー】ANONYMOUS;CODE / PlayStation 4 (2022)

ANONYMOUS;CODE / PlayStation 4

2015年の制作発表から実に7年、2022年になってようやくリリースとなった科学アドベンチャーシリーズの最新作。


あらすじ


2036年問題により、主要都市のコンピュータに問題が発生。
全世界の防衛システムが暴走し、「サッド・モーニング」と呼ばれる大規模災害が起きた後の2037年、ポロンことホワイトハッカー・高岡歩論は、謎の少女、愛咲ももと出会う。
何者かに追われているももに手を貸す中で、ゲームのようにセーブ&ロードすることでタイムリープができるアプリを手にしたポロンは、"ファティマ第三の予言"を発端とした世界規模の混沌に巻き込まれていく。



概要/感想(ネタバレなし)


"メタ科学アドベンチャー"と冠されているだけあって、プレイヤーが物語の一部に組み込まれているのが、本作の特徴だろう。
これまでも、アドベンチャーゲームにおいて、プレイヤーの視点を前提にした演出は使われていて、必ずしも斬新とは言えないのかもしれないのだが、世界層という概念を定義したことで、そこにもちゃんと理屈付けがされているのはポイントが高い。
この設定を活かすべく、ポロン目線でゲームに没入させない、というのも狙っているのだろうな。
彼のキャラ付けは、人助けのために全力を尽くす正統派の主人公気質で、ハッキング能力は持っているけれどオタク要素は薄め。
過去シリーズの主人公が、スタート時点では嫌悪感や痛々しさがあったにも関わらず、難局を乗り越えることでキャラに自分を重ねて没入感を高める設定だったのと比較して、思い入れが薄くなってしまうのは惜しいところだ。

本作において、シナリオの分岐を促すのは、"ハッキングトリガー"。
プレイヤーは、ピンチを迎えたタイミングでロードすることをポロンに提案。
それがゲーム上想定されているタイミングであれば、セーブ地点に戻ることができるというもの。
事実上のタイムリープであり、科学的に未来予知ができる世界線において予測不能の異分子となることができる仕様だ。
やや判定がシビアすぎるきらいがあり、一度バッドエンドを踏んだ後でそれっぽいところでトリガーを引くというのを繰り返すことになるが、仕組みとしてはわかりやすい。
シナリオの分岐と結びつくという意味では、シリーズ史上、もっとも納得感のあるトリガーだったと言えよう。

ストーリーの感想は、後段で。
開発期間の7年の間に、近未来の時代設定にも関わらずテクノロジーが追い抜いてしまった部分や、設定の作り直しがあったとのころ。
それにより、もっとカオティックな内容になっているかとも思っていたが、案外、すっきりまとまっていたのでは。
シナリオとしては、むしろ骨太すぎるぐらいで、過去のシリーズ作品を履修していなくてもすっと入っていける作風。
完全版待ちで未プレイの「OCCULTIC;NINE」も、念のためアニメでひととおり履修しておいたものの、あまり影響はなさそうだった。
強いて言うなら、「STEINS;GATE 0」の知識はあるに越したことはないが、ストーリー展開的に混乱をきたすレベルではないので、シリーズ入門編としては、「CHAOS;HEAD」からこつこつやり直すよりも向いているのかもしれない。



総評(ネタバレ注意)


なんだかんだ、面白いなと。
色々と発表されている作品群が何年待たされるのかわからない中、プレイ後の喪失感を危惧して手を付けずにいたが、やり始めると一瞬である。
王道的な主人公に、王道的なヒロインというのがシリーズ的には新鮮で、メタ視点による尖った部分も見せつけつつ、一気読みしたくなるスピード感だ。

もっとも、これまでにあったギャルゲー的なシナリオ分岐がなく、エンディングはノーマルエンドとトゥルーエンドのみというシンプルさ。
ゴールを目指して、トライ&エラーを繰り返すというゲーム性にはハマっていたのだが、その分、キャラの掘り下げが弱くなった部分はあるのかもしれない。
「ROBOTICS;NOTES」は、そもそも分岐がトゥルーエンドの一部に組み込まれていたし、「CHAOS;CHILD」は分岐することによってサブキャラクターの背景や内面の深掘りが出来ていた。
本作にも、個性的なキャラクターは多く登場するものの、その多くが出てきたときのイメージのままでエンディングを迎えることになるので、少々惜しい気がする。
世界層という概念は、世界線同様にスピンオフやアンソロジーを作りやすい設定だと思うので、そこに期待するしかないか。

あとは、"意外な黒幕"が存在しなかったことも、薄味感を助長してしまったかな。
世界層というギミックには驚かされたが、中盤からラスボス化するアスマが最後まで立ちはだかり、特に奥の手を持たないバチカンは終盤になって肩透かし。
トゥルーエンドに至っては、敵が完全に無力化されているので、これはこれで、自分だけが記憶を持ってタイムリープしているが故の切なさを感じはするものの、「STEINS;GATE」、「CHAOS;CHILD」のもうひと波乱を知ってしまっているうえでは、インパクトは劣ってしまうよね、と。

兎にも角にも、待たされすぎた、がすべてだろうな。
シナリオ運びは間違いなく面白いし、トリックも絶妙。
没入させないことでゲーム性を高める逆説的な試みも良かっただけに、7年の間に上がりに上がりまくったハードルが壁になってしまったか。
このクオリティで、ストレスなく出ていたらもっと絶賛されていても良い作品だとは思うのだが。
最終的に世界線が変わり、ずっとセーブ&ロードで戦ってきたポロンの記憶が一掃され、再現されたももが記憶を残している、というそれまでと逆の構図で終わるラストシーンは、結構好き。
登場したももが、トゥルーエンドの記憶だけではなく、ノーマルエンドのものも有しているような演出になっているのも理想的。(後々、納得感のある解釈が提示されることを期待。)
やっぱり喪失感は強いので、次回作の続報が待たれるな。


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