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日記「にがみ」

「Bitter」も「にがい」も「び」とか「が」とかが苦い感じをよく出している。それだけでなく「び」→「た」、「に」→「が」というコンビネーション技が苦みの独特な感覚をよく表現しているなぁと、BITTERS END社配給の映画が始まるたびにそう思う。
そしてBITTERS END社は、ちょっとだけか細くてちょっとだけお互いの字が離れているあのロゴで、味の苦さではなく人間世界の苦さのイメージをよく出している。あの「ヴぅーん てていんいんいん……」みたいな音も古い特撮の宇宙船みたいで好きだ。

最近、服用している薬の副作用で口の中がずっと苦い。
しかし、飲み薬なので本来、口の中は素通りしているのだ。
でも成分は、食道を通って胃で吸収されたのち、血流を通ってまた口の中に戻ってくる。
よく考えてみれば相当込み入った長い旅をして、この成分は舌に苦味をもたらしているのだ。

本来の有効成分は患部にきちんと届いて仕事をしているはずだから、今わたしの口に苦みとして戻ってきた彼らははぐれ組である。
暗いトンネルや酸の海をのりこえ、複雑な血液のネットワークをめぐってたどり着いたところがスタート地点だったら、どんな気持ちになるんだろう。
彼らが何を思ったのかは想像するしかないけど、確かにそれは不快な苦みとして表出されると思う。

私はそれを舌で唾に絡めてそっと飲み込む。苦みはそれでも残る。

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