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【短編SF小説】2050年の生活②

シーン2「共生」


深い深い森の中に、白い煙を吐くドーム状の建物が立ち並ぶ。

大自然の緑に、突如現れるモダンな建造物。その白い煙と森にたちこめる朝霧が、神秘的な景色を織りなしている。

現在、地球上で自然災害が極めて少ない土地には、このように原子力発電所が置かれている。人々は発電所から距離を取り、彼らが住みやすいと感じる土地の方々に散らばった。

私は今北欧の方に住んでいる。冷たい空気はどことなく清潔な感じがして好きだ。

日本での生活も好きだったが、猛暑の数ヶ月間は外気に1-2時間触れると熱中症で生死を彷徨うため、家に行き籠ってバースでの生活をするか、死ぬかの選択を強いられるようになってからはどうも肌が合わなかった。

両親が子供の頃、サウナに通うことを趣味とする"サウナー"が流行ったらしい。彼らが今の時代を生きていたら夏の東京は半裸の人間たちで溢れかえっていたことだろう。

Co2増加による気温上昇の抑制が、もはや不可能であると世界が宣言したのは、すでに全人類がその事実に気付いた後だった。

かつての資本主義社会は"地球環境の改善"というテーマにおいても、金儲けを止めることはできなかった。

息ができないほどの猛暑は日本だけでなく、他のあらゆる国や地域にも牙を剥き、それは氷山を溶かし、海面を上昇させ多くの死者を出した。

諸悪の根源である資本主義社会が実質的な終わりを迎え、近年では環境問題も改善の余地を見せている。平均気温は少しずつではあるが低下を始め、日本にはなんと四季のような景色が戻りつつあるらしい。

いつかまた、日本に行ってみたい。

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