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【フリゲ感想】トキゴエ列車からの脱出

この記事の文字数は約5,900字です!

おはこんにちばんは! 富井サカナです。
今回は実績十分なシナリオの名手が送るホラーゲームです!
異界列車を舞台にした探索が楽しめる作りとなっております。

飽きさせない&プレーヤーに親切な作りとなっており、
プレイ時間もちょうど良いので是非遊んでみてください!


1.どんなゲーム?

今回紹介したいのは、春根利馬さんの「トキゴエ列車からの脱出」です!!

【制作】春根利馬 様
【制作ツール】ティラノビルダー
【プレイ時間】3時間~4時間(完全クリアまで)
【ジャンル】列車探索ホラーストーリー
【KW】ホラー、ミステリー、探索、列車
【筆者プレイ時期】2021年12月プレイ
【筆者プレイ状況】全エンドクリア

【あらすじ】
目が覚めたら、そこは呪われた列車の中だった──。

女子高生の主人公・時子は、気付いたら走行中の列車に閉じ込められていた。
ほどなくして、列車の元運転手である大介・聡志に出会う。
彼らの話によると、ここは異界を走る『トキゴエ列車』の中で、
最奥の5両目にいる強大な悪霊によって、呪われてしまったらしい。
時子は大介たちと共に、5両目を目指して呪われた列車を突き進んでいく──。

【一言でいえばどんなゲーム?】
オーソドックスな探索系ホラーと見せかけて気付けば感動してるゲーム


2.こんな方に特におススメ!

・春根さんの作品のファンな人
・探索系ホラーゲームが好きな人
・プロットのしっかりしたノベルゲームが好きな人
・お絵描きの経験がある人

俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ~!!(古い)
本作は2019年のティラノゲームフェスでグランプリを、
翌年には準グランプリを獲得したノベコレ界きっての名作者である
春根利馬さんプレゼンツな待望の新作となります。
新境地としてグラフィックも多く制作されていますのでそこも要チェキ!

本作のジャンルはズバリ異界列車×探索×ホラー!
ツクール製ではないので探索シーンは画面クリック方式ですが、
主人公を動かして楽しめるゲームとなっております。
普段ノベゲをやらないゲーム要素がないとダメな方も安心。

とはいえ作者さんはシナリオの名手ということで、
当然ただのビビらせ系ホラーゲームで終わることはありません。
意味ありげな冒頭シーンを回収していく様や、
気付けば登場キャラの背景や人間模様が描かれる様はさすがの一言。
ホラーだけの怖いゲームではないので、是非最後までお楽しみを!

なお、詳細はネタバレになるので割愛しますが、
お絵描き経験がある方はきっと感じるところが多くあるような気がします。
自分はお絵描き絶対にしない(できない)勢なので推測ですが!


3.ネタバレなしの紹介

まずはネタバレなしの紹介をここで書きます。

【作品紹介】
ティラノゲームフェス2021の参加作品です!

【王道系ホラー】
列車を舞台にした探索系ゲームなんてまさに王道ど真ん中。
得体の知れない異形に襲われたり二度と帰れなくなったり、
様々なホラー体験が主人公に襲い掛かります。
ノーマルエンドなんて心にものしかかる系の恐怖ですよ!

【次々と明らかになる乗客の謎】
登場人物はみな素性不明ですし、自分の記憶も冒頭はあやふや。
プレイを進める度に徐々に明らかになっていく様が秀逸でした。
点と点が繋がって伏線が回収されていく様はまさにミステリーの手法。
というわけでジャンル横断的に美味しいところが詰まっている作品です。

というわけで、未プレイの方はここまで。
まずはちゃっちゃとプレイすることをお勧めいたします!
1回目のプレイでTRUE到達は簡単な親切設計ですが、
絶対に時間を無駄にしたくないぜ!という方は攻略記事がおススメ。
ホラーが苦手な方も攻略記事を見ればそこだけ避けれる親切設計です。


なお、それでもなんとなくホラーゲームは気乗りしない、
という方は先にこちらの作品はいかがでしょうか。
これら作品を先にプレイすれば、本作がただのホラーゲームではないことを
プレイ前に確信できることウケアイです!

■ティラノゲームフェス2019グランプリ作品

■ティラノゲームフェス2020準グランプリ作品


4.ネタバレありの感想

ここからは相当にネタバレを含みます。
プレイする前には読まないでください。

以下の感想を読む時間があったら本編を是非プレイして下さい。
絶品ですので遊んで後悔することはないはず!さっさとレッツプレイ!

↓ネタバレ記事開始カウントダウン5

↓ネタバレ記事開始カウントダウン4

↓ネタバレ記事開始カウントダウン3

↓ネタバレ記事開始カウントダウン2

↓ネタバレ記事開始カウントダウン1

さて、改めてここからはネタバレ感想になります。
致命的なネタバレも含みますので未プレイの方は読まないでください。

■やっぱり面白かったシナリオ
本作においてもプロットが素晴らしいと感じました!

〇分かりやすい構成
冒頭でプレーヤーに与えられる情報はかなり少なめなのですが、
エピソードを進めていく過程で主要な登場人物の関係性が見えてきます。
お話は異界列車の車両を進んでいく中でエピソード的に展開しますが、
そこでの情報の出し方が凄く丁寧で分かりやすいという印象を受けました。
広く誰がプレイしても楽しめることを意識された結果だと思います。
主人公の近辺にいない登場人物の素性については、
回想列車切符というアイテムを入手することでエピソードとして読めます。
これもテンポを損わない点や切符のネーミングも面白いと感じました。

〇終盤の大逆転劇
プレイしてのお楽しみですが(プレイされた方はお楽しみでしたが)、
NORMAL END後の大逆転TRUEルートもとても楽しめました。
このあたりの手法はそれまでの設定が如何なく活用されており、
無理のない形で素晴らしい読後感に繋げられていたかと思います。


■バッチリ面白い探索モード
私はもちろんノベルゲームが非常に好きなのですが、
・テキストにどのくらい魅力があるか(展開・文章力)
・自分がどれくらい活字の文章を読みたい心境か
・魅力的なグラフィックやボイスや演出などがあるか
こんな感じの要素によっては単調に感じることもあったりします。
好きな人間でもそうなので普通の人はもう少し感じることが多そう。

テキストメインのノベルゲームだと、細かい起承転結を作ったり、
エピソード形式にしたり、冒頭で引きを作ったり、
アイキャッチを入れたりしてこの単調さを緩和させたりしますが、
探索という要素が入ると大幅に単調さは引き下げられる気がします。
通常よりは能動的な形で作品世界に触れることができますので。
(諸説あります)

本作は作品が異界列車×ホラーということなので、
テキストだけで進むよりもかなりプラスに働いたかと思います。

〇親切な移動マッピング
ホラーゲームはバイオハザードのドアのシーンに象徴されるよう、
雰囲気づくりの上で画面遷移の演出はある程度モッサリさせたいものです。
というわけで探索シーンで迷子になると微ストレスが蓄積されます。
本作の探索では駅の改札前を起点として放射状に各場所が配置されており、
中心から遠ざかる⇔近付くで移動ポイントの色分けがされているおかげで、
地図が読めない系人間でも迷うことなく行きたいところに行けました!
ノベルゲームはクリックしていれば話が進むのに、
探索要素なんか入れられると面倒だしテンポが悪くなる!
と基本考えがちな方もサクサク進行なのでご安心ください!!

〇おつかいイベント
おつかいイベントって呼称が正しいのかは分かりませんが、
「アレ」を入手するために色んな所に行ってフラグを立てるヤツです。
この設定が自然だったのでスムーズに遊べて良かったです。
目的が明確で、それに対するアクションも立てやすかったです。
ホラーらしい即BADも配慮の上でいくつか配置されており、
こちらを敢えて踏んでいくのも良いアクセントになりました。


■綺麗なグラフィック
ここまでシナリオ・システムの話ですが本作はグラフィックも綺麗です。

〇さすがの立ち絵
今作のキャラクターグラフィックは前作に続きアベヒカルさんが担当。
流石のクオリティですので、「もう実物見て」としか言えません。
というのは少しだけ嘘でキャラクターの項で個別に触れます。
終盤のイベント絵では絵の力を存分に感じました。やたら良かったです!!

〇凝った背景
背景画像にはとても力が入っているように感じました。
学園モノであればフリー素材をポンポン配置しても違和感ゼロですが、
フリー素材の背景を異界列車として用いるのは少々無理がありそうです。
本作の背景は鬼加工を施しまくってゲームの雰囲気を表現していました。
列車が舞台のゲームなら背景なんてそんなに数要らないのでは?
と元々は思っていたのですが探索の主な舞台はむしろ列車ではなく駅!
というわけで複数番線のホームやら駅員室やら待合室やら改札やら、
主人公が動き回るほど背景が必要になってしまうのでした!


■キャラクターごとの感想
というわけでここまでここが良かった的な感想ですが、
ここからは純粋に(?)感想です!
(作者さんのあとがき順でのご紹介)

〇時子
本作の主人公。
個人的には残念ながら全く好きになれなかった!!ので、
彼女については突然ですがちょっと不満な点に回します!
単純に感情移入ができなかったキャラという感じでしょうか。
因果応報的な部分のあるホラーゲームなのでそれも必然かもです。

〇大介
なにこのイケメン。
対聡志の行動も対賢治の行動も人格者が過ぎる。
前者はともかく後者は絶対に自分には無理な行動。
優しさと正義感の強さもスーパーな彼なので、
ちょっと鉄道オタなくらいむしろ加点要素でしかない気がする。

〇聡志
なにこのスーパーな美ショタ。
もう見た目が可愛らしすぎて誰でも虜になるレベル。
性格は純粋過ぎるし人生は儚過ぎるしでどう見ても一番人気っぽい。
恩人である大介とのタッグはただただ尊い。
自分の中に腐女子的な感情が芽生えそうだった。

〇恵
登場人物の中で個人的には一番圧倒的に好きなのが恵。
作者さんは彼女に対する反応が控えめとのことでしたがとんでもないっす!
常に前向きで周りをプラスの方向に導ける存在であり、
かつ自分自身の能力も非常に高いというスーパー人間。
生まれ持った資質が大きい部分はあるんだろうけど、
生きている内にこういう人間に近付くのが人生の目標、まである。
「そういうのは良くない」ときちんと言えるところ、
「周りもちゃんと見えてるけど自分の信念は曲げない」までセット。
表情もスタイルも全てに唯一無二感がありました!!

〇賢治
娘を愛する系社畜サラリーマン。
私は今のところ前向きな仕事でしか激務状態を味わっていませんが、
後ろ向きな仕事での激務の精神的な辛さは想像が付くところ。
職場でグビグビいっちゃう描写は妙にリアルでした。(世の中いそう)
娘を想う強烈な感情やら終盤の活躍やらで凄い好人物に見えました!

〇エリカ
幼女エリカと思ったらバリバリ可愛く成長してる!
立ち絵が表示された時、アレ!麗し!好き!となりました。
彼女のコンプレックス発動シーンは随分勝手な物言いでしたが、
事件さえなければ直ぐに仲直りした程度のものな気もしました。
面と向かって暴言吐くのは裏でコソコソ言うより千倍マシ派です。
思春期ってまだ自制が効きにくいでしょうし。
恵もあんまり気にしてなかったようだしそんなもんでしょう!

〇叶絵
邪気!圧倒的邪気!
禍々しさを絵にしたら叶絵になるってくらいの邪気の持ち主。
自分の尺度や価値観で人を判断したり優劣をつけるのは良くない。
ただ、高い目標と相応の努力をしているのに、
いきなり殺された無念は相当のものに違いないのは間違いない。
というわけで怨念の深さにはかなりの納得感がありました。


■ちょっと不満に感じた点
何か感じた時はきちんと書いておこう、というスタンスです!
今回はもう特に個人の趣向・価値観でしかないのですが、
主人公に感情移入、共感できなかったという点だけですね。

主人公にあまり非がなければホラー展開は全て理不尽になるので
ホラーへの納得感を持たせるためにはこれが正しいのかもしれませんし、
また、時子と叶絵の友情が復活するTRUEのバランスを考慮しても
今以上に叶絵を悪に描くのは良くないのかもしれませんが、
時子の言動が自分の好みより『主人公としてはネガティブ寄り』
だったように感じました。

叶絵の謎の上から目線はどう見ても気分が悪いものでしたが、
であれば精神的にも完全に距離を置いたうえで
趣味としてお絵描きを楽しむなり他の趣味を見つけるべきであって、
裏垢を作って攻撃という行動が無意味過ぎて共感できませんでした。
事実として世の中に溢れているのでそういうこともあると分かるのですが、
優しい主人公がそこまで行くならもっと酷いエピソードが欲しかったです。
卑劣な裏垢攻撃+殺人という時点で、もう時子が悪いよ!となりました。

特に本作では大介、聡志、恵と言った超好人物が揃っていますし、
恵とエリカの関係性の方が麗しいよ!というのがあったため、
時子と叶絵のTRUEエンドが少し霞んで見えてしまったように感じました。

というわけで色々書いていますが、
それだけお話にのめり込んでいるという証左ですね。
過去に他のゲームをプレイした時にも思いましたが、
私は主人公のネガティブな感情にあまり寄り添えないタイプのようです。
(ちなみにもちろん作品のよしあしとは一切関係がないと思ってます)

シナリオを描く身としてはリアルなネガティブ感情を描けないとまずい、
という危機感を感想を書きつつ感じてしまいました。。
創作者の苦悩的なものにあまり共感できないようでは、
素晴らしい何かを作れないという気もしますしねぇ。うーむ。

あ、あともう1点!
大介&聡志のCGは最高だったのでいつでも見直したかったです!
(私は熟練者なのできちんと手前でセーブすることで解決していますが!)


ネタバレ防止緩衝地帯

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ネタバレ防止緩衝地帯


5.おわりに(ネタバレなし)

というわけで「トキゴエ列車からの脱出」の感想はこれでおしまいです。
大ファンの作者さんであり、本作もこれまで同様に面白い作品でした。
私自身、ノベルゲームの制作やnoteの開始などは春根さんの影響でして、
自他ともに認める春根教信者、春根チルドレンなわけですが、
それは抜きにしてとても面白いゲームでしたので是非遊んでみてください!

プレイ後には後書き・裏話で本作を骨の髄まで(?)楽しみましょう!


以上、富井サカナでした。

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