![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146150960/rectangle_large_type_2_0153d2794834aed21dc7b492a05cd507.jpeg?width=800)
10001回目
ヒトは人生のうち、自宅の扉を何回開けるのだろうか。
扉を開けた先には、何が待っているのか。
見慣れたコンクリートにいつもの車。
変わらずにスーパーやガソリンスタンドもある。
毎日変化することのない物が、確かにそこにあるはずだ。
なのになぜだろうか、
ある時急に扉の向こうが怖くなる。
何があるのか、どうなってしまうのか分からなくて、怖い。
マイナス同士の磁石が反発し合う様に、扉に近づくことさえもさせてくれない。
この時私と扉との間には、確かに何かがある。
それすら分からないのだけれど、分からないから諦めるしかない。
その日、扉の先に本当は何が待っていたのか。
見慣れたコンクリートなら安心しただろうか。
変わらずスーパーに行けたなら安全だろうか。
きっとコンクリートは汚れていて滑りやすいし、変わらないと思っていたスーパーでさえ、あらゆるところに危険が潜んでいるに違いない。
だから今日もうちにいることにした。
次に扉を開けるのが10001回目だったとしたら、何か本当に変わるだろうか。
雨でコンクリートの汚れは流れて、見慣れないクリーム色になっているかもしれない。
お店ではタイムセールで、野菜がお得に買えるかもしれない。
ガソリンスタンドに行けば、ティッシュが一箱貰えるかも。
ほら、ワクワクが沢山待っているじゃないか。
だが、申し訳ない。
もし私の鼓動が早まっていたとするのなら、それはまだ吊り橋を渡る時のようなドキドキにすぎない。
そのようなワクワクに感じられるまで、もう少しここに居させもらうよ。
良ければ迎えにきておくれ。
一緒なら、10000回目でも大丈夫かもしれないから。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?