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脳は怠け者です。

脳科学者も言っておられますが、人の脳は基本的に楽をしようとする性質があります。

だから、未知のものに出会うと、脳はまず、過去の記憶に置き換えようとします。

結果、大人になった人間が毎日見聞きする情報のほとんどが過去の記憶に置き換えられています。

だから、歳を重ねる毎に日々の感動が薄れるのです。

これはパソコンのキャッシュ機能と同様で、物事を瞬時に判断するための高速化機能です。 

必要機能と言っても良いでしょう。

実は、この機能がなければ車の運転はできません。

一般的に『キャッシュ』とは、PCのブラウザが一度表示したWebページのデータを保存しておいて、次に同じページを表示する際、一度目より素早く表示してくれる仕組みのことです。

キャッシュを利用することで、サーバーでのファイルの作成を省いたり、ブラウザからサーバーへのデータ通信が不要になったりします。

脳にもこの仕組みが備わっているので、危険回避などが瞬時にできるのです。
ところが脳のキャッシュ機能は、良いことばかりではありません。
例えば、私の苗字「成願(ジョウガン)」を「成瀬(ナルセ)」と読み間違える人が多いことの原因でもあるのです。

しかし、実際は初めて見たにも関わらず、成願と認識する人もいらっしゃいます。

両者の違いは明確ですね。

よく見るか、よく見ていないか?それだけのことです。
つまり過去の記憶に置き換えるか、置き換えないかの差です。

人生においては、この些細なことの積み重ねが大きいのです。

よく見る人には常に「気づき」があり、真実を知る可能性が高まります。

あらゆる問題解決方法の根幹にあるのは「気づき」です。

黒澤明監督の映画「羅生門」から派生した心理学用語に
「Rashomon effect」(羅生門効果)という言葉があります。

これは今や世界共通の慣用句になっています。

意味としては、
『ひとつの出来事において、人々がそれぞれに見解を主張すると矛盾してしまう現象のこと』を言いますが、それらの人々が意図的に間違ったことを言っていないのにこの現象が起こるのは、まさに「気づき」の違いからです。

結局よく見た人とよく見ていない人の見解の相違なのです。

例えば、あなたが私と名刺交換して、会社の誰かに「今日、ナルセさんに会ったよ」と、言ったとします。
真実は成願と会ったのですが、あなたにとって成瀬さんと会ったことは事実なのです。
このように脳のキャッシュ機能が私たちの能力を高め、同時に下げていることを知っておく必要があります。


特に、年配の方に御忠告です。
できるだけキャッシュに頼らず毎日を生きることです。
脳は気づきによっても活性化されます。

実は今見ているものは全て初めて見るものなのです。

なぜならば、全てのものごとは必ずうつろうからです。

私が68年生きてきて、数え切れない程の雨の景色を見てきましたが、その間、同じ雨は一度も降っていないのです。

「また、いつもの雨」と思うのはキャッシュを使っているからです。

人間関係においても同じですね。

かつて「笑っていいとも」でタモリさんがゲストによく言ってた、「髪切った?」は、とても大切なコニュニケーション法なのです。

#私文化デザイン思考 講師

成願 義夫

写真は

滋賀県東近江市の『成願寺』

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