「戻り鰹」のシーズンです。
「旬」に拘る江戸庶民・成願義夫 記
鰹には旬が2回あります。
春の『初鰹』(4月ごろ)と、秋の『戻り鰹』(10月ごろ)です。
そして、特に出始めを「はしり」(3月ごろ)と言います。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」など、初鰹を題材にした数々の句や川柳が残っています。
昔から「初物を食べると75日寿命が延びる」と云われ、江戸庶民は、それこそ無理をしてでも食べたのです。
「女房を質に入れても初鰹」とは、江戸時代の庶民の心意気を表す有名な川柳ですね。
さて、この浮世絵は、江戸の長屋の住人が共同で買った鰹を魚屋が切り分けている図です。
江戸の庶民の逞しさと、初物を亭主に食べさせてやりたいという女房達の愛情から生まれた「共同購入」の知恵。
いじらしくも微笑ましい図です。
旬の「はしり」に目がない江戸庶民は高値を承知で買ったのです。
江戸時代の川柳から鰹の当時の価格が判ります。
「まな板に小判一枚初鰹」
因みに、江戸中期の小判一枚は現代の価値に換算すると約4万円です。(蕎麦の値段を基準とした場合)
共同購入は5軒で割っても一切れ8千円です。
高価ですね。
そこで「・・質に入れても・・」となる訳です。(笑)
貧乏人であっても「旬」を味わいたい気持ちに変わりはないのです。
初物を食べて寿命を延ばすには、お天道様の登る方角に向かって感謝していただくのが慣しとか。
家族揃ってお天道様に感謝して食べる。
亭主の晩酌のお銚子も、女房は一本増やします。
貧しくても幸せそうな家族の図が浮かびます。
季節感が薄れ、旬に鈍感な現代。「本当に現代は豊かなのか?」と、あらためて問いたくなりました。
「旬」という言葉が死語にならないことを願うばかりです。
秋といえば、松茸は流石にいまだに人気の旬の食べ物ですが、
それ以外に秋刀魚も今が旬ですね。
さて、この時期はちょうど『戻り鰹』が旬ですね。
感謝していただきたいと思います。
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和文化デザイン思考講師
和文化ビジネス思考講師
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成願義夫
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