見出し画像

一流のプロから学ぶ極意

私はプロのお話が好きで、どこに行っても「プロの裏話」を聞きたがる癖がある。
昔よく通っていたバーのバーテンダーは、私が信頼するプロ中のプロだった。

ある夜
「ひとつ聞きたんですが、時々僕も言うんだけどカクテルで『同じもの』と、2杯目を頼む人多いですけど、本当に同じもの出すんですか?」

彼は一瞬黙り込んで、私の顔を見てニヤリと笑った。

「初めて、そんな質問されました」と声を出して笑った。
そして真顔になり、小声で「先生が想像した通りです。2杯目はレシピを変えます。少しね。」と言った。

私は「やっぱりね。そうじゃないかと思いました。」

その後、彼に理由を尋ね彼から返ってきた返事を要約すると以下のようになる。人間の味覚は最初の一口目が一番美味しく感じる性質がある。

カクテルで言えば、一口目、1杯目が一番美味しい。
だから、2杯目も同じだカクテルだと、1杯目ほど美味しく感じない。
2杯目も美味しく感じて貰うためにはその人に合わせてレシピを変える必要がある。

例えば、アルコールに強くない女性が甘めのジュース系のカクテルを注文した場合、2杯目はさらにアルコールを減らすそうだ。

女性は決まってこう言う「美味しい!ジュースみたい!!」(笑) 当然、3杯目はさらにジュースが増える。(笑笑)
逆に、アルコールに強い男性の場合、2杯目はさらにアルコール多目で作る場合もあるそうだ。

だけど、絶対にレシピが変わったことは気づかせない。
これは、長年の経験と観察力で磨かれるプロの技の一つ。

この話のやりとりの中で彼の口から出た言葉に感動した。

「結局バーテンの最も重要な仕事は『観察』なんですよ。」

カップル、男性一人、男性二人、グループ、常連、などのあらゆる組み合わせ、そしてその日の気分は?、目的は?、あてに何を食べる?、時間帯、・・etc.

全てを考慮して観察して、今この時の最高のレシピを瞬時に頭に浮かべる。バーのカウンターはその為にある。

ここにも「一期一会」の侘茶の心が生きている。
まさに『おもてなし』の心だ。

「カクテルを何百種類作れても、それだけでは一流のプロにはなれない」と、彼の言葉は奥が深い。
近い将来、カクテルを作るロボットは確実にできる。
そんなことは簡単なことだ。
しかし、AIには彼のようなサービスができない。
だから、彼のような配慮と技術があれば、AIに仕事を奪われることはないだろう。

バーテンの仕事は観察すること

これはすべての職業に通じること。

もちろん私はロボットのバーテンダーがいるバーには絶対行かない(笑)
===============================================

#和文化デザイン思考  講師
成願義夫 Jogan Yoshio プロフィール
伝統文様研究家、装飾画家、アートディレクター、着物デザイナー、グラフィックデザイナー、伝統産業商品開発アドバイザー
株式会社京都デザインファクトリー 代表取締役社長

●代表作と最近の活躍
関西国際空港の初代ウエルカムボードのデザイン。
長野県善光寺の納骨堂の納骨壇の扉デザインの他、納骨堂のデザインは多数。
サッポロビールワインラベルなど、手がけたデザインは多数多岐に渡る。

●近況
2018年、秋、成願がデザインした金属製スマホケースが英国ウェールズ国立博物館に永久保管決定。
2018年、冬、和柄をテーマにした民放テレビ番組に解説者として出演。
2019年、春、ジョルジオアルマーニビューティー主催のイベント講師に招かれる。
2019年、夏、京都駅ビルのフォトスポット四箇所のデザインを手がける。
2019年、秋、京都高島屋のバイヤー向け『伝統文様勉強会』講師を務める。
2020年、埼玉県秩父市の招きで2日間に渡り講演会と伝統デザイン勉強会を開催。
2022年、NHKのテレビ番組『美の壷』に出演。

●近年はグラフィックデザイナー、壁面装飾画家、着物デザイナー、伝統文様研究家、伝統産業の商品開発アドバイザー、講演家として、テレビなどにも出演し、幅広く活躍中。  
著書は、和柄デザイン素材集を10冊以上執筆。総販売数は40万冊を突破。
また、著書の大人の塗り絵『和柄のヒーリングぬり絵ブック』(PHP研究所発行)は、累計7万冊を突破していまだにロングセラーを続けている。
成願の和柄デザイン素材集は日本中のデザイン事務所に、必ず1冊以上置かれていると言われている

よろしければサポートをお願いします。 着物業界の為、着物ファンの為、これからも様々に活動してまいります。