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着物業界に恩返しする時が来た。

時は昭和の末期、このままでは着物業界の衰退は止められないと感じた私は当時、特別に私のことを評価してくれていたクライアントの社長に言いました。

「このままでは着物業界は衰退して京都を中心にした着物産業は消えてしまいますよ。なんで皆、消費者が着たい着物を作って、着物ファンを増やそうとしないのですか?」

かねてより私の着物の図案に対する理念に共感してくれていたあるメーカーの社長に「じゃあ、成願君の理想の着物の図案を好きなように描いたらいいよ。君が描いた図案通りに何も言わずにそれを染めて商品化するから」と言われ、私の一言をきっかけにその社長が私に社運をかけてくれたことに感動し、早速試しに1枚デザインして作っていただいただきました。

たまたま別件でその会社に来た(株)さが美のあるバイヤーがその着物を偶然見て、とても興味を持ってくれました。
そしてその着物がどのような経緯で作られたかを聞きこう言ったのです。
「解りました。今後成願さんのデザインした着物はブランド化して、それを(株)さが美だけで販売してください」
そこから私の着物ブランドが立ち上がることになったのです。

その後、平成元年から17年まで、私は着物デザイナーとして全国のさが美の店舗(当時360店舗まで増えていた)と催事会場に呼ばれ、自分の着物を直接接客しながら販売することになるのです。

先日計算してみたら、17年間で、全国のさが美店舗には400回以上、催事会場には35回以上行かせていただきました。

その間、呉服店の裏の事情や顧客の実態をつぶさに見ながら、図案を描いているだけでは知ることができない様々な現実を知ることになるのです。

そしてあれこれ見ているうちに、呉服業界が抱える様々な問題も見えてきました。

店の品揃えに関する問題点、セールストークの問題点、販売方法の問題点、集客方法の問題点、社員教育の問題点、商品内容の問題点、エンドユーザーとメーカーのギャップの問題点等々、それ以外にも沢山の様々な問題点が見えてきました。

それと同時に改善方法や真の顧客ニーズの掴み方、売れる見せ方等々、様々なアイディアが湧きましたが、当時まだ若造だった私がそれをアドバイスする立場にはなく、たまにでしゃばったことを言っても理解されませんでした。

そんな状況から、始まって5年目、そして10年目の節目で、辞めたいと申し出ましたが、順調に売れていることもあり、辞めさせてもらえず、メーカーの社長へのご恩返しと言う気持ちもあり、ずるずると15年続いてしまいました。
しかし、私の本業も忙しくなったことと、月2回土日の休日を潰して(遠方の場合は3日間)の出張は体力的に辛くなり、ついに15年目に、固い決意で辞めさせてくださいと申し出ました。

さが美もメーカーも私の辞める意志が固いと知ると、メーカーの社長が、「では新作を作るのはここまでにして、あと2年間在庫を売ってくれないか?」と頼まれ、いやとは言えず、その後2年間続け、結局合計17年間全国に着物を売り歩いておりました。
もちろん、自分の作品を通じて多くのことを学びました。
同時に他の商品も観察することで更に、多くのことを学ぶことができました。

何気ない日常に、ありふれた着物姿の女性

おかげさまで、現在もこの道一筋で『和』のデザインを続けさせていただいているのも、着物業界に身をおいたおかげだと心から感謝しております。

弟子の頃から数えて今年で49年、様々な経験を積ませていただき、問題の解決法も提供できる知識とアイディアが自分の中の引き出しに詰まっております。

年齢的に、やっと私のアドバイスを聞いてくれる人と出会えるのではないか。私を必要としている人がいるのではないか?と思っています。

そして、「その時が来たのだ」と、今実感しております。

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成願 義夫(ジョウガンヨシオ)プロフィール
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株式会社京都デザインファクトリー代表取締役社長
伝統文様研究家、着物デザイナー、和文化デザイン思考講師
呉服繁盛店の作り方アドバイザー、

●1955年生まれ
●昭和48年和歌山工業高校工芸家卒業
●同年4月村尾テキスタイルデザイン研究所に入所
  図案の基礎と主に織物の図案を学ぶ。
●昭和54年先輩の図案家に誘われ図案工房設立参加。
  小紋や絵羽模様など、幅広く染の図案を学び描く。
●昭和59年独立
  京都を拠点に小紋、振袖、浴衣の図案を中心にデザインを描く。
●平成元年
  自分のブランド着物販売開始する。(さが美にて)

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