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奇数のお話

『御所の器』 編著 池 修。

明治維新まで天皇の御住まいだった京都御所の『お下がり』

菊の御紋が奇数で描かれている

この本では『お下がり』と称される器の数々が収録されています。

これらは天皇や皇族方が日常の食事に用いた器類で、白磁に四季の花鳥風月文様と共に菊の御紋が散りばめられ、質素ではあるが気品と風格を備えた絵付けが見事です。

さて、この本には『お下がり』ついて、以下ように書かれています。

貴人は日頃食膳に出されたもの全てを召し上がられることは無く、一箸、二箸召し上がられただけで下膳されました。そして、そのお余りは女官が拝領しましたので、彼女らが戴いたり実家に遣わしたとされ、時には器ごともって帰った事もありました。また、皇族が崩御された後、形見などとしてご使用の食器類などが下賜される事もありました。これらの器が『お下がり』と称せられる由縁でもあります。(以上、本書より)

これ迄、一般庶民が目にすることは無かった『お下がり』の器の数々。
貴重な資料だと思います。

因に私がこの本を見て気づいた事があります。
食器に描かれた菊の御紋がほぼ全て奇数で描かれている事です。 

日本人は偶数より奇数(陽数)を尊ぶしきたりがある事はご周知の通りですが、デザイン的には丸や四角の器には偶数の方が纏め易いのに、あえて奇数に拘っているのはやはり皇室といえども、古代中国の陰陽思想の影響を受けていることが判るのは興味深いですね。

私たちに身近なことで言えば、一月一日の元旦から始まり、五節句(正月七日の七草・三月三日の雛祭・五月五日の端午・七月七日の七夕・九月九日の重陽)はすべて奇数日です。

和歌も「五・七・五・七・七」、応援団も「三・三・七拍子」(笑笑)

それに、ご祝儀や葬儀の香典もすべて奇数で施すのが一般常識となっています。

特に冠婚葬祭に関わるビジネスをされている方々は、奇数と偶数、右と左などの古来からの慣しを、大切な日本の伝統として熟知されていらっしゃいますね。

さらに、奇数と偶数の西欧文化と東洋文化の違いなど、一般常識としてデザイナーや若い方々も知っていて損は無いと思いますが、学校や家庭では教えていないのが実情です。

和文化デザイン思考 講師
成願 義夫 (じょうがんよしお)

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