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『著作権侵害』という罪

著作権は著作物の創作により発生し、その著作者に帰属するのは皆様ご周知の通りです。
特許権等の産業財産権と異なり、登録や届出等の手続きは、一切不要です。
これは世界的に共通な制度で、これを『無方式主義』と呼びます。

著作権の存続は、著作物の創作の時から始まり、一定の期間が経過することにより消滅します。
著作権の保護期間は、条約の基準により、各国が自国の法律により制定します。
2017年まで、我が国では著作者の死後50年が原則でした。
ところが欧米では死後70年と、20年の差異があった為、日本でも延長すべきとの議論が起こり、2018年に50年から70年に延長改訂されました。
よって、現在、日本では著作者の死後70年間は著者の権利が守られています。

成願義夫オリジナル襖紙

ところで、最近特に気をつけなければならない問題があります。
例えば、江戸時代に活躍した尾形光琳の作品の著作権は既に消滅していますが、尾形光琳の作品を商用利用したい場合、所有者の許可を得て自分たちで撮影する必要があります。
他社の出版物に掲載されている作品写真の多くは写真の撮影者に著作権が発生していることがあるからです。

厳密には写真は被写体が平面か立体かによって著作物性の有無が異なりますが、写真の著作権を確認する必要があります。

成願義夫デザイン京都駅ビルフォトスポット


インターネットなどで他人の写真を簡単にダウンロードできる現代。
その写真の撮影者に著作権が発生していることをうっかり忘れがちです。
特に商用利用の場合、著作権侵害で訴えられる事例も少なくありません。
気をつけたいものです。
余談ですが、私の図案(デザイン)を利用して制作した着物のデザイン独占権をメーカーが守りたい場合、着物の製作者は「意匠登録」という登録申請手続きをしなければ、法律上、デザインの独占はできません。

成願義夫オリジナルデザイン

著作権や意匠権等の権利侵害に関して、メーカーやデザイナーは、細心の注意をはらわなければなりません。

ところで、私達の記憶に残る最近の著作権侵害事件としては東京オリンピックエンブレム事件がありましたね。

 スペインのデザイン事務所「ヘイ・スタジオ」の作品(左、同事務所のホームページより)とベルギー・リエージュ劇場のロゴ(右)。中央は問題の2020年東京五輪の公式エンブレム

問題の日本人デザイナーは二つの既存のデザインを明らかに盗用していたと判断され、一旦決定されていた採用が撤回され、世界的に大きな恥をかいてしまったのです。

プロである以上、「知りませんでした」「悪意はなかった」では済まされないのです。

成願 義夫
株式会社京都デザインファクトリー

●成願義夫 Jogan Yoshio プロフィール
株式会社京都デザインファクトリー代表取締役
伝統文様研究家、装飾画家、アートディレクター、着物デザイナー、グラフィックデザイナー、伝統産業商品開発アドバイザー

●代表作と最近の活躍
関西国際空港の初代ウエルカムボードのデザイン。
長野県善光寺の納骨堂の納骨壇の扉デザインの他、納骨堂のデザインは多数。
サッポロビールワインラベルなど、手がけたデザインは多数多岐に渡る。

●近況
2018年、秋、成願がデザインした金属製スマホケースが英国ウェールズ国立博物館に永久保管決定。
2018年、冬、和柄をテーマにした民放テレビ番組に解説者として出演。
2019年、春、ジョルジオアルマーニビューティー主催のイベント講師に招かれる。
2019年、夏、京都駅ビルのフォトスポット四箇所のデザインを手がける。
2019年、秋、京都高島屋のバイヤー向け『伝統文様勉強会』講師を務める。
2020年、埼玉県秩父市の招きで2日間に渡り講演会と伝統デザイン勉強会を開催。
2022年、NHKのテレビ番組『美の壷』に出演。

●近年はグラフィックデザイナー、壁面装飾画家、着物デザイナー、伝統文様研究家、伝統産業の商品開発アドバイザー、講演家として、テレビなどにも出演し、幅広く活躍中。  
著書は、和柄デザイン素材集を10冊以上執筆。総販売数は40万冊を突破。
また、著書の大人の塗り絵『和柄のヒーリングぬり絵ブック』(PHP研究所発行)は、累計7万冊を突破していまだにロングセラーを続けている。
成願の和柄デザイン素材集は日本中のデザイン事務所に、必ず1冊以上置かれていると言われている


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