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Manchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜前進への守備〜Vol.8

前回は、マンチェスターシティのゲームモデル、ゾーン3の相手コート高い位置、もしくは3/4の位置から行われる「行動7:ボール出しへの守備」について説明した。

今回は、マンチェスターシティの「前進への守備」について説明する。

マンチェスターシティは、組織的攻撃と同様に、組織的守備の場面においても「ポジショナルプレー」を実践している。

グアルディオラのチームは、ゾーン2から行われる相手チームの前進に対して、最初は、あらかじめ相手チームを分析、チーム内で共有しトレーニングをしたであろう「前進への守備配置」を取る。

ファーストディフェンダーはFWの位置に配置された選手が、相手コートのセンターサークルトップ前10m付近から、プレッシングを開始する。DFラインは、自陣センターサークルの少し後ろ10m付近である(DFラインの設定やプレッシング開始位置は相手のプレースタイルや強みによって変わる)。

基本的に縦20m、横35mの間に10人の選手が配置される。

試合が開始されて、ミドルゾーン(ゾーン2)のプレッシングがうまく機能しない、相手に「前進」を簡単に許してしまう場合は、直ちに「前進への守備配置」が変更される。

グアルディオラのチームは、相手の「前進」を止めることができる配置になるまで、何回もシステムを変更し、相手の「前進の配置」に対応できると、相手が「前進の配置」を変更するまで、その「前進への守備配置」を継続する。

ミドルゾーンプレッシングの方法については、相手の「前進への配置」によって、プレッシャーのかけ方も変わる。相手の強みを消すこと、「前進」をさせないことが大事なので、グアルディオラは試合中に細かい修正を繰り返して最適解を見出す。

その試合における相手チームの「前進の配置」によって、組織的守備の「前進への守備配置」も変わる。もちろん、事前に相手チームを分析した結果に基づくトレーニングをした上である。ただ、このレベルになると、様々なシステム、プレッシングスタイルに適応できる選手ばかりなので、ハーフタイムにプレッシングのかけ方を修正したり、トレーニングしたことのないシステムを実行することもあるだろう。フットボール選手は、臨機応変に対応することができる能力が必要不可欠だ。




ゲームモデル:13の行動

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ゲームモデル:13の行動は、2つの局面(攻撃と守備)があり、その下に4つのモーメントがある(組織的攻撃、攻撃への切り換え、組織的守備、守備への切り換え)。その4つのモーメントの下に13の行動がある。

そして、攻撃戦略と守備戦略がある。これがゲームモデルの構造をシンプルに表したものであり、スペインサッカー協会(特にカタルーニャサッカー協会)が提案するゲームモデルの考え方である。





ゲームモデルのファクター

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ファクター:「守備の組織構造」「ゾーナル守備組織」「組織的守備の集団アクション」「プレッシング」については、ゲームモデルと言うよりも、どのチームにも当てはまる組織的守備のプレー原則なので、ここでは言及しない。

ただ、このファクターは非常に重要なので、前々回のManchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜守備の組織構造〜7(前編)を読んで欲しい。




行動8:前進への守備


プレッシングの適用ゾーンとプレッシングのタイプ:

セイルーロが考案する分割された静的なプレースペースに基づいて、プレッシングの適用ゾーンを4つに分ける:

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セイルーロは上の図のように、攻撃的プレッシング、ミドルゾーンプレッシング、ゴールを守ると分けているが、これはあくまでも目安である。グアルディオラも4つのゾーンで考えている可能性もあるが、ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3と下の図のように3つのゾーンで考えたほうが理解しやすい。

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DFラインの位置や、ファーストディフェンダーであるFWの位置が相手のプレースタイルによって変わる。

例えば、チェルシーやホッフェンハイムのようにボールの循環が非常にうまく、ポジショナルプレーをしてくるチーム、DFラインの背後に長いボールを蹴ってこない「ダイレクトプレー」をしないチームに対しては、ミドルゾーンプレッシング(ゾーン2)を、DFラインを高めに設定し、ハーフラインから自陣10mのところにDFラインを設定する。

ファーストディフェンダーであるFWラインは相手コートのセンターサークルトップ付近10mとなる。およそ縦20mの中に10名の選手が配置され、FWとMFとDFのライン間のスペースを狭くする。

逆に、サウサンプトンFCや、その他のチームでポジショナルプレーをするが、短いパスで「前進」することができない時に、DFラインの背後に長いボールを蹴ってくる「ダイレクトプレー」もしてくるチームに対しては、DFラインをハーフラインから自陣15−18m付近に設定し、ファーストディフェンダーもFWの位置はハーフライン付近となる。





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