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個人分析:セルヒオ・アグエロはなぜ簡単にゴールできるのか(拡大ヴァージョン)

実は、「徹底分析!セルヒオ・アグエロはなぜ簡単にゴールできるのか(下)」を書いたときに、一緒にPWPを作成しました。

それには、アグエロの44個の「個人のポジショニングの基礎」動画と図が含まれています。

今回は、「個人のポジショニングの基礎」の図を、web版footballistaに寄稿した内容をふまえ書きました。また、動画を特典として、希望者にプレゼントすることにします。

【特典】アグエロ:個人のポジショニングの基礎動画を希望者にプレゼントします。特典希望者は、この投稿の最後にあるメールアドレスに「アグエロ:個人のポジショニングの基礎動画希望」と書いてメールをください。

尚、特典動画は、多くの方が希望された場合は、若干、動画を送信するのが遅れるかもしれないので、ご了承ください。

最初に、アグエロを個人分析する際には、マンチェスターシティのゲームモデル内におけるアグエロの役割を知る必要がある。

Manchester City:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)で、マンチェスターシティのゲームモデルについて投稿しているので、興味のある方は読んでみて欲しい。

下記は、ゲームモデルの「13の行動」図である。

上記のゲームモデルの「13の行動」に当てはめて、アグエロの個人の役割である「個人のポジショニングの基礎」の図を説明する。

併せて、アグエロの44個の役割それぞれについて、セイルーロが提唱する「時間的知覚」における「事柄の予測」の3局面、「プレー前」(ボールを受ける前)/「プレー中」(ボール保持者)/「プレー後」(ボールをパスかシュートした後)のどのタイミングで行っているのか分類もしている。

組織的攻撃
(1)ボール出し (ゾーン1)             

1. ボール出しには基本的に参加しない。ゾーン2(ピッチを横方向に3分割した時の真ん中のゾーン。センターゾーン)の相手CBの背後にポジションを取りチームに深さを与える(「プレー前」)。

2. ただし、相手がゾーン1(ピッチを横方向に3分割した時、最も自陣寄りのゾーン)でマンマークをしてきた場合やプレッシングが激しく数的優位ができない場合、フリーな選手が見つからない場合には代替案として、ゾーン2でマークを外してチームメイトにパスコースを提供、足下でボールを受けることでマーク外しのサポートをする(「プレー前」) 。

基本的にCFアグエロの個人の役割には、ボール出しはない。しかし、相手がマンツーマンや、攻撃的プレッシングが激しく、ゾーン1で数的優位が作れない場合において、ボール出しをサポートすることが代替案である。

2019−20シーズンからゴールキックのルールが変わったことで、マンチェスターシティのボール出しの配置や方法に変化が起こることが予想される。

おそらく、アグエロはボール出しにほとんど関与していないので、彼のボール出しの役割には、主だった変化はないのではないだろうか。

(2)前進(ゾーン2)

3. CFは、相手CBとCBの間に立ちDFラインをピン留め。チームに深さを与え、攻撃的MFが空けたスペースを利用する(「プレー前」) 。

4. チームメイトにとって優位となるスペースを生み出す(「プレー前」)。

5. 相手のライン間(MFラインとDFラインの間、もしくはMFラインの間)のハーフスペースで、ボール保持者にマーク外しのサポートを提供する(「プレー前」) 。

6. パスをした後、連続してサポートをする(「プレー後」)。

7. 最大限の情報を集めるための体の向き(半身)を取る。 (「プレー前」) 。

 8. 最大限深さを取り、相手のピボーテ(守備的MF)の背後のライン間にパスコースを見つける(「プレー前」) 。
前進(ゾーン2)におけるCFアグエロの個人の役割は、チームメイトに深さを与えて前進するスペースを作ること、次にMFとDFのライン間に入り、MFをサポートし、チームのプレーの前進に貢献することである。

アグエロの特徴の1つにプレーの連続性がある。パスした後、次のスペースへ素早く移動する。いつもボールを受ける時は体の向きが半身であり、最大限の情報を集めているので、ボールを失いにくい。

もう1つの特徴はポストプレー、ポストに入るタイミングが絶妙である。相手の目がボール保持者に向いた瞬間、相手CBの背後からすっと現れ、相手をブロックすることなく小さなスペースでボールを半身で受ける。相手が背後からプレッシャーをかけてきた場合は、サポートに入ったチームメイトにワンタッチでパスをする。

フリーであれば、ワンタッチでターンをして前を向き前進、次のプレーに移行する。体の大きくない日本人のお手本のようなプレーであろう。


3)ダイレクトプレー(代替案)

9. ゴールキックの時は相手の背後にポジションを取る(「プレー前」) 。

10. 相手の背後でボールを受けたら、ターンする。ターンして前を向くことができなければ、深いマーク外し(※)をする選手を探す。もし、近くにサポートの選手がいなければボールをキープする(「プレー中」)。

※深いマーク外し:相手の背後でボールを受けること

11. GKがボール出しできない場合、相手DFラインの背後でボールを受ける(「プレー前」) 。

12. ボールを受ける選手が実行できるアクションに応じて、深いマーク外しか、セカンドボールを拾うためのサポートを目指す (「プレー前」) 。

13. ゾーン1でDFやGKが相手から激しいプレッシャーを受け、相手のMFラインとDFラインとのライン間にスペースがある場合、マーク外しのサポートをしてそのスペースでロングパスを受け、チームメイトのサポートを待つ (「プレー前」) 。

ダイレクトプレーは、マンチェスターCのゲームモデルには基本的に存在しない。どの試合でもダイレクトプレーはほんの数回である。

しかし、近年の守備戦術の進化により、ダイレクトプレーを選択せざる得ない場合に用いる。オフサイドがないゴールキック時に相手CBの背後にポジションを取るのは、もしGKにキックの精度とパワーがあれば面白い戦術である。

2019−20シーズンからゴールキックのルールが変わったことで、アグエロの個人の役割にも新しい変化が起こることが予想される。


(4)セットオフェンス(ゾーン3)

14~22:対ゾーナルディフェンス向けのプレー

14. パスをした後、ボールも選手も決して止まらずアクションを連続する(「プレー後」)。

15. 例えば深いマーク外しやカットインなどを用いて、チームメイトにとって有利なスペースを生み出す。(「プレー前」)。

16. 相手のDFとMFのライン間にポジションを取り、MFラインをサポートする(「プレー前」)。

17. チームに深さを与える(「プレー前」)。

18. ポストプレーをする(「プレー前」)。

19. ボールがサイドにある時は、2人目のCBの背後(4バックの場合)にポジションを取る(「プレー前」)。


20. 相手CBの背後(視野外)にポジションを取り、深いマーク外しをする(「プレー前」)。

21. フリーマンを生み出すために相手にスクリーンをかける(特にポジションフットボールの場合)。(「プレー前」)。

※ポジションフットボール:基本的なオフェンスポジションから時どきカッティングなど(1人が動く)をする以外は、ポジションを変えないものである。この方法は1対1の機会が生じるか、DFラインが下がることで、ミドルシュートのチャンスが得られるまでボールを素早く展開し続ける。 相手DF1人ひとりとマッチアップするようにオフェンス選手を配置する。1人の選手だけが動いて、例えば、相手のウィークポイントであるポジションでオーバーロードの状況(2対1)を作り、そのゾーン攻略する

22. センタリングが上がる瞬間にもう1人のFWと位置をクロスする(「プレー前」) 。


23、24:ボールを失った時に備えた準備

23. ボール保持者に短い距離のサポートを提供する(「プレー前」)。

 24. シュートのリバウンドを予測する(「プレー後」)。

セットオフェンス時、アグエロの特徴が最大限発揮される。

前述したが、プレーの連続性がアグエロがクラックである証である。1つのプレー後、次から次へと空いているスペースを認知し、移動する。このプレーの連続性が攻守の切り換え時にカウンターアタックやカウンタープレッシングの時にも役立っている。

次にマーク外しである。アグエロが常にゴールを決め続ける理由は相手のプレーが読めること、次のプレーの予測に優れていることの2つが挙げられる。

相手のプレーが読めるから、相手の予測と逆の動きができる。次のプレーの予測に優れているから、プレーを連続させたり、シュートのリバウンドを予測できるのだろう。

プレーの連続性、相手のプレーが読める、プレーの予測、この3つがアグエロがクラックでありゴールを決め続ける理由であろう。技術的に優れていることは言うまでもない。


守備から攻撃への切り替え
(5)カウンターアタック

25. オフェンシブポジションを取る(「プレー前」)。

※オフェンシブポジション:守備の役割には参加しないで、ボールをフリーで受けられる位置、方向にポジションを取ること。ボールを取り戻した時、素早い攻撃、カウンターアタックを仕掛けることが可能となり、相手にディフェンシブなポジションを維持させる

26. 相手の背後でボールを受け、シュートに持っていく(「プレー前」)。

27. ボール保持者が近くにいる場合は、深さを作りマーク外しのサポートをする(「プレー前」)。

28. 前方にパスコースがない場合は、サイドに開いてボール保持者が前進できるスペースとパスコースを作る(「プレー前」)。

クラックであるFWの選手は守備をしないと言われることも多いが、守備時に前に残ってオフェンシブポジションを取り、カウンターアタックの準備をしている場合が多い。

マンチェスターCの場合も、基本的にアグエロが前に残り、カウンターアタックの準備をしている。

ボールを回復した場所によって、アグエロの役割は変わってくる。どちらにしても、カウンターアタックはアグエロを起点として攻撃を展開する。


(6)攻撃の再構築

29. 前方に多くの相手選手がいて数的不利である場合、危険回避のパス(バックパス)を使い、攻撃を再構築する (「プレー中」)。
マンチェスターCの守備から攻撃への切り替えの最初のオプションはカウンターアタックである。もし相手の帰陣が速く前方で数的優位ができない場合は、一度危険回避のバックパスをして攻撃を再構築しなければならない。これはマンチェスターCにとって非常に重要なプレーである。


組織的守備
(7)ボール出しへの守備

30. CBの中央からのボール出しを妨げ、サイドレーンに体が向くように方向づける。相手のピボーテへのパスコースを切る(「プレー前」)。

31. 自身が担当しているCBがボールを保持している場合は、ゾーンを維持しないで追い続ける(「プレー前」)。

32. 自身が担当している相手CBからGKにバックパスが入った場合、その相手CBへのパスコースを切りながら、L字の動きで相手GKに激しくプレッシャーをかける (「プレー前」)。

33. ボールがサイドにある場合は、サイドチェンジと自身が担当するCBと相手ピボーテを監視できる中間ポジションを取る。チェルシーのジョルジーニョのような選手がピボーテにいる場合には特に重要になる(「プレー前」)。

34. 相手GKからのボール出し時は、担当する相手CBへボールが入らないように監視する(「プレー前」) 。

35. 相手GKからのゴールキックではペナルティエリア外のセンターレーンにいる選手にボールが入らないように監視する(「プレー前」) 。

36. 相手が3バックの時は、真ん中のCBにボールが入らないように監視する(「プレー前」) 。

37. ボールがサイドにある場合は、サイドチェンジと自身が担当するCBを監視できる中間ポジションを取る(「プレー前」) 。

アグエロのボール出しへの守備については、特典動画をご覧になられるとより理解が深まると思う。また、2019-20シーズンからゴールキックのルール変更に伴い、アグエロのボール出しの個人の役割が変更することが予想される。

現代のフットボールは守備戦術が進化し、FWにも守備における個人の役割が数多くある。アグエロには最低でも8つ、ボール出しへに対する守備の役割があった。CFアグエロが守備時、最初に相手にプレッシャーをかける選手である。

CFの守備は、闇雲に相手にプレッシャーをかけるのではなく、ポジショニングが最も大事であり、内側へのパスコースを消すカバーシャドウをしながら、中間ポジションを取った上で相手にプレッシャーをかけていく。

もし、仮にアグエロがこの役割をサボってしまったら、相手に簡単に、ボール出しと前進を許し、決定的な場面を作られる可能性が高い。それぐらいモダンフットボールはハイレベルであり、一瞬たりとも気が抜けない。

その中で現代のFWは攻守にわたり活躍を求められている。特にチェルシー戦では、ピボーテのジョルジーニョへのパスコースを切る役割もあったので、アグエロもかなりの消耗があったと思われる。


(8)前進に対する守備

38. CBの中央からのボール出しを妨げ、サイドレーンに体が向くように方向づける。相手のピボーテへのパスコースを切る(「プレー前」) 。

39. サイドレーンにボールがある場合、サイドチェンジとCBへのパスコースを切ることができる中間ポジションを取る(「プレー前」) 。

40. サイドレーンにボールがある場合、サイドチェンジとピボーテへのパスコースを切ることができる中間ポジションを取る。チェルシーのジョルジーニョのように、相手のが強力な時は特に強く意識する(「プレー前」) 。

アグエロは非常に効率の良い守備をする。必ず中間ポジションを取り、相手のパスの選択肢を2つ消す。プレッシャーをかける時も、カバーシャドウやワンサイドカットを使い、ボール保持者である相手CBのプレーを限定している。

チェルシー戦以外は、ほとんど完璧な守備を見せた。チェルシー戦では、ピボーテであるジョルジーニョへのパスコースを切る中間ポジションを取ることになっていたので、他の試合と少し役割が変わっていた。


(9)ダイレクトプレーへの守備

 ダイレクトプレーへの守備は、ボール出しへの守備に含まれている。


(10)セットオフェンスへの守備

41. 守備から攻撃への切り換えの可能性に備えてカウンターアタックの準備をする(オフェンシブ・ポジションを取る)(「プレー前」) 。

42. チームが5バック、6バックにした場合は、ゾーン1まで下がりMFラインのディフェンスをサポートして、相手チームのグラウンド中央からのコンドゥクシオンによる 前進を妨げる。(例:チェルシー戦、ジョルジーニョ対策) (「プレー前」) 。

上の図は通常のセットオフェンスへの守備時のアグエロの配置である。


上の図は、6対0でマンチェスターシティがチェルシーに勝った試合のアグエロの配置である。ゾーン1まで落ちて、ジョルジーニョをマークする役割があった。

基本的にCFアグエロのセットオフェンスの守備の役割は1つしかない。オフェンシブ・ポジションを取り、カウンターアタックに備えること。

しかし、チェルシーのジョルジーニョのように素晴らしいピボーテが相手チームにいる場合、CFであるアグエロの役割は増える。例えば、チェルシー戦では、少しでもジョルジーニョにプレッシャーをかけるのが遅れたりすると決定的な場面を作られていた。

アグエロの守備は、完璧とは言えないが、かなり効果的にジョルジーニョを抑えていた。ここではっきりと言えるのは、アグエロは監督グアルディオラから与えられた役割を100%の力で実行しようとするチームプレーヤーであると言うことである。


攻撃から守備への切り替え
(11)プレッシング(カウンタープレッシング)

43. ボールに最も近い選手がファーストディフェンダーとして、相手にプレッシャーをかけてボールを回復する(「プレー前」) 。

44. オフェンシブポジションの選手はスペースを確保しカウンターアタックの準備をする(「プレー前」) 。
攻撃から守備への切り替えにおけるCFアグエロの役割は2つ。ボールを回復する位置に応じて素早くカウンタープレッシングを仕掛けるか、もしくはオフェンシブポジションからスペースを素早く見つけてカウンターアタックの起点となるプレーを、どの試合でも継続して実行することができている。

グアルディオラのトレーニングが素晴らしいのは言うまでもない。だが、世界トップレベルの選手はサッカーの4つの局面である攻撃、守備、攻守の切り替えの瞬間に、個人個人がしっかりと自分の役割を遂行することで11人の組織的チームプレーを構築していることが、このアグエロの分析を通して理解できたのではないだろうか。


(12)後退

なし


(13)プレッシングと後退

(11)プレッシング時と同様の役割。

CFアグエロには、(12)後退の役割はない。

マンチェスターCのゲームモデルには、原則的に後退はない。当然、試合の中では「後退」の場面がないわけではない。しかし、あったとしても1試合でほんの数回である。これについてはここでは深く言及しない。


最後に、マンチェスターシティの監督グアルディオラが、アグエロについてこのように述べている:

「アグエロはいつでも我われの要求に応えてくれる選手だ。彼はチームの一員として我われを助けたいと考えてプレーしている。少し疲れているように見えた時もあったが、彼は本当に特別な選手だ」


sakamotokei68@gmail.com

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スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得。2016-2017シーズン CF Badalona (2部B)で試合分析を担当。FC バルセロナアカデミー品川大井町校でコーディネーター兼コーチ2019 4月-12月。フットボリスタ・ラボ。

コメント2件

僕はサッカーを見たり、やったりしませんが。これくらいの精度で分析、解説しているのは自らのレストランサービスに応用できると感じました、ありがとうございます!
コメントありがとうございます。レストランサービスに応用できるのでしょうか!アグエロを分析するのにはかなりの時間がかかっています。分析方法は、スペインサッカーコーチングコースで学びました。選手をスカウティングする時に使います。今後ともよろしくお願いします。
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