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Manchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜セットオフェンス〜4

今回は、マンチェスターシティの行動4:「セットオフェンス」について。

本来なら、順番で行くと、行動3:「ダイレクトプレー」を書くはずなのだが、マンチェスターシティのゲームモデルには、「ダイレクトプレー」は存在しない。

正確に言うと本当は存在する。だが、それは、ゾーン1で、相手のプレッシャーが激しく、数的優位やオープンスペースを見つけられない場合に限り、ゾーン1から「ボール出し」をするのではなく、「ダイレクトプレー」を選択する。

「ダイレクトプレー」は1試合を通じて多くても10回あるかないか。少ないときは、0回のときもある。

もし、「ダイレクトプレー」を知りたい方は:ゲームモデルの作り方:13の行動(基礎編)〜行動3:ダイレクトプレー〜⑥を読んで見てください。


ゲームモデル「13の行動」

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ゲームモデルのファクター(応用編)

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セットオフェンスのファクター

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マンチェスターシティのシステムは攻撃、守備において、最低でも3つづつ存在する。

ここでは、セットオフェンスの配置オプションも紹介するが、マンチェスターシティの基本システムは4-3-3と考え、ゲームモデルを分析した。特に選手個人の役割については4-3-3システムに当てはめている。


セットオフェンスのファクター

攻撃の組織構造:
定義:

プレーの前進を容易にし、ボールを受ける選手がコンドゥクシオンをするのが有利になるように調整し、ライン間バランスを維持する目的でチームが採用する集団のポジショニングである。
ファイナルゾーンのプレー:対ゾーナル ディフェンス
定義:
プレーの前進中にチームの構造とポジショニングがセットされ、採用されたスタイルに応じて創造された有利な条件を利用する時。
ボールを失った場合の良い準備が攻撃を補償する:
定義:

ボールを保持しているチームが、ボールポゼッションを失った場合に実行するチームのアクションである。カウンターアタックを避けるために適切な配置にポジションを取る。


行動 4:セットオフェンス

ファクター:ファイナルゾーンのプレー

一般的な基準/キーファクター

・ファイナルゾーン内の全ての動きと移動は、斜めに、できれば深さを持って実行されなければならない(ボールの状況に応じて)。

・選手は、ポジション優位を生み出すために、選手間、ライン間に動いてボールを受ける。

 ・選手は選手間、ライン間にフリーマンを生み出すためにオーバーロードし、相手をピンどめする。

・選手は、サイドレーンにフリーマンを生み出すために選手間、ライン間に位置して、相手をピンどめする。

・スペースを作り、埋める。

 ・ボールがセンターリングされようとしている時、攻撃に参加する選手は、前もって決まっているスペースを埋める。

 ・優位性を創造するために特定のゾーンでグループ(2、3人)を見つける。

 ・スペースの使用は連続的に行われるのが好ましい。

 ・シュートゾーンを埋め尽くす。

 ・侵入したいゾーンは空けておいて、適切な瞬間に現れる。

 ・パスをした後、アクションを連続する(決してボールも選手も止まらない)。

 ・選手は、完全にマークが外れている状況のみ、止まってボールを受けることができる(ファイナルゾーンでは非常に稀な状況である)。

 ・3人目の動きと3on lineとサイの動きのコンビネーションプレー。

ファイナルゾーン(ゾーン3)では、「動きも、ボールも止めることなく、斜めに深く選手が動く」ことが基本的な原則である。この原則は、マンチェスターシティだからということではなく、フットボールのファイナルゾーンの攻撃における一般的な原則だ。

ライン間(選手間)にフリーマンを作る:オーバーロード

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「ライン間(選手間)にフリーマンを作る」のが、ゾーンディフェンスを攻略するポジショナルプレーの原則である。グアルディオラのチームの特徴がこの一般的な基準/キーファクターに現れている。

上の図のファイナルゾーンでは、相手ディフェンスラインの選手間のライン間(ハーフスペース)で、D.シルバがパスを受け、ゴールチャンスを作り出す。相手左SBのところでオーバーロード(過負荷)、2対1(D.シルバとB.シルバ対相手左SB)の数的優位ができている。

ライン間でボールを受ける時は、必ず、FWラインの選手が、「ピンどめ」をしている。図の右からB.シルバ、D.シルバ、S.アグエロ、G.ジェズス、B.メンディの5人が「ピンどめ」をすることで、相手ディフェンスラインの4人は身動きできない状態になっており、数的不利でもある。


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上の図は、FWラインの選手(L.サネ、S.アグエロ、D.シルバ、B.シルバ、R.スターリング)が相手ディフェンスラインを「ピンどめ」している。

マンチェスターシティが最も得意とするセットオフェンス時の配置である。ファイナルゾーン(ゾーン3)の左ハーフスペースでオーバーロード(S.アグエロとD.シルバ 対 相手右CB)ができている。

相手右SBと右CBの間にポジションを取っていたCFのS.アグエロと、OMFのD.シルバがシンクロするように動く。S.アグエロが相手MFラインとDFラインのライン間に落ち、D.シルバは、高い位置を取る。この2人の動きと、L.サネが相手右SBを「ピンどめ」している。

この局面で3対2の数的優位(L.サネ、S.アグエロ、D.シルバ 対 相手右SBと右CB)ができている。もう少し細かく分析すると、ファイナルゾーン左ハーフスペースのところで2対1(S.アグエロ、D.シルバ 対 相手右CB)ができている。相手右CBはS.アグエロをマークするか、高い位置を取ったD.シルバをマークするか迷い、「ピンどめ」されている。

これが、ゾーンディフェンス攻略の定石である。相手ディフェンスの選手が担当するゾーンに2人のオフェンス選手が入ることで、相手CBは身動きできなくなるのだ。


選手間(ライン間)にフリーマンを作る:

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「選手間にフリーマンを作る」とは、例えば、下の図のように、相手MFラインのピボーテと右SMFの間に、オフェンス選手がポジションを取ることである。

ライン間にフリーマンを作るとは(本当はどちらもライン間なのだが)、相手ディフェンスラインの間にオフェンス選手がポジションを取ることである。例えば、相手MFラインとDFラインの間やFWラインとMFラインの間にポジションを取ることである。


サイドにフリーマンを作る:

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上の図は、「サイドにフリーマンを作る」ための囮として、ファイナルゾーンの左ハーフスペースで相手MFラインとDFラインのライン間にポジションを取るG.ジェズス。

WGやSBに驚異的な突破力のある選手がいる場合は、有効な方法である。サイドチェンジと絡めて使うと、さらに効果的である。


スペースを作り、埋める:

「スペースを作り、埋める」、これもフットボールの一般的な原則である。マンチェスターシティのスペースを作り、埋める方法は、グアルディオラがデザインし、そのデザインされた選択肢から、選手が、そのプレーの状況と、選手同士の相互作用によって、即興プレーとして生み出されていると考える。もちろん、グアルディオラがデザインしたもの以外の、選手同士の相互作用による即興プレーも数多くあることだろう。


ディアゴナルランでスペース作り:

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上の図は、グアルディオラのチームの「スペースを作り、埋める」方法の一つの形である。グアルディオラがバイエルンで監督をしていた時も、このように、数人で深いディアゴナルランによるスペース作りが頻繁に行われていた。


相手をボールに引きつけて、背後を取る:

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この「侵入したいゾーンは空けておいて、適切な瞬間に現れる」も「スペースを作り、埋める」の方法論の一つであり、フットボールのオフェンスにおける一般的な原則である。

スペースを作るには、ボール保持者が相手を自分に引きつけ、相手ディフェンスがボール保持者に気を取られている瞬間に、ボールを持っていない選手は相手の背後から裏のスペースへ走り出す。

上の図は、D.シルバがボールを使って、相手ディフェンスを自身に引きつけられるだけ引きつけて、相手ディフェンス陣の目がボールに向いた瞬間に、左WGのL.サネと呼吸を合わせて、相手右CBと右SBの間にできたスペースにスルーパスを出している。

 L.サネは、相手の背後(視野外)にポジションを取り、オフサイドに気をつけつつ、相手SBの背後を取る。

D.シルバと  L.サネの2人は、タイミングを合わせることが大事であり、日々のトレーニングの積み重ねで、息のピッタリとあったコンビネーションプレーを見せる。


ゾーンへの侵入(センターリングに対して):

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マンチェスターシティは、通常、オフェンスに参加している6人がセンターリングに対応し、後方に残っているピボーテと3バックの4人で、「ボールを失った場合の良い準備を補償」している。

どうしても点が欲しい場面では、ピボーテもペナルティエリア前まで上がって7人で、センターリングに対応する場合もある。


グループ(2−3名)

優位性を創造するために特定のゾーンでグループ(2、3人)を見つける。
グアルディオラは、監督としての自分の仕事は、チームが最良の状態で2ライン間にボールを運ぶところまでであり、そこから先、フィニッシュに繋がる最良の道を見出すのは最もタレントに恵まれた選手たちの仕事だ

グアルディオラは上記のように述べているが、彼は、ファイナルゾーンを攻略するグループ戦術を日々トレーニングをしていると考える。もちろん、ファイナルゾーンは最も攻略が難しく、時間もスペースもない。個人のタレント性や即興性に任せることが多いのは事実である。

しかし、5試合を分析すると、ファイナルゾーンにおいて、2人組、3人組の関係によるコンビネーションプレーが頻出する。

グループ戦術は、選手同士の相互作用によって、創発が生じ、それが即興プレーとして表出する。

2人組の関係では、このレベルの選手であれば、個人戦術は身についているので、日々のトレーニングや試合を通じて、息のあったコンビネーションプレーができることだろう。

ただ、例えば、ポケット方向へのパラレラは、グアルディオラが明確にこのポケットのエリアでボールを受けて欲しいという指示やトレーニングをしていることは明白だ。


2人組の関係:壁パス、オーバーラップ(ドブラール)、パラレラ(ポケット方向へ)

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パラレラ:2人組の関係。ポケットへのパラレラが非常に多い。

2人組の関係のグループ戦術については、皆さんご存知の「壁パス」や「オーバーラップ(ドブラール)」を使う。そして、頻出するのが、相手ペナルティエリアのポケットへの「パラレラ」である。

ポケット方向へ相手ディフェンスの背後からゴールから遠ざかるように斜めに動くこと(カットアウト)で、相手GKから少し遠く、前へ出ることをちゅうちょさせ、かつ相手ディフェンスの選手も守ることが困難であり、いつも空いているスペース(ポケット)でボールを受け、シュート、センターリングをすることができる。

このポケットのエリアでフリーでボールを受けることができると、決定的な場面になる。

ゆえに、グアルディオラのチームは、ポケットのエリアを最終的に攻略することで、得点チャンスを作り出そうとしている。


3人組の関係:

3人組の関係については、必ずトレーニングで実践していることだろう。
つまり、グアルディオラは、ファイナルゾーンを攻略して、ゴール前にフリーな選手を一瞬でも作ることをトレーニングしているのだと考える。

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3人組の関係:スプリットの動き

スプリット1:

バスケットボールでよく見る動きだ。

左WG(ボール保持者)はCFのポジションに入った選手へパスした後、グラウンド中央方向へ、CFの横を通ってカットインを実行。
左WGがカットインした後、左SBはすかさず左WGの背後を通ってオーバーラップ(ドブラール)を仕掛ける。通常、相手右SBは、左WGの動きに一瞬ついていくので、その瞬間、左前方にオープンスペースができ、そのスペースで左SBがフリーでパスを受けることができる。


スプリット2:

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3人組の関係:逆スプリットの動き

スプリット系の動きは、相手の背後を取る、ディアゴナルランの動きが入るので、もう1人の選手が、ディアゴナルランと逆の動きをすることによって、相手のマークの仕方によって、どちらかがフリーになりやすい。

2人のうちどちらかが先に動き、囮となる必要がある。


3人目の動きと3on line とサイの動き:

3on line とサイの動き」は、フットサルでよく行われている動きだ。

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「3 on lineとサイの動き」は、ファイナルゾーンを攻略する時に、2018-19シーズンに結構な頻度で使われたコンビネーションプレーである。

特徴は、「3 on lineとサイの動き」を「3人目の動き」とミックスして使っていることで、相手ディフェンスを崩すには、非常に効果的であった。

様々なバージョンがあり、先に「3人目の動き」を入れてから、「3on line とサイの動き」のコンビネーションプレーというのもあった。

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3人目の動きとオーバーロード:ライン間

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ファイナルゾーンのハーフスペースのライン間(相手MFラインとDFラインの間)にフリーマンを作るのは、グアルディオラのチームの肝となる形であり、これぞポジショナルプレーである。

ライン間でオーバーロード(2対1)の状況を作り出し、この図では、相手右CBを「ピンどめ」し、S.アグエロが縦パスを受けて、相手MFラインとDFラインのライン間でフリーになっている D.シルバへワンタッチパス。前を向いたフリーな状況でボールを受けたD.シルバは攻撃を終わらせることができるだろう。

相手のライン間で、ボールを前を向いた状態で受けることができるので、決定的な場面を作り出すことができる。


3人組の関係:旋回(空けたスペースを埋める)

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この旋回の動きは、フットサルにおいて、一般的な動きである。ファイナルゾーンのプレーにおいての一般的な基準/キーファクターである「スペースを作り、埋める」方法の一つであり、マンチェスターシティでも効果的に使われている。

ポイントは、1人の選手がスペースに動くことで、その動いた選手がいたスペースに他の選手が入り埋める。その動きが旋回しているように見えることで旋回と言われている。

ボール保持者は、先にスペースに動いた選手、もしくは後から、スペースを埋めた選手のどちらがフリーになるか、相手のマークの仕方を瞬時に見極め、スペースでフリーになっている方の選手にパスを出す。


ファイナルゾーンにおける攻撃戦術の基本コンセプト

ファイナルゾーンのプレー:
1. 常に2対1(オーバーロード)の状況を生み出す。
2. ボールを持っているチームメートの背後からオーバーラップ(ドブラール)。
3. 相手の前でクロスする。
4. ボール保持者を1対1の状況でプレーさせるために相手をピンどめする。
5. チームメートをフリーにするために、コンドゥクシオンで相手を引きつける。
6. 常に、ポジション優位(相手の背後、視野外)の獲得を目指す。
7. 個人戦術(マーク外し、幅、深さ)とグループ戦術(2、3人)を使う。
シュート:
1. ペナルティエリアの中にはいない、到着する(侵入するスペースを空けておく)。
2. プレーが行われている方と逆に動く。
3. センターリングを上げる選手と、シュートをする選手はタイミングを合わせる。
4. 相手ディフェンスの間を攻めて、ポジション優位を獲得する。
5. フェイントは直接相手DFに対して仕掛け、チームメートに別の行動を取ることを促す。

「ファイナルゾーンにおける攻撃戦術のコンセプト」については、マンチェスターシティだからということではなく、どこのチームにも当てはまる、普遍的なファイナルゾーンのプレーコンセプト、原則である。


ボールがサイドの選手に入った時のシュートするためのゾーン侵入(センターリングに対して)

・センターリングがされようとしている瞬間、あらかじめデザインされたスペースに侵入する。
・スペースへの侵入は連続的に行われるべきである。
・最大限シュートゾーンに侵入する。
・侵入するゾーンは空けておいて、センターリングされる瞬間に姿を表す。

ボールがファイナルゾーンのサイドにある場合においての、ペナルティエリア内の侵入についても、マンチェスターシティのゲームモデルというのではなく、普遍的なセンターリングに対してのプレー原則である。


その他のゾーンへの侵入方法

ゾーンへの侵入(クロス)
ゾーンへの侵入(スクリーン)

特に、S.アグエロとG.ジェズスとの2トップであった時に、ゾーンへの侵入の仕方をクロスにする試合があった。これは、グアルディオラの指示よるところが大きいだろう。相手のディフェンス方法が、ペナルティエリア内のセンターリングに対してマンツーマンであれば、囮になる選手がスペースを作ることが可能となるので、ゾーンへの侵入をクロスで実行するのは、非常に有効な手段だろう。


ゾーンへの侵入(スクリーン)。このスクリーンも非常に数は少なかったが、相手のペナルティエリア内のセンターリングに対してのディフェンス方法がゾーンであった場合に有効である。

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例えば、上の図のように、右サイドからセンターリングの場面、ニアポストいるS.アグエロが、フォアポストにいる選手をフリーにするために、相手を両手で掴みブロックして、身動きできなくする。その瞬間、フォアポストにいたチームメートの選手が素早く、アグエロの前に入り込みセンターリングにフリーで合わせてシュート。


セットオフェンス:選手間の配置のタイプ

マンチェスターシティは、ポジショナルプレーを実践する。通常は、相手と逆の配置を使い、選手がライン間にポジションを取り、パスコースを作る。

相手の配置とマークのタイプ(通常はゾーンディフェンス)を見極めて、マンチェスターシティは、それに適応した配置を取る。


配置オプション1:相手と逆の配置 2-3-2-3 対 5-4-1ゾーンディフェンス

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配置オプション1.2: 相手と逆の配置 2-3-2-3 対 4-1-4-1(トータルゾーンディフェンス)

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配置オプション2:相手と逆の配置 3-2-5 対 4-4-2ゾーンディフェンス

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マンチェスターシティは、相手の最終ラインで、できれば数的優位、もしくは同数を作ることを目指している。通常、相手ディフェンスが数的優位の状況になるのだが。グアルディオラの真骨頂である。

しかし、例えば、ナーゲルスマンが監督のホッフェンハイム(CL予選リーグ)は、6バックにしたりと、ファイナルゾーンの最終ラインで、マンチェスターシティに対して数的優位を確保していた。


配置オプション3:相手と同じ配置 3-3-4 対 4-4-2ゾーンディフェンス

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相手がマンツーマンディフェンスをしてきたり、ゾーンディフェンスの最終ラインが下がり、相手のディフェンスラインの背後にスペースがなく、ライン間にもスペースがない場合は、グアルディオラはこの方法を取ることが多い。

それはポジションフットボールの実践である。

ポジションフットボールとは、全員が自分のポジションから動かず、1人、2人だけが、カットインしたり、ライン間にポジションを取るなどして数的優位を作り、相手をマンツーマンのような状況に追い込むのだ。

ポジションフットボールと言っても、攻撃のディフェンスラインでは、数的優位を作るという原則があるので、1人多い。バスケットボールのように厳密な1対1の状況ではない。しかし、ほとんどのポジションで1対1ができるように、相手の配置と同じ配置にしている。

相手は、自身のゾーンに相手が1人ずつ配置され、それも非常に近くにいるので、そのゾーンから動くことができなくなる。

例えば、1人のオフェンス選手が1対1で勝つと、他の選手をマークしていた相手ディフェンスは、その選手にプレッシャーをかけなければならず、そうなると、どこかにフリーな選手が生み出される仕組みだ。

例えば、配置オプション3の図で、マンチェスターシティのプレミアリーグ:ハダーズフィールド・タウン戦後半の狙いは、左サイドでフリーになっているB.メンディの突破から得点チャンスを作ることだった。

左ハーフスペースで、I.ギュンドアンだけが相手MFラインの間の選手間にポジションを取り、ポジション優位を獲得している。左サイドレーンでは、左SBのB.メンディが高い位置を取り、フリーである。

相手右SBがB.メンディをケアしたいが、S.アグエロが相手右SBのゾーンに位置し、「ピンどめ」している。



機能不全となったCL予選リーグ:ホッフェンハイム 戦の配置

配置オプション4:機能不全となった4-3-3 対 4-3-3

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相手のホッフェンハイムが3トップなので、マンチェスターシティのDFラインの4人は、横にラインのような配置。ディフェンスラインで数的優位を確保する原則があるので、なかなかSBがMFラインに参加したり、ファイナルゾーンに上がることができない。

ファイナルゾーンのハーフスペースとセンターレーンのグラウンド中央のゾーンは、あらかじめ相手の3MFに埋められてしまい、特に、D.シルバとI.ギュンドアンは、ハーフスペース内でボールを受けることができないので、サイドレーンに開いてパスを受けることが多くなる。

ピボーテのフェルナンジーニョは、一見フリーなように見えるが、3トップがカバーシャドウで、DFラインからフェルナンジーニョへのパスコース消す。もし、パスが通ったとしても、相手ピボーテの激しいマークにあう。

S.アグエロへのパスコースも相手ピボーテのカバーシャドウで消されている。

この相手の配置だとDFラインからWGまで「Uの字」を描くようにパスを回すことは簡単だが、グラウンドセンター(ハーフスペースとセンターレーン)を使った攻撃は難しい。グアルディオラが実践したい、グラウンド中央に相手を引きつけて、外側へボールを配給する攻撃ができないことを意味している。つまり、中盤を形成することができないのだ。


配置オプション5:3-2-5 対 6-1-3 

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CL予選リーグホッフェンハイム戦後半、どうしても得点が欲しいマンチェスターシティは、ファイナルゾーンの攻撃では、DFラインの原則を放棄して、3バックで3トップに対する。

そして変更点は、CBのJ.ストーンズをフェルナンジーニョとのダブルボランチに配置。 J.ストーンズはディフェンス時は、4バックの右CB、ファイナルゾーンのセットオフェンス時の配置は「偽りのCB」である。この後半は、グアルディオラはギャンブルに出た。

そうは言っても、相手もMFを1人に削っているので、大局では、5(3-2) 対4(3-1)の数的優位を確保しているとも言える。

オフェンスラインでは、5対6であり、相手のホッフェンハイムが数的優位を保っている。

このシステムでは、中盤(ドブレピボーテ)を経由した攻撃ができることだろう。しかし、相手は6バックであるので、背後からボールを運んでくる選手を入れても6対6にの同数になる。どちらにしてもグアルディオラの思い描いた攻撃にはならなかったことだろう。


セットオフェンス:選手間の基準/キーファクター

FWはボール保持者にパスコースを提供し、ボール保持者は、深く前進することを優先する。

 選手の動きは、自分自身と同じラインの選手と他のラインの選手を利用する。

 チームメートにコンドゥクシオンを使って前進させる場合、FWはグラウンド中央から相手のマークを外してパスコースを作る、もしくは相手ディフェンスを自分に引きつけて、チームメートの前進を保証する。

セットオフェンス時の選手間の基準/キーファクターは、FWラインとMFラインの選手に対してのものだ。FWラインにいる選手は、MFラインの選手に対して前進するスペースを作るために、パスコースを確保しながら、できるだけ高い位置を保つ必要がある。

選手間の基準/キーファクターについても、マンチェスターシティのゲームモデルというより、ボールポゼッションをするチームのセットオフェンス時の普遍的なプレー原則である。


セットオフェンス:選手の基準/キーファクター

オフェンスラインに参加している選手:
チームに深さを与える。

 相手CBをゴールから引き離す(チームメートのために有利なスペースを生み出す)。

 相手CBの背後にマークを外す (相手ゴール方向に)。

 最大限の情報を集めるための体の向き(半身)。

 ボール保持者にマーク外しのサポートを提供する(ポストプレー含む)。

深いマーク外しとサポートを交互に行う。

 マークされていない場所(視野外)にポジションを取り、相手ディフェンスに不正確な情報を与える。

 チームメートにとって有利なスペースを生み出す(例:深いマーク外し、パラレラ、3on line サイ、スプリット、ドブラールの動き等)。

 MFラインをサポートする(相手DFとMFのライン間にポジションを取る)。

 サイドレーンにボールがある場合は、相手CBの背後にポジションを取る。

サイドからセンターリングの可能性がある状況では、マークを外すために方向を変える。

 センターリングに対して、できるだけ早くボールにアタックする。

 センターリングに対して、シュートをするために最も効果的なスペースにアタックする。

 チームメートがゴールラインまでボールを運んだ場合は、レイオフのパスコースを提供する。

 ファイナルゾーンでは、第1にシュートを選択する。

 相手DFラインの背後にスペースがある状況では深いマーク外しをする(タッチダウンパスはポケットを狙う)。

 センターリングには4人(ニア、真ん中、フォア、レイオフ)がペナルティエリア内に侵入する。

 センターリングができない場合に備えて、同サイドのペナルティエリアのハーフスペースでマーク外しのサポートをし、安全なパスコースを保証する。

 ファイナルゾーンのペナルティエリア手前のハーフスペースにフリーマンを生み出し、そこから相手DFラインを突破する。

 シュートできる可能性があるならシュートする。深く前進することを優先する。

セットオフェンスの選手の基準/キーファクターについては、マンチェスターシティのゲームモデルにおける選手個人の役割の特徴が出ていると思うが、これもポゼッションスタイルのチームの一般的な原則とも言えるだろう。

グアルディオラが思い描く、セットオフェンス時の選手個人のオフェンスラインに参加している選手の役割は、一般的なものであり、彼の仕事はファイナルゾーンまでボールを運ぶことであると言うのもわかるような気がする。

ボール保持者:
シュートできる可能性がある場合は打つ。

 深く/前進することを優先する。

 オフェンスラインでボールを保持できない場合は、ボールを失う可能性があるので、危険回避のパスをする。
ボール保持者と同じラインの選手:
プレーの前進をさせるための、もしくはボールポゼッションをするためのパスコースとオープンスペースを見つける。

ボール保持者の「危険回避のバックパス」は、グアルディオラのチームやバルサ、ボールポゼッションをプレースタイルとするチームにおいて特徴的な原則である。

「ボール保持者と同じラインの選手の役割」についても、ボールポゼッション、ポジショナルプレーをするチームには、非常に重要な原則である。


WG:
ファイナルゾーンでは幅を縮小する(ビエルサラインを尊重する)。

 WGの選手が前進してファイナルゾーンに入った場合、逆サイドのWGの選手もファイナルゾーンに入り、ハーフスペースのラインまで幅を縮小させ、センターリングが上がった場合は、通常フォアポストに入る。

 プレーが中央ゾーンで行われている場合は、相手SBの背後を取る(ポケット方向)。

 深いマーク外しとサポートを交互に行う。

 通常、サイドチェンジをして、優位にある相手DFと1対1の状況では、非常に有利なスペースがあるので、1対1から突破を試みる。

 SBがドブラールをする可能性がある場合は、WGは相手をピンどめ(引きつける)する。

 SBがサイドレーンに開いたポジションを取った場合、WGはハーフスペースまでポジションを閉じ、深い位置を取る。

 オーバーロードの状況を作る場合は、同じゾーンに2人の選手が入る。

 前後のラインに対して斜めにサポートをする。

 ゾーン3ペナルティエリア手前のハーフスペースで相手のMFラインとDFラインのライン間や選手間にポジションを取り、サポートしパスを受ける。

WG選手個人の役割は、L.サネ、R.スターリング、B.シルバの特徴を考慮し活かしたものになっている。監督が理想とするゲームモデルはあるが、選手の特徴を最大限に考慮したものでなければならない。選手がフットボールを実践し、選手が戦術なのだから。

そう言った意味で、グアルディオラのチームのWG個人の役割は、バルサ時代、メッシ、アンリ、ペドロ、ビジャなど、B.ミュンヘン時代、ロッベン、リベリ、ダグラス・コスタなどの特徴を活かしたものになっており、各チーム、各選手によって、役割が異なることだろう。その選手にとって最適な役割でなければゲームモデルは機能しない。


CF:
チームメートにとって有利なスペースを生み出す(例:深いマーク外し、バックドア、3 on line サイの動きなど)。

 MFラインをサポートする(相手DFとMFのライン間にポジションを取る)。

 チームに深さを与える。

 ポストプレーをする。

 フリーマンを生み出すために相手にスクリーンをかける。

 2トップの時は、センターリングが上がる瞬間にクロスをする。

 ボールがサイドにあるときは、2人目のCBの背後にポジションを取り(4バックの場合)、相手CBの背後から深いマーク外しをする。

 パスをした後、アクションを連続する(決してボールも選手も止まらない)。

 侵入したいゾーンは空けておいて、適切な瞬間に現れる。

上記は、CFのS.アグエロ個人の役割だ。2018-19シーズンのCFといえばこの人だった。G.ジェズスと2トップの時は、センターリングへの入り方が2人でクロスすることが度々あった。

4-3-3をベースにゲームモデルを作ったので、今回は、CFであるS.アグエロ個人の役割に限定している。


ファクター:ボールを失った場合の良い準備が攻撃を補償する

定義:
ボールを保持しているチームが、ボールポゼッションを失った場合に実行するチームのアクションである。カウンターアタックを避けるために適切な配置にポジションを取る。

近年は、本当にフットボールの戦術の進歩は凄まじく、セットオフェンス時には、しっかりとボールを失った場合のことも考えて、適切なポジションを取り、守備の準備をしていなければならない。そうしないと、相手チームの強烈なカウンターアタックの餌食になるのだ。

ボールを失った場合のために:チームの一般的な基準/キーファクター

相手のオフェンシブ・ポジションの選手をマークするラインで数的優位(最終ライン)を保つように努める。

 選手が自分のゾーンを空けた場合、他の選手がそのゾーンを埋めるペルムタを実行する。

 前のラインの選手にパスオプション(危険回避のパス)を提供する。

 リバウンドゾーンとファイナルゾーンを適切に埋める。

 チームは常に攻撃が行われている方向に向かわなければならない(アイソレーションの場合は除く)。

最初にセットオフェンス時のDFラインでは数的優位を保つことが最も大事であり、攻撃中も、相手チームで前に残っているオフェンシブ・ポジションの選手をしっかり監視してマークをしなければならない。オフェンシブ・ポジションの選手へのマークが曖昧になると、ボールを失った瞬間、この選手を起点とした、鋭いカウンターアタックを受けることになるからだ。

また、セットオフェンス時の配置バランスも非常に大事であり、だれかが、他のスペースへ移動した場合、そのスペースをすぐに埋める必要がある。

そのようにして、絶え間なく、スペースを空けて、そのスペースを埋めることを、特にセットオフェンス時はしていかないと攻撃も守備も機能しない。


ボールを失った場合のために:選手間の基準/キーファクター

MFラインの選手(攻撃に参加している選手)は、前進を優先しながら、ボールポゼッションを保証する。ボールを失った場合、コーチは何をするのかを決めておかなければならない(守備への切り換えの場面)。

 シュートしたら、予測してセカンドプレーを狙う。

セットオフェンス時、MFラインの選手がボールを失うことは、1試合の中でもかなり多いことだろう。MFラインの選手がボールを失うと非常に危険な状況になり、相手にカウンターアタックをされる可能性が高まる。

このような状況は、監督はイメージできるはずなので、ボールを失った場合に、何をしなければならないかを決めておく必要がある。

ボールを失った場所から即時の「カウンタープレッシング」をするのか、それとも、ボールに近い3、4人の選手はプレッシングをして、残りの選手、DFラインの選手は守備ラインを整え後退する「プレッシングと後退」するのか、それとも、ボールを失ったら、全員、ハーフラインより後ろに「後退」し、守備ブロックを作ってから守備を開始するなどをチームで決めておかなければならない。


ボールを失った場合のために:選手の基準/キーファクター

オフェンスラインに参加している選手:
プレーに参加するために、素早くボールを受けることができるポジションに戻る(相手DFラインの背後に出た後など)。

 シュートのリバウンドを予測する。

 プレーを前進させる、もしくはポゼッションを維持するためのパスコースを作ること、空いているスペースを見つける。

フットボールは動きを連続させなければならない。そうしないと現代のスピードのある、めまぐるしく変わるのプレー状況の中ではプレーできないことだろう。

例えば、相手の背後のスペースへ走ったけど、パスが来なかった。このような場合は、すぐに次のプレーに移り、ボールが受けられる新たなスペースに動き、パスコースを作らなければならない。


ボール保持者:
同じラインでボールポゼッションできなく、ボールを失う危険性がある場合は、危険回避のパス(バックパス)をする。 
CB:
チームの攻撃中、相手のオフェンシブ・ポジションの選手をマーク。   
SB:
攻撃に参加しないSBは、ハーフスペースにポジションを取り、相手のカウンターアタックを避け、危険回避のパスコースを提供する。
ピボーテ:
ファイナルゾーンの攻撃配置のラインバランスとライン間バランスを維持する。
WG:
前進するためのスペースが閉じていている場合は、ボールポゼッションを保証する(危険回避のパス)。
OMF:
グラウンド内側のプレーにおいて、スペースのバランスを取る。

 相手チームのプレッシャーが激しい場合は、危険回避のサポートをする。

前進することができない場合、有用なスペースに向かってプレーを方向づける(サイド方向)。
CF:
ボール保持者に短い距離のサポートを提供する。

 シュートのリバウンドを予測する。

ボールを失った場合の選手個人の役割は多くない。しかし、選手個人の役割を、集中力を維持して実行しなければならない。

例えば、1人の選手が、1秒、ポジションに戻るのが遅れたり、ミスをするだけで、失点するのが世界トップレベルの戦いだ。

選手は攻守においてマシーンのように動き、その中で自分の特徴を発揮しなければならない。

そのようなレベルにあるのが、現代のフットボールだ。

きっと、現代のフットボール選手は試合をすると体も疲れるだろうが、精神、頭の中の疲労も凄いことだろう。

試合を見ている方も、ただ、ぼーっと試合を観戦しているのが悪く思える。

ここまで、長くなりましたが、マンチェスターシティの「セットオフェンス」について書きました。基準/キーファクターがどのチームにも当てはまるものが多いという印象もありますが、グアルディオラのチームのポジショナルプレーの特徴も存分に出ていると思います。


次回は、マンチェスターシティの守備から攻撃への切り換え「カウンターアタック」と「攻撃の再構築」について書きます。


【特典】「マンチェスターシティのセットオフェンス動画」を希望者にプレゼントします。動画希望者は、下記のメールアドレスに「マンチェスターシティのセットオフェンス動画希望」と書いてメールをください。

時間がかかると思いますが、送信します。

sakamotokei68@gmail.com





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スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得。2016-2017シーズン CF Badalona (2部B)で試合分析を担当。FC バルセロナアカデミー品川大井町校でコーディネーター兼コーチ2019 4月-12月。フットボリスタ・ラボ。