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マエストロ・セイルーロの論文を読む! 「構造化トレーニング」6:〜個人スポーツとチームスポーツ〜

前回は21世紀のチームスポーツにおけるダイナミック(動的)・システムの「新しいパラダイム」、パラダイムシフトについて説明しました。

今回も引き続き、マエストロ・セイルーロが2002年に発表した論文についての翻訳です。

今回は更に深く「構造化トレーニング」について説明しています。

ペップ・グアルディオラやバルサが、どのようにフットボールを捉え、トレーニングを行っているのか、その根本の構造を知る手掛かりとなれば幸いです。

また、セイルーロの論文は非常に難解であり翻訳の難易度も最高レベルです。この章の最後に「論文のポイント」解説がありますので、そちらもご覧ください。

※ 尚、この論文の翻訳は、私自身の解釈なので、その辺りはご了承願います。

前回の論文

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個人スポーツとチームスポーツ


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新しいパラダイムはこのラインを放棄しません。とりわけ、合理的から直感的、分析的から総合的、還元主義的から全体論的(できるだけ広く)、線形から非線形のトレーニングへ、定量的から定性的へと、前のラインとは反対の第2のラインへと移行しなければなりません。

したがって、これらの前提の下に、(図の)左のラインは個人スポーツの主要な傾向であり、右のラインはチームスポーツの主要な傾向であると理解しています。

新しいパラダイムにとって重要なことは、アスリートは人間として何であるか、そのアスリートについて私たちが持つことができるコンセプトは何かに焦点を当てることです。重要なことは、スポーツ活動を実践する個人です。

システム理論の構造のコンセプトは、人間が何であるかを理解するために、異なるレベルの構造の複雑性を導入します。これは常に、コンディション構造、コーディネーション構造、社会的感情構造等の間の相互作用とフィードバックで構成されています。

これらの各構造は、人間を構成する様々なシステム間の相互作用のプロセスの形の現れであると考えなければなりません。



アスリートはこれらの理論に基づく


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・ 各構造は、基礎となるプロセスの現れであると考える。
・ つまり、プロセスは、システム間の動的な関係のネットワーク
全体
であり、私たちが構造と呼んでいるものを通して現れる。 
・ そして、私たちが伝統的に能力と呼んでいるものは、特定の構造
を構成するいくつかのシステムから発生するプロセスの一部の分野別評価の形にすぎない。

そして、私たちが伝統的に能力と呼んでいるものは、特定の構造を構成するいくつかのシステムから発生するプロセスの一部の分野別評価の形にすぎません。

例えば、VO2 MAX テスト(最大酸素摂取量テスト)をする場合。有酸素能力を測定するために、私たちが実際に行うことは、2つまたは3つの構造、もしくは特定の構造のシステムの相互作用における様々なプロセスに関係するプロセスの一部の非常に分野別的で非常に分析的な評価の小さな形式にすぎません。

この理解により、私たちは人間を観察し、各項目に明確な本当の価値を与えることができます。それは個人の進歩が現実的により重要であると考えるからです。そして、実は、アスリートの進歩は全ての構造のバランスが取れた場合にのみ得られます。

このように人間を解釈することで、生物の優れた特性の一つである、 システム内にシステムの多様なレベルの構造を構築することが理解できます。

例えば、コンディション構造には特定のレベルがあり、認知構造と比較して、相互作用のレベルが異なります。その生きている個人が、 これら2つの構造間の相互作用のプロセスを関連づけ、生成できる状況に応じて、システム間の相互作用が「最も重要なことは何もない」となるようにします。



構造化トレーニング


1. このように人間の生命の優れた特性の一つである、システム内にシステムの多様なレベルの構造を構築する傾向は、複雑性の高いネットワークの形式であるため、人間を解釈できるかも知れない「最も重要なこと」は何もありません。

※ 全てが重要であるため、優先順位付けされただけの非階層的トレーニングの必要性を引き起こし、相乗効果のあるプロセスは、負荷の発展性やシーケンシャルプログラミング(手続き型プログラミング)などの重要なシステム間の関係と同じくらい重要です。

この新しい問題提起は、通常のアスリートを観察する方法を排除します。たとえば、「今日あなたがしなければならない最も重要なことは、(跳躍の前の)踏切りをする瞬間、足が支える...」。それは最も重要ではありません。より重要なことは何もありません。それは私たちが使用するトレーニングシステムで発生します。跳躍の踏切りをする時のアスリートが足を支えるフォームと関係する構造を構成するシステム間で、個人が関係し、関係を始める状況を作り上げることができます。そして全てが重要です。

最初に戻ります。アスリートについて聞くのが一般的ですね。「このトレーニングを吸収(同化)しなければならない」「もちろん、吸収(同化)の質的な飛躍を獲得するまで、パフォーマンスを向上させることはできません。」

吸収(同化)の質的な飛躍とは何でしょうか?

ある程度の期間、マルチレベル構造のネットワークを構成する各構造のシステムの相互作用プロセスが確立された時、私たちがこれらの特性を刺激することができるトレーニングの状況を与えると、それらは互いに関連します。

そして、これが構造化トレーニングです。

このような方法で人間を理解することで、人間を構成する様々なシステムのマルチレベルの構造間で、これらの相互作用を生み出す新しい要素とトレーニングの状況を構築することができます。

と同時に、多くの状況が正当化されてきました。それは伝統的な教授法のトレーニングに現れた教義のようなものでした。


論文のポイント:個人スポーツとチームスポーツ

セイルーロが提案する新しいパラダイムは、「構造化トレーニング」を開発するための土台として、個人スポーツとチームスポーツとでは、トレーニング方法に大きな傾向の違いがあると言っています。とりわけ、合理的から直感的、分析的から総合的、還元主義的から全体論的(できるだけ広く)、線形から非線形のトレーニングへ、定量的から定性的へと、チームスポーツでは、前のライン(個人スポーツのトレーニング)とは反対の第2のラインへとトレーニング方法を移行しなければなりません。

新しいパラダイムにとって重要なことは、人間としてのアスリートは何か、次にアスリートをダイナミック(動的)・システムとして考えた場合、システム理論のコンセプトは何かについて焦点を当てることです。

システム理論の構造のコンセプトは、人間が何であるかを理解するために異なるレベルの8つの構造を導入します。

セイルーロが、ここで紹介している論文「チームスポーツにおけるダイナミック・システムとパフォーマンス」では7つの構造しか提案していませんが、最終的にスポーツを活動する人間には8つの構造が存在すると他の論文で提案しています。

コンディション構造、
コーディネーション構造
社会的感情構造
感情−意志構造
創造的−表現構造
メンタル構造
認知構造
生物的エネルギー構造

上記8つの構造は、人間を構成する様々なシステム間の動的な関係のネットワーク全体であり、その構造が相互作用のプロセスの形の現れ、構造間の相互作用とフィードバックで構成されています。

伝統的に能力と呼んでいるものは、特定の2つ3つの構造を構成するいくつかのシステムから発生するプロセスの一部の分野別評価の形にすぎません。

ここでセイルーロは伝統的な古いパラダイムの視点によるアスリートの評価から、新しいパラダイムの視点でアスリートを評価することにについて説明しています。

分析的、分野別的などの還元主義的な視点で能力を評価するのではなく、全体論的視点でアスリートを評価することの重要さを説明しています。

トレーニングにおいては、マルチレベル構造(8つの構造)のネットワークを構成する各構造のシステムの相互作用プロセスが確立された時、私たちがこれらの特性を刺激することができるトレーニングの状況を与えると、それらは互いに関連します。

つまり、そのスポーツ特有のプレー状況を設定した非線形のトレーニングをすることで構造間が互いに関連するのです。

そして、アスリートの進歩は全ての構造のバランスが取れた場合にのみ得られます。

ある程度の期間、マルチレベル構造のネットワークを構成する各構造のシステムの相互作用プロセスが確立された時、私たちがこれらの特性を刺激することができるトレーニングの状況を与えると、それらは互いに関連します。

これが構造化トレーニングです。

このような方法で人間を理解することで、人間を構成する様々なシステムのマルチレベルの構造間で、これらの相互作用を生み出す新しい要素とトレーニングの状況を構築することができます。


次回も、更に深く「構造化トレーニング」とは何か、ついて説明していきます。

参考文献
Seirul-lo, F. La preparación física en deportes de equipo -Entrenamiento Estructurado-. Valencia Junio 2002.










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