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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化(プロローグ)


プロローグ


フットボールはジャズである

ある日、音楽に詳しい妻に尋ねた「ジャズは即興演奏するんだよね。ジャズ・ミュージシャンはコード進行を覚えてるの?」

「そう、ジャズ・ミュージシャンは全てのコード進行を覚えて即興演奏するの。無からは何も生まれないよ。」
この瞬間、フットボールの攻撃戦術もジャズと一緒ではないかと閃いた。ジャズのコード進行について調べて見た。


コード進行とは和音のことである。
3和音と4和音を混ぜ合わせると全部で432個になる。
「金子将昭の音楽もやコラム」より
http://circle.musictheory.jp/?p=3505

フットボールはジャズのように即興性のあるスポーツである。
ジャズも基本的なメロディはあるが、基本のコード進行を覚えてコンサートで即興演奏をする。ということは攻撃のコード進行(攻撃の選択肢)を覚えて、チームとしてハーモニーのあるプレーをしなければならない。

フットボールの攻撃のコード進行は何種類あるのだろうか?


攻撃戦術だけで何種類、何十種類、いや何百種類のパターンが存在するはずだ。きっとFCバルセロナやレアル・マドリー等のビッグクラブは数多くの攻撃戦術を持っていると思う。その幾多もある攻撃戦術の中から、相手チームの守備の方法や天気、ピッチ状況、スタジアムの雰囲気等、その日プレーをするチームの選手が瞬時に攻撃方法を選択し実行していると考える。


そのように考えていくと、幼少の頃から、発育発達段階に応じてではあるが、攻撃戦術の練習、即ち、「フットボールのコード進行を覚える練習」が必要なのではないだろうか。


即興性と言うものは、無からは生まれないと考える。無から生まれているように見えても、何かしらの影響を受けていると思う。例えば、テレビで昨日、メッシが凄いゴールを決めたのを見たので、そのプレーをイメージしてシュートをしたら決まった。そのような個人の即興性は生まれることはあるだろうが、チームプレーとしての即興性はチームの練習でチームメートと何回も練習することで獲得する必要があるのではないだろうか。


試合で監督に考えてプレーをしろと言われても、何をどのようにプレーをしたらいいかわからない選手も多いのではないだろうか。選手は試合中、本当に考えてプレーをしているのだろうか。


幾つかの選択肢を練習し、試合でその中から使えそうなプレーを選択していく。当然、練習したパターンと全く同じようにはならない。それでも、チームとしての攻撃パターンが多ければ多い程、選択肢も増える。その中から思いも寄らない即興性のあるプレーが生まれることもあることだろう。それが創造性のあるプレーかもしれない。


よく日本で、小さい頃から戦術練習をすると思考の柔軟性を失って、選手として伸びないのではないか、システマティック過ぎる、選手の創造性を奪っている等の意見を聞いたことがある。


日本で指導をしていた時は、小さい頃からの戦術練習をすると選手として伸びないのだろうかという疑問が少なからずあった。と同時に、それではいつから戦術練習を始めたらよいのだろうかという疑問もさらに高まっていた。


スペインに来て、色々なクラブの練習や試合に関わり考えたことは、こちらはいかに、戦術で相手を上回るか、相手チームの弱点を見抜き、そこを執拗に攻撃していく。相手チームもその弱点を攻撃されると見るや、監督がすぐにシステムを変えたり、戦術を変えたり、選手を変えたりして、なんとかチームを勝たせよう、有利な方へ持っていこうとする。


スペインでは幼少のころから、このような戦術コードを少しずつ学んでいき、18歳になる頃には膨大な量の戦術コードを身につけていると思う。


現在のフットボールはボール扱いが上手い、個人技術が高いということだけでは勝てないことが、2014年のブラジルワールドカップでのブラジル対ドイツ戦(1対7でドイツ勝利)で明らかになったと思う。ボール扱いだけなら、ドイツ代表の選手は誰1人として、ブラジル代表の選手より上手い選手はいないであろう。


思うにフットボールはバスケットやフットサル、ハンドボール競技のようなハイレベルな攻撃、守備の戦術がこれからもっともっと必要になってくる。


「個」の育成も大事ではあるが、それ以上にチームとしての攻撃と守備の戦術コード、「フットボールコード」を子供の頃から、発育発達段階に応じて学んでいくべきではないだろうか。そうでなければ、日本がワールドカップに優勝する、世界の強豪国になることは難しくなるのではないかと思う。


フットボールのコード進行を覚えるということは、「フットボールの本質を深く理解する」ことにつながるはずだ。


トライアングル・オフェンスとの出会い

90年代にマイケル・ジョーダンがプレーをしていたNBAのチームであるシカゴ・ブルズの試合をよくBS放送で観ていた。解説者が私にとっては難しい言葉を使って試合を解説するのだが、「トライアングル・オフェンス」という言葉を何回も聞いて、それが頭の中に残った。
その当時、理解できたことは、シカゴ・ブルズが「トライアングル・オフェンス」を使っていること、監督がフィル・ジャクソンであることだけだった。試合を見ても一向に「トライアングル・オフェンス」の意味することがなんであるかはわからなかった。ただ一つ、フットボールの攻撃は選手同士がトライアングルにポジションを取ることが大事であると、セリエAの試合をテレビ観戦することで学んでいたので、「トライアングル・オフェンス」と何か関係があるのではないかと考え始めた。


21世紀に入り、本屋で「バスケットボール:トライアングル・オフェンス」という本を見つけた。著者はテックス・ウインター、シカゴ・ブルズやロスアンゼルス・レイカーズでコーチとしてフィル・ジャクソン監督と共に働いていた。彼が「トライアングル・オフェンス」の考案者だったのだ。すぐにその本を買って、家に帰って読んだが、さっぱり内容が掴めなかった。 同じ箇所を何回も何十回も読み返したが、内容を理解することができなかった。ただ、このオフェンス方法をフットボールに導入することができるのではないかという根拠はトライアングルという共通項だけだった。


何度か、高校の体育教員として働いていた時に、サッカー部の顧問をしていたので、「トライアングル・オフェンス」の基本的な攻撃パターンを練習してみた。選手はキョトンとして、「これ、あり得なくないですか?」とか、その当時のキャプテンからは「先生、攻撃のオプションは3つあれば十分です」という発言から「トライアングル・オフェンス」のフットボールへの導入を断念した。まあ、私が理解していない攻撃方法を選手が理解できるわけがなかったのだ。


ダイヤモンドの発見

2012年の4月に妻と一緒にスペインのバルセロナに住み始めた。3月末で2人とも仕事を退職したのだ。2012年4月から語学学校に通いスペイン語を学び始め、2013年の9月からスペインサッカーコーチングコース・レベル1の受講を開始した。


集団プレー(Juego colectivo)の授業で、攻撃のライン間のバランスを整える方法の一つに、菱形に選手同士がポジションを取るというのがあった。スペイン語でRombo(菱形)というのだが、Romboに選手同士がポジションを取ることで、3つのライン間のバランスを取ることができる。例えば、DFラインとMFラインとFWラインというように。


そのときは、菱形がスペイン語でRomboということを知らなかったので、攻撃時に選手がダイヤモンドにポジションを取ったら、選手のライン間のバランスも保たれ、パスコースも3つできるので、このアイディアは自分のものとして発展させていこうという考えが頭を過ぎった。これが、ダイヤモンド・オフェンスの始まりである。
(プロローグは全て加筆である)

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スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得。2016-2017シーズン CF Badalona (2部B)で試合分析を担当。FC バルセロナアカデミー品川大井町校でコーディネーター兼コーチ2019 4月-12月。フットボリスタ・ラボ。

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス
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スペインサッカーコーチングコース・レベル3(S級相当)の卒業論文として書いたものを日本語に訳し、加筆したものである。ダイヤモンド・オフェンスはファイナルゾーンを攻略する攻撃方法論であり、ポジショナルプレーの方法論の一つであると考える。相手のプレーを読み、相手ディフェンスのリアクションから即興プレーを創造していく。

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