マエストロ・セイルーロの論文を読む! 「構造化トレーニング」4:〜古典的なパラダイム〜
プロローグ
「フランシスコ・セイルーロ!?」
「誰だ!それは?」
「FCバルセロナのトップチームのフィジカルコーチなんだ。」
「グアルディオラと一緒に働いている!」
と言うのが、私が4年間通ったスペインサッカーコーチングコース学校、通称CARの先生の1人であり、CARで唯一フランシスコ・セイルーロの理論を教えることができ、私がCARで最も尊敬するダビ先生が、トレーニング論の授業で、最初に私たち生徒に教えてくれたことだった。
その日から、フランシスコ・セイルーロに非常に強い興味を持ち、彼の革命的なトレーニング理論を、ダビ先生の授業で、学び、理解し、知っていくうちに心酔していった。
フランシスコ・セイルーロのトレーニング理論は、スペイン人にとっても難解である。
ダビ先生がカフェテラスで、他の先生に:
「セイルーロのトレーニング理論を実践して見ないか?」と質問しても、
「いえいえ、私には難しすぎる」と言って断り、逃げ出す先生を実際見てきた。
もし、バルサのカンテラのコーチになりたければ、フランシスコ・セイルーロのトレーニング理論を学ばなければならない。なぜなら、FCバルセロナのトレーニングメソッドは、セイルーロのトレーニング理論をベースにしているからだ。
当然、ペップ・グアルディオラもフランシスコ・セイルーロの生徒である。
現在のフランシスコ・セイルーロは、クライフに1994年に見出され、トップチームのフィジカルコーチに就任してから、バルサで25年間勤めたフィジカルコーチを退任して、バルサの全てのスポーツ部門のメソッド部門ディレクターに就任している(現在は、2019年からバルサのフットボールの育成年代のメソッド部門ディレクターに就任している)。
その難解で、多くのスペイン人コーチにとっても手をつけることを拒ませるトレーニング理論を、彼の論文を翻訳することで、紹介したいと思う。
この構想は、数年前からあったのだが、フランシスコ・セイルーロの論文を読んで理解することは最難関であり、スペイン語は当然、専門用語ばかり、スペイン人が読んでも難解なこの論文を、日本人で、しかも、少しスペイン語を学んだ私が翻訳するのである。
翻訳には、非常に長い年月を要している。これから少しづつ、膨大な数ある論文の中から、主要なフランシスコ・セイルーロの論文を翻訳していく。できれば彼の「チームスポーツのためのトレーニング理論」を理解し、実践できるようなところまで翻訳していきたいと思う。
もしかすると、10年以上かかることもあり得る。
フットボールをはじめとするチームスポーツと、陸上競技などの個人スポーツのトレーニング理論や方法が同じで良いのだろうか?
と言うような疑問を持ちながら読んで欲しい。
※ 尚、この論文の翻訳は、私自身の解釈なので、その辺りはご了承願います。
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チームスポーツのフィジカルトレーニング
構造化トレーニング(Entrenamiento Estructurado):
Valencia Junio 2002
F. Seirul-lo
チームスポーツのための適切なトレーニングプロセスを作成するには、スポーツパフォーマンスの異なるパラダイムを定義することが重要です。 伝統的に、スポーツトレーニング科学は、いくつかの個人スポーツのニーズを研究することによって発展し、その結果がチームスポーツに適用されてきました。
複雑なダイナミック(動的)・システム理論の分析は、チームスポーツのための特定のトレーニング科学を構築するための最良の理論的基礎を提供すると強く信じています。
従って、複雑性を説明するためのより適切な解決策を提供するためには、系統的デカルトパラダイム(機械論や還元主義)を修正することが必要です。
私たちが今日、実行しようとしているのは、バルセロナスポーツ大学(Instituto Nacional de Educación Física de Barcelona通称INEF)の教授グループが9年間、個人スポーツとは異なる、新しいテーマである「チームスポーツのための特有のトレーニング」を教えて発展させてきた20年の実践と理論的サンプルの提案です。
私は幸運でした。なぜならバルセロナスポーツ大学(INEF)の教授グループが理論の構築に参加して、私に協力し助けてくれたからです。
一方、私は長きにわたり、ビッグクラブであるFCバルセロナの財産のおかげで、これらの理論を実践し発展させることができたことをクラブに感謝しています。
最初はハンドボール、その後、フットボールの育成年代(カンテラ)とトップチームにおいてフィジカルコーチをしてきました。そして、私は今、これらの提案の基礎をチームスポーツのフィジカルトレーニングとして説明することができます。これは、伝統的なフィジカル、テクニック、戦術、心理学(メンタル)のトレーニングを特別な方法で関連づけます。これら全てを構成する新しい形を「構造化トレーニング(Entrenamiento Estructurado)」と名付けます。
実際に「構造化トレーニング」のベースの部分が、より伝統的なチームスポーツのためのフィジカルトレーニングのコンセプトに近いかどうかを見ていきましょう。20世紀のスポーツがどのようなものであったのかという簡単な説明から始めます。
かつてのスポーツには、教育としてのスポーツ実践と、体を鍛えるトレーニングとしてのスポーツの考えがありました。そして、このスポーツの発展は、20世紀を通じて人類哲学の分野において支配的だった2つの大きな基礎や知識の柱に基づいています。一つは教育と関係している「行動主義理論」に基づくプロセスです。行動の観察から、この分析を通じて知識を抽出するために評価し分析するのです。
一方で、基本的に「機械論」を通じて開発されたトレーニングの効果があります。
さらに、一連の科学はスポーツ・プロセスの知識の発展を根本的に支えてきました。いくつかは、教育学、心理学などの行動主義理論や、バイオメカニクス、物理学などの力学理論に役立ってきました。
さらに、彼ら自身の視点から、部分的な知識の手段に影響を与える非常に細分化されたモデルを開発してきました。そして、細分化されたモデルの分野間の関係はほとんどありません。
結果としてこの状況をもたらしたのは何でしょうか?
スポーツのモデルは非常に細分化され、複数の学問領域にわたっています。
そして、ビッグクラブでは個人のためのビッグチームが計画され、それぞれが所属する分野に応じて、心理的、教授法的、教育的、身体的等、 クラブ、もしくはスポーツのプロフェッショナルグループが構成する、そのスポーツ特有の側面を発展させてきました。
そして、私たちが大変進歩してきたように見えることは、ローマやギリシャ時代の、古代初の科学の学生たちがしたことに他なりませんでした。私は、身体と考え(知能)の間、アイディアと物質の間の二分法を研究しました。疑いなく、もう少し洗練されてはいますが、20世紀のスポーツの進歩の明確な基礎は古代ローマ、ギリシャ時代の科学の学生たちが実践したことに他なりません。
方法論的に、何が起こったのか?
まあ、いくつかの科学と他の科学が連合して、細分化モデルなどの、いくつかのタイプの実践的モデルを開発しました。一方で、定期的に教えるため、トレーニングするためのグローバルトレンドを実践することはありますが、根本的にグローバルトレンドの教授法は、モデルを開発するためにあります。
テクニックトレーニング、戦術トレーニングを構成するグローバルトレンドは特定の分野を練習し習得することを実現します。
そして、パフォーマンスにおいても、通常、フィジカルトレーニング、テクニック、戦術、コンディションは分析的な傾向が現れます。そのモデルの構築に学問分野が関与できるようにモデルを細分化したのです。
90年代には、INEFバルセロナ(スポーツ大学)でも、フィジカルトレーニング、テクニックと戦術(グローバル)の2つの傾向(トレンド)を関連づけようとグローバルな視点から、「インテレラショナードトレーニング」のコンセプトを開発しました。常にこれら2つの傾向(トレンド)とそれらの基本の上に練習をグローバル化するための最初のオプションを構築しました。
古典的なパラダイム
この古典的なパラダイムは80年代から、非常に疑問視されており、90年代の終わりにF.Capraは次のように述べています:
要するに、スポーツと、どの要素の何が関係しているのか?
これらの価値観は、例えば、私たちは経済的成長と技術的成長を通してしか発展はできないという考え方です。
疑いもなく、その価値観は確かに減少傾向にあることでしょう。
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論文のポイント:古典的なパラダイム
次回、この続きは、マエストロ・セイルーロが提案する「新しいパラダイム」について投稿します。
参考文献
Seirul-lo, F. La preparación física en deportes de equipo -Entrenamiento Estructurado-. Valencia Junio 2002.