伊達政宗㊱

「六右衛門を呼べ」

江戸屋敷に戻った政宗は、近習に命じた。

やがて1人の男が、政宗のいる表書院に現れた。

「お呼びでござりますか」

男は平伏した。支倉六右衛門常長である。

「うむ、六右衛門、かの者はいかがしておるか」

政宗は六右衛門に尋ねた。

「かの者と申しますと、あの五島の?」六右衛門が利き返した。

「そうじゃ、その五島じゃ」

その五島なる者は、元は岩淵又五郎といった。

生まれは陸奥国磐井郡藤沢、旧葛西家の家臣の家に生まれた。現在は伊達家の領内になる。

しかし、秀吉によって葛西家は改易となり、岩淵は浪人となった。

浪人として流れ流れて、慶長元年(1596年)、長崎にたどり着いて、この地でキリシタンとなった。

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