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サカキシンイチロウのおいしい手帖

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おいしいお店。おいしい料理。 愛着があってずっとこのままでいてほしいなぁ…、と心から思える宝物みたいなお店や料理を紹介します。
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#とんかつ

まもなく100年。昔ながらのあたらしい味

長い間、王ろじに来てないなぁ…、と思って王ろじ。 創業大正10年。1921年のコト。 路地の王様になろうと努力を重ねて100年間。たまたま選んだ路地が伊勢丹という東京にもいくつしかない巨大な重力をもった集客装置の近くの路地だった。 諸説あるけれど、日本のとんかつの発祥の地ともされる店でもあって、そう思うと看板に書かれた「昔ながらのあたらしい味」というキャッチフレーズも重さを感じる。 ただ一瞬、あたらしいと言われる何かを考えることは簡単だけど、「あり続ける」ことは大変。い

町と生きる店、扉の向こうに見える景色

家の近所の「鈴新」で昼。地域愛にあふれる小さなとんかつ店。 数年前まで厨房の中で腕をふるっていたご主人は、息子さんにその座を譲ってカウンターの外でサービスに専念されてる。 換気をよく…、というコトでしょう。今日は出入り口の横で扉の開き具合を加減しながら表をみてる。お客様が近づいてくるとサッと入り口を開けてくれ、まるで「人動力の自動ドア」のよう。 今日みたいな日に営業するのは気がひける。けれど毎週土曜日はラードを仕込む日。昼だけ営業をやらせてもらっているんですよ…、と気さく

おそらく一番好きなヒレカツ

秋葉原まで来るようがあり、せっかくだから旨いとんかつを食べておこう。 電気街のはずれに位置する「丸五」に向かう。 時間は開店の15分ほど前で、すでに小さな行列。 20人ほど並んでましたか。40席弱ある店だからオープンと同時に入れるなぁ…、と思ってのんびり待った。 次々、お客様がやってきてボクの後ろにまた行列。昔から人気の店ではあったのだけど、ミシュランガイドに出たってことで海外からの観光客もやってくる人気加熱気味状態。 あと5分ほどで開店というタイミングで暖簾がでて、先頭の

受け皿ごと持ち上がる器で食べる王ろじのとん丼

ひさしぶりの「王ろじ」。新宿三丁目の伊勢丹本店の近くにあって、時代に合わせて移ろい変わる伊勢丹の重力に取り込まれることなくずっと変わらずあるお店。 変わったのは先代が亡くなって、おそらくボクと同年代のご主人が継いで奥さんと頑張っている…、というところだけ。 創業大正10年。 昔ながらのあたらしい味と看板に誇らしげに書いてあり、品揃えも昔のままです。 世の中、大きなものに振り回されて我をなくしてしまう小さきモノが多い中、大きなものを乗りこなし変わらずにすむ道を選べる小さきモノ

横浜の勝烈庵。ヒレ推しの店のヒレのおいしさ…。

横浜で野暮用。これ幸いと昼食を「勝烈庵」にやってくる。 葉山住まい日吉通学の時代、横浜はとても身近な遊び場でちょっと大人な気分でおいしいものを食べたいときに来ていたお店。 四国にいた頃はとんかつを専門店で食べるという習慣がなく、だから今思い返せばとんかつ屋で食べたとんかつの始まりはこの店だった。 当時はダイアモンド地下街っていう田舎者にはビックリするほど大きく立派な地下街のはずれの小さな店で、職人さんを間近に感じながら食べるとんかつは格別だった。 のちに馬車道にある本店の格調