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【第三十四話】ついに本番前日、大阪へ移動もひと苦労|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

本番まであと数日、2021年8月のある日。

「ねえ、こんな状況下で本当に大阪行くの?
県をまたぐ移動だよ?世の中どういうことになってるかわかってる?
デルタ株なめてるでしょ?」

と家人エス氏に詰め寄られる私。

(私は在東京、国立文楽劇場は大阪の日本橋にある)

出演辞退してもビタ一文返ってこないと告げると、

「それなら行ったら?でも俺は見に行かないよ。そもそも喪中だし。」

エス氏、さすが商売人の息子である。費用対効果の話は早い。

ちなみにお稽古事の費用はすべて私の稼ぎでまかなっている。
家賃水道光熱費は折半、食費の負担は都度適当である。


さて前日。

移動しなければならない。

「新幹線2時間半座りっぱなしはしんどいから、おっしょはんみたいに飛行機で行こうかな」

おっしょはんは飛行機移動が大好きなのである。

「空路はだめ。四十九日まだだから親父に呼ばれる」

エス氏、さすが商売人の息子である。信心深い。
(お父さん、まだ空にただよってウロウロしているらしい。)

幸い、東海道新幹線EX予約のグリーンプログラム特典が新大阪片道分貯まっていた。

通常指定料金でグリーン車。密集・密接を避け、いざ行かん大阪へ!

(換気もしているだろうから密閉も避けられたはず)


あ、あれがない!

大阪日本橋、文楽劇場近くの定宿に無事到着し、
荷解きをしていた私はビミョーな忘れ物に気がついた。

ipadを充電するときに、コンセントに挿す白い立方体のあれ。

出がけにケーブルだけ引っこ抜いて持ってきたものの、
ああ、このipadはUSBType-C(薄べったい楕円形の口)なのかー。

Type-A(長方形)は部屋に充電の口があるから、
ケーブルだけ持ってくればいいと思ってた・・・

モノがひとつ増えると、メンドウもひとつ増える。

まあ、iphoneさえ生きていれば、最悪ipadは充電切れても問題ないか。

でも ” あるのに使えない ” ってちょっといやだなー。

普段は気にならないことが妙に気になり、グジョグジョこだわってしまう。

いつもとちょっと調子が違う、本番前日。

・・・(シンキング&検索タイム)・・・

おお!なんとビックカメラなんば店が徒歩圏にあるではないか。
いやー、大阪にっぽんばしは都会だなー。ありがたいなー。
立方体のあれ買ってこよう♪

歩くこと数分。

わ、ここか!デカいなー

(わたくし、立派なおのぼりさんである)

お、1Fはドラッグストア的な品揃えではないか。

めぐりズムのほっとアイマスクがある!

移動中にスマホを見過ぎたのか、目の奥がしんどくて困ってたんだよね~
買っとこ。

広く明るい店内でゆったりお買い物、本番前日のおかしなテンションも少しまぎれる。

お目当てのUSB-CケーブルとOAタップの間の立方体のアレ(正式名称がわからん)も無事ゲット。

はー、やれやれと宿への帰路でふと、

「ほっとアイマスクなら宿の直近、黒門市場のデカいマツキヨでも買えたのではないか?しかも安く。」

と思い、寄ってみたところ・・・

がっつり閉まっている。

そういえばビックカメラもガラすきであった。
インバウンド需要壊滅だからか・・・

おのれ新型コロナめ。


さて、お買いものも済んだし、晩ごはんだ!
大阪は食い倒れの街、何を食べようかなー

しかし緊急事態宣言下、飲食店での飲み食いははばかられる・・・
まさかここへ来てコンビニ飯?!

残りの人生、あと何回ごはんが食べられるのか?と思うと、
一食たりとも外したくないのじゃー!
いやまあコンビニのもん、おいしいけどさ、
旅先ではいつもと違うもん食べたいやーん!(わたくし、こころの叫び)

ふらふらと逍遥していると、よさげな焼き鳥屋さんが。

ああ、こんなお店でビールをぐびり、焼き鳥をモシャリ、といきたいもんだなぁ・・・

って、お、お、” お弁当テイクアウト ” って書いてあるやーん?!

「すいませーん、焼き鳥弁当ひとつお願いしまーす!え、今から焼くから15分くらいかかるって?その頃また来るから!ね、お代払っとくから!あー、助かった~」

コンビニで飲み物やちょっとしたオヤツなど調達した後お店に戻ると、
ホカホカと温かく、いいにおいのする包みを渡された。

いそいそと宿に戻り、ガサガサと包みを開ける。

ビールはノンアルコールでがまんだ!(号泣)

じゃーん!お、お、おいしそーう!
いっただっきまーす!

おいひい!(もぐもぐ、ごくり)

おいしいけど・・・
やっぱお店で、エス氏か姉弟子さん達とわあわあ食べたかったなぁ。

おのれ新型コロナめ。

(続く)

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