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2022年12月園だより

「本当の気持ちはどこにある?」

家での兄弟喧嘩はもちろん、園でも園児同士の喧嘩やいざこざをよく見ます。たくさん喧嘩してるのに、さらっと仲直りして子どもってすごいなという俯瞰したような見方もあるのですが、喧嘩やいざこざをじっくり観察すると、本当にいろんなことが見えてくる気がします。

物の取り合いをしているAくんとBちゃん。「かして」「いやだ」「かして」「ぎゃ〜!!!」この後叩き合いに発展、などなど、まぁよくあること。その時、あなたが近くにいたらどうしますか?
子どもの心を代弁するということもあるだろうし、無理やり引き裂いて物を取り上げるということもあるかもしれない。ついつい感情移入してしまい、やられている方の弁護に入ったり、なんとなく取り計らうということもあったりします。あらためて振り返ってみてください。あなたが子どもだったら、どういう対応をしてほしいな(してほしくないな)と思っていますか?

まだ十分に思いを言語化することができない子どもの場合、非言語的な要素を含め、そこで起きた子どもの表現を「どう見るか」ということは特に重要です。ポイントは、目の前の子どもはあなた自身ではない、ということ。子どもが泣いていたとして、悲しそうに見えたり、悔しそうに見えたりしても、本当に悲しくて、悔しいのかは誰にもわかりません。それを「悲しいね」「悔しかったね」「つらいね」など気持ちを置き換えてしまうと、そうじゃない気持ちもそうなんだなと捉えてしまうことになったり、周囲で聞いている子どもたちも、渦中の子の気持ちを決めつけて捉えることになってしまいます。さらに「悲しい」「悔しい」「つらい」などネガティブな感情に引っ張られ、「悲しいけど何も言えない子」「喧嘩に負けて悔しい子」など、レッテルを貼ることにもなってしまい、負の感情を助長してしまう恐れもあります。子どもの心の代弁は、時と場合によって、子どもたちをより戸惑わせてしまうこともあるということも理解しておく必要があると思います。

また、言葉にならない気持ちがあるということを、時折子どもから学ぶこともあります。言葉が話せるようになってきたら、「言えるはずなのになぜ伝えられないの?」「どう思っているのか言ってもらわないとわからないよ」などと教えながら子どもの気持ちを引き出そうとしてしまいますが、言葉にならない言葉や声にならない声がある、ということを大人は忘れがちです。

子どもの中でどんなことが起きていても、本当のこと(真意)は「わからない」ということを前提に起きつつ、困っている姿や、感情が表れているそのままの姿を捉えつつ、そこから先にどうつなげていけばいいか、ということを、これからも一緒に学べたらと思います。

では、どうしたらいいのかなぁ?
目の前にいる渦中の子どもに、あなたの本当の気持ちはわからないけど、わかりたいと思ってるよ、という姿勢で言葉にすることができれば、適切な援助になるのかなぁ。「困っているように見えるけど大丈夫?」「どういうふうにしたいのかな?」など、その子の思いを、その子自身が表現できるような環境を作ってあげることが、私たちの役割だったりするのかなぁとも思います。もちろん、嫌なことを「いやだ」と言えるようになることも大切なので、そう言いたいように見えるのに言えてない場合は、フォローしていくことも必要です。
その子、その場、その環境で、一瞬一瞬のかかわり方を互いに学び合いながら、大人も成長していきたいですね。

年末年始にゆっくりできるタイミングがあれば、映画『カモンカモン/マイク・ミルズ監督』をぜひ観てみてください。子どもが一人の人間として生きている姿や、子どもと大人、立場など互いの違いを擦り合わせてだんだんと家族になっていく風景に心を打たれ、共感しました。きっと大人の育ちを支えてくれると思います。

今年も振り返るとホカホカするような思い出の中で、大人も子どもも共に経験させてもらえたことを嬉しく思います。園へも多大なご協力、本当にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします!

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