自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

自分の死後のお金や不動産などの扱いについて、あらかじめ取り決めておくのがいわゆる遺言です。
これを書き記したものを遺言書と呼ぶわけですが、一口に遺言書といっても実はその手続き方法などによって3種類に分かれています(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)。
それぞれメリット・デメリットがあります。
秘密証書遺言はあまり利用されませんので、今回は自筆証書遺言と公正証書遺言の違いにスポットを当てて解説します。
違いを知ったうえで、自分や家族がどの遺言方式で遺言書を残すのが良いか検討してみてください。

■自筆証書遺言

遺品整理をしていたらタンスから父の遺言書が・・・!みたいな、よくイメージされる遺言書です。
全て自筆するタイプの遺言書ですので、紙とペン、印鑑があればすぐに作ることが可能です。

メリット

・すぐ書ける
・費用が掛からない

デメリット

・紛失するリスクがある
・相続人に見つけてもらえない可能性がある
・無効になる場合がある
・破棄されたり変造される恐れがある
・検認の必要がある

自筆証書遺言は簡単に作れる半面、デメリットも顕著です。
タンスなど簡単に見つけられる場所に置いておくと、破棄されたり変造されるリスクもありますし、かといってあまりにわかりにくい場所に保管すると、いざという時に見つけてもらえないリスクもあります。

また実際に遺言書が発見されても、検認という手続きが必要になります。
検認とは家庭裁判所が相続人に遺言書の存在を知らせるとともに、内容を確認して偽造や変造されていないことを確かめる手続きのことです。
検認には費用と時間がかかります。

また、民法には「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(第968条1項)」とあります。
つまりパソコンで作成したり、押印がなかったりするとそれだけで無効になってしまうのです(財産目録のみパソコンで作成してもOKです)。
行政書士をはじめとする専門職の方に依頼し、公平な立場から作成を手伝ってくれれば問題はないかもしれませんが、自分で書くとなった場合、親族などの他人を頼ることは難しいです。
他人に頼れば必ずといっていいほど主観や感情が入り込みます。これはその他人の主観や感情というのも勿論ですが、本人も主観や感情に従ってその他人に気を遣った内容に仕上げてしまうといった危険もあるので、これで自分にとって必要な内容に仕上がるかというと疑問が残ります。
かといって自分一人で作成するとなると、全文をルールにのっとった形で書く必要がありますので、無効になる恐れもゼロではないです。
この辺りは自分自身でどうしたいか、よく考えて決めていただくのが良いと思います。
少しでも不安があれば行政書士に依頼する、あるいは次の公正証書遺言を利用するというのも手です。

そのほか自筆証書遺言について、現在は法務局が自筆証書遺言を保管してくれる遺言書保管制度ができました。
保管費用が必要になりますが、破棄・変造のリスクや発見されないといったリスクに対して非常に有効です。

■公正証書遺言

公証役場の公証人に依頼して作成する遺言が公正証書遺言です。
中立な立場の公証人が間に入って作成するので、自筆証書遺言と比べても確実性・実効性のある遺言書になるのが特徴です。

メリット

・無効になりにくい
・紛失、破棄、変造の恐れがない
・検認する必要がない
・内容についてトラブルになりにくい
・発見されやすい(公正証書遺言があるかを検索するシステムがある)

デメリット

・費用が掛かる
・証人が2人必要になる

主に公証役場に行って公証人と証人2人の立会いの下で作成します。
公証人に自宅や病院、介護施設等に来てもらって作成することも可能です。
作成した遺言は公証役場で保管してくれますので、誰かに勝手に破棄されたり変造される恐れもありません。
第三者が作成に参加するため、自筆証書遺言に比べても費用がかかるのは致し方ないかと思います。

また証人を2人お願いしないといけません。
証人には決まりがあり、次の①②の人は証人になることができません。
①未成年者
②推定相続人、受遺者、それらの配偶者及び直系血族

想定相続人=相続人になる可能性のある人
受遺者=財産を受け取る人
直系血族=子や孫、両親や祖父母

上記は親族のほとんどが該当すると思われますので証人は知人などでも構いませんが、一般的には知人などには頼みづらい案件だと思います。
遺言書の作成を行政書士に依頼される場合は行政書士が証人になってくれますし、もう一人の証人もお任せいただいて大丈夫です。

■おすすめは公正証書遺言

自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらで作成してもルールにのっとったものになっていれば大丈夫です。
ただ、遺言の目的は自分の財産の処分を相続人等に託すためですから、無効になることなく、また争いになることなく、正確に意思を伝えることが大切です。
そういった目的を考慮した場合はやはり公正証書遺言がおすすめです。
また、内容や作成についても行政書士にご依頼されることをおすすめします。
いざ遺言書を書こうとなると、家族や相続人には話しづらい気持ちや事情などもあるかもしれません。
専門家に相談することでそういった事情を汲み取ることができますし、秘密を関係者に知られることもありません。
ご希望に沿った形でより良い相続・処分が可能になります。

一番問題なのは、正確に伝わらない遺言書のせいで残された家族や相続人に争いが起きてしまうことです。
特にお金が絡む話となると無用な争いを生んでしまいやすいので、そうならないためにも専門家に相談して公正証書遺言を作成されるのをオススメします。

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