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調査会社から見た「依頼ルート別」の長所と短所

こんにちは! 特許調査会社をしてます、酒井というものです。今日は特許調査の依頼をお預かりする「いろいろな経路(具体的には3パターン)」について書きます。

調査依頼をする側の方にとっては「経路ってなんぞや?」と思われるかもしれないですね。依頼者の方からだと「調査を誰に頼んでいるか?」という見え方になります。具体的に挙げてみると

・調査会社に直接依頼する
・特許事務所に調査依頼をする

などが代表的な「調査を頼む」です。
上記を私たち調査会社側から見ると

1)企業/大学から直接受託する
2)特許事務所が中間に入って調査(やりとりは「事務所の先生のみ」)
3)企業からの調査で、特許事務所も入る
   (やりとりは「三者でおこなう」)

という具合になります。

弊社でもだいたい常時、上記1~3のパターンが同時に動いています。
ですが、依頼側では多分「いつものパターン」というのがあるんじゃないかな?と思うんです。
他のパターンだと、どんな展開になりやすいのか?等、知る機会も少ないのではないでしょうか。

ということで、あくまでも「調査会社側から見ての意見」ではありますが、色々な頼み方の「長所・短所」を記載してみます。

1)調査会社に直接依頼する

企業や大学から調査会社に直接依頼を出す方法です。
長所はスピード感と、色々な面で融通がききやすいこと。
短所は技術説明等の手間が増えることかな、と思います。

「スピード感」は、”2)事務所に全面的に依頼”との比較です。
直接依頼を頂いているケースだと、単純に情報の行き来が早いです。調査資料なども、企業サイト内のURLで「この製品です」とお知らせ頂いたり、見本市等でのプレゼン資料を頂いたり。2020年からはWeb会議でご説明頂く機会も多くて「お手持ちの資料+口頭」で、というパターンが多いんです。

また、調査案作成に入ってからの疑問点等も直接お聞きできます。
お見積をお知らせした後、着手のご指示も当たり前ですが「直接」です。
とても急いでいらっしゃる方だと、見積メールをお送りしたら、大げさでなく”秒”で「了解!着手して」と指示頂くことも案外多くて、そうなると私どもも、いやが上にも「急がなくては・・・!」という気持ちになります。

次に「融通がきく」というのは、スピード感とちょっと似ているのですが、「イレギュラーな調査依頼にも対応できる」という感じでしょうか。たとえば朝一番にお電話やメールを頂いて「無効化したい日本の特許番号だけを言われて、パテントファミリーの確認+主要国の経過書類+可能な限りの引例」を入手、昼前にデータ送信するとか。

あるいは会議で話したい内容を電話で伺って、関連情報の収集・分析+パワーポイントの資料作成、といったケースも時々あります。インハウスの調査部門に近い業務の進め方かと思います。

どちらもある程度スピード感が必要ですし、会議資料作成ではご本人からアイデアを伺わないことには・・・という部分もあり、こういったタイプの調査は「直接依頼ならでは」なのかな、と思います。

短所の「技術説明の手間が増える」点は、私どもからは見えない部分ではありますが、時々「特許事務所の先生にも、同様の技術説明をされているんじゃないかな?」と感じる時はあります。企業知財はお忙しくされている方がとても多いですし・・・説明のお時間を頂き、いつも感謝しております。

2)特許事務所に、技術説明等含めて全面的に依頼する。

特許事務所経由でご依頼を頂く場合、直接依頼とは長所/短所が概ね逆転するのかな、と感じています。長所は「説明や管理等が一度で済んで、負担が少ない」。短所は「やりとりに時間がかかりがち」「イレギュラーな調査依頼は難しい」です。

じつは2020年、事務所経由のご依頼が増えました。もしかすると「知財実務オンライン」の動画等で、知って頂いたケースが多かったかも?と思います。

「ここで差がつく!意外と知らない調査の基本」
もうすぐ、再生回数3000回になりそうです。

さて・・・特許事務所様を通して調査依頼を頂く場合。メリットは「説明や管理等が一度で済んで、負担が少ない」こと、と書きました。

これ、調査会社目線で見ると、弁理士の先生から「構成要件のしっかりわかる説明資料」を頂くケースが多いんです。これは想像なのですが、依頼元の方と打合せをされて、出願内容の原案をまとめたWordファイルを、少し加工して調査資料にしてくださっているのかな・・・? という感じに見えます。

依頼元の方から見ると「技術説明をするので、出願の準備をして、同時に調査もお願いします。」という流れなのかな、と思われます。説明や管理が一回で済むのは、楽で良さそうですよね!

一方、事務所を通していると「やり取りに時間がかかりがち」という傾向があります(もちろん絶対ではなく、あくまでも傾向なのですが)これ、具体的なデメリットでいうと「タッチの差で調査ができなくなる」ケースに巻き込まれやすいです・・・。

他社さんの様子はわかりませんが、弊社の場合「調査工数確保の優先順位は、着手指示順」にしています。もしどんなに早い段階で調査依頼を頂いていても、他の方が先に「着手してください」と連絡くださったら「着手」のご連絡順に工数を確保、です。他の事柄に例えるなら、メルカリ等で先に「この商品、値引き可能ですか?」とコメント欄でやり取りしていても、後から来た誰かさんが「買いまーす(ポチっ)」としたら、後から来た人の勝ち。そんな感じです。(わかりにくい?)

それでですね・・・正直なところ、12月~3月の繁忙期には「タッチの差で調査をお引き受けできなくなる方」が稀に発生して・・・先週もそうなった方がいました(合掌)。はい、特許事務所経由のご依頼です。

弊社のお見積書は「有効期限=1週間」に設定しており「有効期限を過ぎたら、見積書記載の予定納期や調査費用は確約できません。」と記載させて頂いています。かつ、1週間経過時には「見積有効期限がきていますが、その後如何でしょうか?(調査見合わせでしたら、ご返信不要です。)」というメールもお送りしてます。。。が、先週のケースだと

・11月にお見積提示
・1ヶ月以上連絡がなくて、年が明ける
・「もうご連絡来ないかも・・・」と、
  ファイルをPendingフォルダに移そうとしていたら
・「すみません!年末の件、調査着手できますか?」と事務所から連絡入る

という流れでして。

何となくですがメールを見て察するに、依頼元の企業様が「えっ!調査入らないの?どうして???」という感じだったらしく・・・間に入ってくださった事務所の先生、とっても大変そうでした(汗)。 依頼元の方も事務所の先生にも、余分な心労というかストレス?になってしまう場面があるなぁ、と感じました。

また「イレギュラーな調査依頼は難しい」点についても、スピード感や意思の疎通の面で、インハウス的な作業は難しくなるのだろうな、と感じています。


3)特許事務所が入るが、技術説明等は企業/大学側で実施。

第三のパターンです。上記1)2)の折衷型になります。

・調査打合せは、企業/大学 と 特許事務所、調査会社の三者で
・依頼形態は「事務所から調査会社」の形をとる
・見積書提出や調査報告は 特許事務所に対して行う
・技術内容の質問メールは TO:企業、CC:特許事務所

調査報告の後の業務フローは、知りたい気はするものの、立ち入った質問かな?という気がして、こちらからお尋ねした事はありません・・・(弱気)。ただ、以前「その後」をお話くださった企業知財の方がいました。侵害予防調査だったのですが

・調査会社には「データベース検索」から、多数の公報を読み、対象技術に近い公報(イメージ的には数十件以内)をピックアップする仕事を依頼
・特許事務所(弁理士)には、
 調査会社がピックアップした公報の権利解釈を依頼

という感じの事を仰っていて、確かに!と思いました。

調査会社は大量の公報を処理して仕分けるのが得意。
仕分けた後の権利解釈は、特許事務所に。 という役割分担ですね。

この方式の場合、現時点で私が感じているデメリットは「関係者の人数が増えるので、打合せの日程調整が大変」な事くらいです。

依頼元(企業)からの技術説明は、特許事務所/調査会社にまとめる事もできるので最少なら1回で済みます。お見積書の宛先は特許事務所になるけれど、弊社のお客様のケースだと、CC.(メール)で企業様にも見積が届くので、企業側から間髪入れずに「調査、進めてください」と連絡頂いたりもしました。技術内容の質問メールも、関係者をCC.に入れつつ企業の開発者に直接聞くことができます。企業様から見ても、調査のスピード感や意思の疎通などの面は、直接依頼との差はほとんどないのでは・・・?と思われます。

まとめ

正直に言いますね。みなさん、それぞれのご都合で依頼ルートを決定されていて、あまり「選択の余地」はないかも?ですが・・・もし、選べる状況なら 1)企業から直接 か 3)三者で進める をお勧めしたいです。(あくまでも酒井個人の意見ですが。)

その理由はやはり「意思の疎通」とか「スピード感」です。

調査に関して言えば 2)特許事務所が窓口 でも「調査しにくい」という事はないので、2)を選ばれている方もその点はご安心ください^^

でも・・・概ね12月~3月の調査繁忙期。過去「他の方に先を越されました。」とお断りをしたパターンは、事務所窓口のケースが多いです。(なんといっても、弱点はスピード感ですからね・・・)

「調査をしよう」と決めた時に「先を越されました」となるのと、企業様にとっては言うまでもなく時間的損失や代替方法検討などが発生します。それと私から見ると、企業様の”怒りの矛先”(?)が事務所の先生に向かったときなど、とても申し訳ない気持ちになります。 (とはいえ、調査外注先を開示していないケースもあるようで。それだと事務所に対して「先生!何故調査できないんですか!」って話になってしまいます。。)

とはいえ。どのような依頼ルートでも、調査、頑張らせて頂きます!

これから調査が混み合う時期です。
打合せの日程調整すら難しくなる時期もあるので・・・
「お声がけだけ」でも送って頂くと、会議設定もスムーズかと思います^^ 
これはきっと、出願等でも同じですよね。
それでは!

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