見出し画像

調査のメタスキル

こんにちは。 この記事は「調査方法を考えつくスキル=調査のメタスキル」についてのメモです。

はじめに:直接的な情報源がない物事

「特許だけ」では閉じていない情報分析を行う場合
直接的な情報源がない事柄を知りたいケースに出くわします。
ここでは話題をイメージして頂きやすくするため、2つ例を挙げます。

例題1:ある農業資材の売上を調べる

国内で、主にトマトの栽培に使われる特定の農業資材がある。
製造メーカーはほぼ1社で、A社に絞られる。
この資材の年間の売上高と、
資材に関連する特許出願を調べて欲しい。

なお、A社は上場企業で、
セグメント別の売上高は開示しているが、
商品別の売上高は開示されていない。

例題2:競合他社の中国での仕入れ先を調べる

中国の深圳近郊に競合B社の工場がある。(B社は上場企業とする)
ある原材料について
B社が取引している中国での仕入れ先を調べて欲しい。

ふたつの例題、どうですか?
何となくでも調べられそうですか?
それとも「ググっても出てこなさそう。調べられない。」事柄ですか?

調査のメタスキル

メタスキルとは、
一般には「スキルを使いこなすスキル」と定義されるようです。
ですが「スキルを使いこなす」という表現だと、たとえば「データベースを使いこなすスキル」と読み替えることもできそうですよね。

この記事での「調査のメタスキル」は、
「調査方法を考えつくスキル」と定義して話題を進めていきます。
前述の例題のように「パッと見、情報源がなさそう」「もし調査依頼が来たら『調査不可能』と答えたくなりそう」な情報を得るスキル、とも言えます。

その点、調査会社は「調査不可能」と回答できるケースも多いと感じます。
これに対し、企業内の調査担当者は「断片的な情報でも良いから、何とかして調べて!」と泣き付かれる場面もありそうですよね。
ということで、企業勤務で調査に携わられている方々は「調査のメタスキルを持っていると便利なんじゃないかなぁ」と思います。(個人の意見です)

課題の構造化

調査のメタスキルを身につける方法として
私は「課題の構造化」が一番重要だと思います。

もちろん、色々な情報源やデータベースを知っている方が便利ですが
情報源の知識を仕入れる事ばかりに躍起になっていると
「道具は色々持っているけれど、使いこなせない」人になっちゃいます

例えて言うならば・・・

新しい調理家電・調理道具を見たり聞いたりすると「便利そう!」と次々飛びつくけれど、使わなくなる物も多くて、死蔵グッズが溢れかえったキッチン、みたいな感じ?

一方、メタスキルが身についている状態は「道具は基本的なものが一式揃っていれば、大抵の料理は作れるよ!」という状態に似ています。

たとえば「フードプロセッサー」を持っていなくても
「フードプロセッサーの機能のうち、この場面では『食材を細かくする』機能を使いたい」のであれば、包丁+まな板で代用できる、という具合。

上記の「フードプロセッサ / 包丁+まな板」のように、
機能や場面、対象物などを分解したり、本質を考えたりするのが
「課題の構造化」です。

「例題」の調査課題を構造化すると・・・?

それでは前出の例題について、課題を構造化してみます。
なお「別の切り口」「もっと良い方法」は、おそらくたくさん!あると思います。「酒井さんはそういう風に考えたのねー」という程度に、広いお心でお読みいただければ幸いです。

■例題1 : 特定の農業資材の売上を調べる(A社)

前出の通り、A社は「商品別売上」は開示していない。
但し、Webサイトで商品の規格・販売単価等は開示していたとする。

1)主にトマトの栽培に使用
トマトの国内作付面積は農水省の統計で確認が可能

2)資材の標準的な使用量

資材の販売会社(販売チャネル)等の資料を見ると、
標準的な使用量(推奨使用方法)等が書かれているかもしれない。

また、農業の現場では、JAの営農指導員が資材の適切な使用量などについてアドバイスを行っている。JA資料にも推奨使用方法が記載されているかもしれない。農業雑誌等の情報ソースも可能性がある。

3)販売量の試算

作付面積 × 単位面積当たりの使用量  で
「全国すべての圃場で標準使用されていた場合」の販売量が計算できる

が、現実には「すべての畑で使われる」とは考えにくいので
「全国の30%に普及している場合」「50%に普及している場合」のように
複数パターンで試算を出すとよい。

■例題2 : 競合他社の中国での仕入れ先を調べる(B社)

「B社は上場企業」という事なので

1)有価証券報告書
主要な材料で、取引量も非常に大きい場合は有価証券報告書に記載されている可能性はある。(但し、これはラッキーな場合と考えられる)

2)企業データベース (例:東京商工リサーチ等)
取引情報にデータが入っている可能性あり。
こちらもラッキーな場合。中間に商社等が入るとおそらく調べられない。

3)「中国でその原材料を扱っている企業」を探す
材料によってはタオバオ(淘宝網)等で販売者を探せる可能性あり

通常のネット検索でも探す。
また、原材料を製造≓特許を出願、と考えて、特許情報から候補を探す事もできそう

4)対象企業B社との取引を謳っている会社はないか(ネット検索)

情報3)× 4)の組合せで、情報に迫る事はできないか・・・?と考える

メタスキルを身につける「質問」のヒント

以上、例題1、2について「調べ方の試案」を考えてみました

先ほど述べた通りですが、
このような「試案」や「調査の考え方」をケーススタディ的に収集して覚えるのって、個人的には「否定はしないけれど、無駄だな」って思います。
この場合のケーススタディを集めるのは「目新しい調理器具に飛びつく」ようなもの、だからです。

個々のケーススタディから学べる面もあるけれど、その調査方法は「そのケースにしか通用しない」事が多いし、似たような調査ケースはおそらく滅多に回ってこないです。

また、例題のような「よくわからない調査」の話題になった時
「どんなツールを使ったら探せますか?」という質問をする方も結構多いのですが、それも「調理器具集め」と同じです。質問する事自体は問題ないけれど、躍起になってツールを覚えるのはおすすめしません。

調査のメタスキルを身につけるための質問、があるとしたら

「その課題には直接的な情報源がないと思われますが、
 どのように切り口を考えたり、課題を分割したりしましたか?」

と聞いた方が、汎用性が高そうな気がします。
それでは!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?