自国を守るのは誰か?~ ウクライナ侵攻に見る平和の基盤 ~

ロシアがウクライナに侵攻してから1か月以上が経ちました。この戦争の影響は大きくなるものと大変危惧しています。一つは当然、安全保障面からであり、もう一つは経済面からです。

■ 「幻想」だった国連体制

まず、この21世紀に陸上部隊を中心とした、ある意味19世紀型の戦争が本当に起こったということに衝撃を受けました。常任理事国の拒否権がある国連安全保障理事会(以下、国連安保理)が、今回のような時に機能しない可能性が大きいことは以前からわかっていました。それでも戦争を起こせば大多数の国々から批判をされるのは自明でしたから、ここまで大規模な戦争はさすがに踏みとどまるのではないか、という期待もありました。
しかし、毎日入ってくるあの映像です。そしてやはりロシアを非難しない国連安保理。各国とも、第二次世界大戦後の国連体制が本当の意味で幻想であり、自国の防衛のためには、防衛力を自ら充実させる必要性を強く感じたのではないかと私は想像します。

■ ゼレンスキー大統領の期待

今回、国連安保理がロシアの行為を非難しないのであれば、自国を守るためという大義名分で我が国の脅威となる軍備拡張を進める北朝鮮をも、今後は非難できなくなってしまうのではないでしょうか。
ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でオンラインの演説をしましたが、その中で「国連安保理が機能しない以上、機能するほかのシステムを構築すべきであり、そのリード役を日本に期待したい」という趣旨のことを言いました。軍拡を意識する国を減らすためにも、国際社会に突きつけられている大きな課題だと認識すべきです。

■ 「最悪のシナリオ」を想定した検討を

日本も例外ではありません。台湾併合を隠すこともしない国が隣にあり、強大な軍事力を保持しています。恐らく今回のロシアのウクライナ侵攻の行方を、固唾をのんで見ているものと思います。
戦争・紛争・武力衝突が起きないよう、外交努力をするのは当たり前ですが、それでも一方的に攻め込まれることはあり得るということです。そして、その時のシミュレーションを行っておくことは必要だということを、改めて実感しました。
日本人は、良くない想定の検討は避けがちだと指摘されますが、もう先送りは出来ないと思います。安全保障と一口に言っても、多方面の安全保障を検討しなければいけません。

■ 求められる備え

今回、ウクライナの街中には避難シェルターがあちらこちらにあるということを初めて知り、驚きました。日本には全くない施設です。そして、あれだけ街中が砲撃されていても市民がいられるということは、どこかで食料と水を確保しているということでもあります。
また、長期的に食料の輸入がままならないという状況も想定しておく必要があります。岸田政権で経済安全保障担当大臣も置かれましたが、その観点からも対処していかねばならないのです。
そして何より、自衛隊などの防衛力です。日本は島国なので陸・海・空それぞれにおいて常に行っていますが、より具体的なケースを想定してくことも求められると思います。

■ 日本を守るのは誰か?

今回、ウクライナには、自分の国は自分で守るという気概を強く感じます。そのため、ロシア軍が予定通りに侵攻作戦を進められないとも言われています。
日本には日米安保条約があり、アメリカは軍隊を派遣して日本を守るということになっています。しかし、大原則として、自分の国は自分で守るのが基本です。
侵攻されている日本が主体とならないで、アメリカが前面に立って敵を防いでくれるわけがありません。いざという時に敵から日本を守ることができるか。日本は第2次世界大戦後、自衛隊が一発も銃を撃っていませんから、私自身も含めて多くの国民に不安があるのは確かですが、そのことはきっちり意識しておくべきだと考えます。

物価上昇と物不足

二つ目の懸念は、経済金融・物価への悪影響です。単純に、ウクライナでは輸出などできない状況になっていますし、ロシアとの貿易は避けていくことになっていくと思います。品不足、価格上昇がすでに起き始めています。小麦粉不足が想定されますので、米粉の利用検討などのニュースが報道されています。
安倍政権以降、インフレ率2%を目標に金融政策が展開されてましたが、想定していたのは、給料アップも含めての物価上昇でした。しかし今回は、物価が上がってもその分が企業を通じて日本の労働者に回るものではなく、そのまま海外へ流れて行ってしまうものですから、中身が違います。単純に物の値が上がる半面、所得は上がらず、購買力が下がるだけになってしまう可能性が高いと思われます。
また、値が上がるだけならまだしも、物が入って来なくなると心配の声が上っているものもあるようです。
建設関係の方の話では、合板(コンパネ・ベニヤなど)はすでに卸から入荷未定と言われてしまっているそうです。ただでさえ、半導体不足、ウッドショックなどで今年後半の経済が不透明だと言われていた矢先、新たな不安が生じています。例え注文が入っていたとしても、物がなければ仕事になりません。

■ 日本経済へのダメージ

ロシアは資源輸出大国です。日本は割合は大きくありませんが、石炭・天然ガスなどでロシアからの輸入実績があります。その輸出が止まるだろうことが想定されるなか、代替輸入先を段取りしなければいけません。割合が大きくないとはいえ、安心できるものではありません。経済はグローバルですから、世界的に不足すれば、どこでどういう影響が日本に出るかわかりません。全力を挙げて、エネルギーの確保をしていかねばなりません。
まして、今まで世界が荒れれば円高に移っていた為替ですが、今回は状況が違います。ゼロ金利の円ではなく、利上げが想定されて利率の高いドルなどに人気があり、円は円安に動いています。日本はしばらく貿易赤字が続いていますが、赤字幅が広がることになると思われます。

■ 対ロ経済制裁への支持

ロシアへの経済制裁はロシアのダメージがより大きい方法をとるのですが、グローバルな経済では、ロシアだけでなく世界にとってもダメージを与えることになります。日本にとっても指摘してきたようなマイナスが想定されます。
しかし、こういう厳しい状況が見えているなかで大変心強かったのは、先月の共同通信の世論調査です。
「ロシアのウクライナへの侵攻はけしからん、自分たちの生活や仕事が厳しくなっても、ロシアへの経済制裁を行うべきだ」という答えが、なんと85.8%に上っています。政府にとって大変心強い数字と言えるのではないでしょうか。
政府も全力を挙げて対策をとり、国民と一致団結してこの難局をともに乗越えていきたいと思います。

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