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ドイツのコミケ、VR化で見えた「未来」

ドイツのコミケこと「ドコミ」は5月23日、24日の週末に、デジタル版「DigiKomi」(公式読み:ディギコミ)を開催しました。

「ドコミ」は近年来場者数で5万人を超えるアニメ漫画ファンを動員する界隈では最大のリアルイベントです。イベント自体は新型コロナウイルスの感染拡大により9月に延期されましたが、元々予定されていた日程に合わせてオンラインで「ディギコミ」を開催しました。

日本国外のアニメイベントが今後どうなるのかについては、以前もドイツの各イベントの動向をまとめました。(アニメイベントの行方=ドイツの事例から考える

日本国内においても下記の記事にあるように、イベントのオンライン開催の関心は高く様々な取り組みが行われています。

「ドコミ」とは?

初めに少し説明します。「ドコミ」はコミケをお手本にしていますが、イベント形式は異なります。個人クリエーターのエリアは500スペース近く設けられていますが、ステージ企画やワークショップのエリア、業者や企業ブースなどが同時に展開するいわゆる「アニメコンベンション」形式です。(日本だと「超会議」のほうが近いかもしれません)

「VRChat」を導入

今回は初開催となった「ディギコミ」ですが、ドイツのアニメコンベンション界隈では初となる、ヴァーチャル・リアリティ(VR)空間が導入されました。これはVRプラットフォームの「VRChat」上にドコミ・オリジナルの空間(「ワールド」)が用意され、企業や個人のブースを見て回れるというものです。参加者同士は音声通話により交流ができます。

ライブ配信は「Twitch」で

といってもイベントのすべてがVR化できたわけではありません。ステージ企画に関しては、動画配信プラットフォーム「Twitch」を使用して別途ライブ配信が行われました。ドコミの関連アカウントによると、3面仕様のステージから配信が行われていたことが分かります。

開催結果は、、、

ここでイベント終了後に発表された統計データを見てみましょう。

・総ライブ配信時間:18時間
・「Twitch」の同時最大視聴者数:5500人
・累計視聴数:42万906回
・ユニーク視聴者数:28万7505人
・寄付金額:6439ユーロ27セント(*目標の5000ユーロを達成)
・フリマの出品アイテム数:2000点以上
・VR空間「クリーミー・アイランド」の訪問者数:4300人
・通話アプリ「Discord」の利用者数:3200人以上

主催者や参加者のフィードバックを散見する限り、イベントは成功。早くも第2回の開催に期待する声も見られました。

VR空間とライブ配信の併用というスタイルは今後、このコロナ時代におけるオンライン・イベントの「未来」のひとつのあり方なのかもしれません。

気になる点、、、

といっても気になるところもありました。いくつか紹介してみます。

まずは、VR空間に企業ブースが積極的に参加したところ。関連セールを開催したりスタッフも参加し交流ができるようになっていました。

購入への動線は、、、

VR空間では商品はオブジェクトとして手に取ることはできましたが、そこから購入までの動線がないのが気になりました。気に入ったらその場でオンライン決済で購入できるようなシステムがあるとよいのかもしれません。

購入への動線の不備ということでは、個人クリエーターのブースでも壁に貼られたポスターや机に並べられたマンガのサンプルページでも同様に感じました。

このあたりは日本の「バーチャルマーケット」などVR空間でのイベントが協力できる部分なのかもしれません。

日本からゲストが参加

VR空間で参加者を喜ばせていたことのひとつに、本来「ドコミ」に参加を予定していた招待ゲストが急遽会場に現れたことが挙げられます。現地のファンと交流を楽しんだようです。

日本からドコミに参加を予定していた招待ゲストに関しては、「Twitch」でのライブ配信で日本から生演奏が中継されました。

クラシック音楽の楽器編成によるアニメソングの演奏に視聴者は大喜びでした。このようなリッチな音楽体験は近年のトレンドでもあり、今後とも拡大する可能性がある分野だと筆者は思います。(「ミニケストラ」の皆さん、素晴らしい音楽をありがとうございました!)

このほかにも、ダンサーのめろちんさんやマンガ家の座紀光倫さんなどのメッセージが紹介される場面もありました。(9月に延期された「ドコミ」に無事に参加できればと祈るばかりです)

こういった日本人と現地のファンとの国際交流はしっかりとした準備期間があれば、もっと拡充できたように思いました。

気になるコスト

さて、気になる点の核心に迫ります。それはやはりコストです。

「ドコミ」のオンライン版「ディギコミ」は参加費無料で行われました。チケット販売の売り上げに代わる部分としては、寄付金の約6000ユーロとあとはスポンサー企業からの協賛金くらいだと思われます。

これでライブ配信用にスタジオと機材をレンタルして、スタッフや出演者に係る経費、さらに「VRChat」向けの「ワールド」をいちから構築した作業を考えると、収支はよくてトントンくらいだったのかもしれません。

一度限りの開催かつ本イベントのPRと考えれば将来への投資と見ることもできるでしょう。ただ、今後イベントを拡充させるようであれば、さらなるマネタイズの仕組みを取り入れる必要がありそうだと感じました。

まとめ

今回は以上です。ドイツのコミケこと「ドコミ」のデジタル版「ディギコミ」の様子をお届けしました。

イベントのVR化は非常に将来性を感じさせる一方で、本来イベント会場で行われるはずの経済活動はまだ再現の余地があるようです。ライブ配信の充実およびVRとの相乗効果もさらに高めることができそうです。そして、国際交流の機会もまだまだ増やせそうです。

オンライン・イベントの「未来」は、これからまだまだ充実していきそうな予感を感じました。

読者の皆さんも、日本から遠く離れたドイツのアニメイベントにオンラインで参加してみませんか?

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参考:
「ドコミ」公式サイト:https://www.dokomi.de/ja
「ディギコミ」公式サイト:https://digi.dokomi.de/en

タイトル画像:VR空間「クリーミー・アイランド」の入り口で撮影したスクリーンショット






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