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なでと君むなしき空に消えにけん

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小さな教会のある山間の町、渡呉。 そこに住む女子高生の杏子は、父親を亡くしながらも、母と二人、強く生きていた。 そんな中、渡呉の町に『知死期の導』と名乗る一人の男と小さな神様がや…
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2024年1月の記事一覧

なでと君むなしき空に消えにけん 1 序

なでと君むなしき空に消えにけん 1 序

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「とりま、やることやっちゃおうよ」
思いつめた表情でつぶやいた彼は、おもむろにアンプの電源を落とした。
軽い破裂音のようなものがしてノイズが消える。圧迫感から解放された鼓膜が、じわりじわりと膨張して、むずがゆかった。
昔からメタルと呼ばれる類の音楽のよさがわからなかったけど、この子の下手くそなギターをあんまり長く聴いてきたせいで、今では勧められるどんなバンドの曲も工事現場の騒音となんら変わり

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