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Guest Talk 03: 郷古哲哉 [映像職人]

動くことで叶えるべきことが見えてくる

徹底した「職人」へのこだわり。目の前のこと、依頼者の声、自分が応えるべきものにプロとして行うべき振る舞い。映像職人JERONI毛こと郷古哲哉さんの姿勢は一貫している。映像づくりはチームワークが大事。何を見るべきか、どこへ向かうべきか、メッセージが直球でブレない監督には誰もが心を預けられる。良い映像には良い信頼、多様な目線には多彩なチャレンジ。すべては映像につながっている。「偏愛」とも言うべき映像への向き合い方が、郷古哲哉さんの魅力だとあらためて感じました。


郷古 哲哉さんのプロフィール
Tetsuya Goko
宮城県仙台市生まれ。複数の映像スタジオにて映像企画から制作演出までの幅広い経験を経て、2005年「映像職人JERONI毛」として独立開業。2011年の東日本大震災では多賀城に構えていたスタジオと自宅が被災。2019年、撮影スタジオを新たに建設し、東北6県を中心にTVCMや映像制作を行なっている。多賀城市消防団喇叭隊。TAP多賀城メンバー。


2023.10.2+10.9放送

試行錯誤からオリジナルを生み出す

酒井:今回の「新しい酒井3」ゲストはこの方です。こんにちは。

JERO:こんにちは、緊張しますね。。。

酒井:映像職人JERONI毛こと郷古哲哉さんです。普段は「JEROさん」とお呼びしているので、ここからはJEROさんとお呼びして、お話を進めていきます。

JERO:緊張するなぁ。。。

酒井:今日はJEROさんのスタジオ、その名も「JEROスタ」にお邪魔しています。僕は初めてのJEROスタ。やっと来ることができました。充実すぎるスタジオに驚きです。

JEROスタ「撮影スタジオ」

JERO:緊張。。。

酒井:緊張すること何もないですよ笑

JERO:お陰様で土地は十分あったので、駐車場もゆったり。JEROスタの公式WEBには10台駐車できると書いてますが、実際は13、14台まで駐車可能です。ロケバスだって全然OK。

酒井:うわー。申し訳ない。今日は僕ひとりなので、50人分くらいのデカイ態度で過ごします。

JERO:たくさんの人に来てもらいたいです。

酒井:普段はこのスタジオ内での仕事が中心ですか?

JERO:外の方が多いですね。仕事のメインはロケ。やっぱりロケの方が純粋に良い絵が撮れると思います。どんな映像をつくり出すのかそれ次第ですが、最近はCM予算も減ってきましたし、コロナウイルスの影響もありましたから、スタジオにいる時間も多くなってきました。

酒井:ロケもスタジオも器用にこなせる人は稀です。JEROさんは映像演出から撮影、編集まで一人でできちゃう。ただできるだけじゃなくて、訴求に適したアウトプット。しかもJEROさんのすごいところは、そんな頼られるスキルの幅が既にあるにもかかわらず、新しい表現を取り入れようと日々模索しているところ。「今までと違う合成してみよう!」とか「新しい道具を使ってみよう!」とか、カイゼンマインドが半端ない。


阿部勝自動車工業《アベカツ軽POP篇》2023
アイドルグループ「いぎなり東北産」を起用したアベカツ自動車のシリーズCMではJEROさんが企画・演出・編集・合成・編曲・Ma…全てを制作している。

撮影中の一コマ ©️Tetsuya Goko

JERO:小さい頃から他人のマネが嫌いで、とにかく他人がやっていないことをやりたくて、そうなると必然的に新しい方向に向かっていくわけですよね。自分なりに考えて、オリジナルでやることを意識しています。技術が進化しているから、新しいことはいろいろできちゃう。

酒井:それって独学で?

JERO:そうです。おもしろそうなプラグインをサイトで買ったり、常にネタ探し。

スタジオはお宝がいっぱい

AIを仲間として向かい入れる

酒井:最近はAIに積極的のようですね。

JERO:熱いっすね。今まで時間かかっていたものを短時間で仕上げることができたり、できなかったことが手軽になったり。でも、新しい技術に全部任せるわけじゃない。大事なのは「使い方」。分担作業みたいなものが広がる感じ。いままで時間や予算とかの制約で諦めていたことも可能にできる

例えば合成するにしても、少し前ならグリーンバックを準備して照明もそれなりに組む必要があったのだけど、それは結構な時間やお金もかかる。だけど今ならその手間も不要で、普通にカメラ回して撮影した素材から後加工できちゃう。大きな規模のことも自分で直接コントロールできるようになったという意味ではおもしろいですね。だからこそ、部分的なことじゃなくて、映像全体をイメージしながらチューニングしていくことが大事。

酒井:一人で手軽にできるという点でいうと、素人にとっても映像制作は身近になりましたよね。SNSやYouTubeといったチャネルで映像が溢れている。そのあたり、プロと素人の違いについて、どのように感じてますか?

JERO:プロは見ればその映像がプロの仕事か否かって、一眼見ただけでわかります。10秒も見れば判断できますね。技術というよりも、作っている人の「考え方」がわかる。場の見せ方や人の出し方って演出の部分なので、素人動画に多くみられるように、何でもかんでも「背景ぼかし」が最善とは言えない。「できる」と「つたわる」は違う。

最小限の環境でも今では一人で完結できてしまう。

新しいJEROさん

酒井:この番組「新しい酒井3」は、ラジオ3と酒井で新しいことを考え始めるというコンセプトなので、ゲストの方々にも新しいことにチャレンジしてもらおう!ということで、恒例の無茶ぶり宿題をお願いしています。JEROさん、宿題やっていただけました?

JERO:はい。はい。

酒井:ありがとうございます。とにかく無茶ぶりしてゲストを悩ませるところから何か生まれないかなーという実験です。ご協力に感謝です。僕からJEROさんへの宿題は「3秒で伝える」というお題でした。映像という世界で戦っているJEROさんが、もし3秒だけ、世界に届けられる時間があるならば、どんな表現をするのかなと。3秒で好きにさせるとか、3秒で笑わせるとか、時間はたった3秒でも人を動かすこと出来るんじゃないか、っていう実験。時間や予算など豊かな条件が「伝わる」ことと直結するとは言い切れないし、僕個人のそれを言い訳にするのはクリエイターとして格好悪いと思うのです。

JERO:映像を考えるというよりも、「3秒で伝えられることは何か?」という視点で考えました。仮にTVで放送するものと仮定します。頭と尻の1秒に音は入れられない。「ポー」とか音に驚いて振り向いても画面はもう消えているはず。その尺でアテンションはできても、中身は伝えきれない。。。

酒井:そっか、1秒・・・

JERO:この条件で何ができるのか。耳に残るような音で注意を集め、画面には文字だけを映す。そして、この文字、「実はAIを動かすためのプロンプト」でしたというアイデア。

酒井:ん、んん〜!!

JERO:そのプロンプトを見た人それぞれがAIで画像生成するんです。

 →→→ 郷古哲哉さんの宿題作品の詳細はメンバーシップページで紹介しています。

酒井:面白い仕組みですね。

JERO:プロンプトを重ねていくことで表示されるものも変化するため、調べていくほどに伝えたいものに段々近づいていくという演出。見せているのは静止画でも、そのプロセスが映像的。だから、入口はTVじゃなくてラジオでもOK。

プロンプトで画像生成を促す

にぎわいづくりを演出する

酒井:お仕事とは別で、地域の活動にも多く時間をつかっていらっしゃいますが、地域の活動を通して映像職人のものづくりに結びついていることや、気づきなどはありますか?

JERO:あります。自分は広告作っている者ですから、「人がどんな風にモノゴトを見ているのか」ということは常に気になります。ですから、いろいろな人と接することはインプットになる。どうやったら人が「見たい!」と思うのか、いつもと違う相手側の目線に立ってみて考える機会にしています。

酒井:ほんとそれ、共感です。

JERO:あとは「見た目」の大事さを伝えること。地域のイベントだとしても、やっぱり素人でやると見た目が良くない。そういうところから直していかないと、来客いただくお客様の満足に繋がらない。ここでしかなえられない価値を楽しみにお客様は集まるわけで、些細なことでも嫌に感じさせない配慮は大事。心地よくないと、人は集まらないですよね。映像ではないけれど、ものづくりという観点では一緒。大切なことは同じです。

酒井:ありがとうございます。お時間なので、今回はここまで。

JERO:え!早っ。ありがとうございました。

多賀城市消防団喇叭隊としての活動も ©️Tetsuya Goko

放送回はPodcastでも配信中

#09 Guest Talk 03: 郷古哲哉 [映像職人]1/2
#10 Guest Talk 03: 郷古哲哉 [映像職人]2/2(2023.10.9公開)

https://open.spotify.com/show/4Lwo8gyWxtxWYLzimj48rA?si=5b80d5fc96494b75


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