地方創生 ―組織⑥―

 1.はじめに


 今回は、「アイデア」に注目する。「地域で必要なのは単なる思いつきの「アイデア」ではなく、地味で小さな実践の積み上げであり、その先に生まれていく知恵」である(木下, 2016:289)。しかし、地域活性化に取り組む組織の中には、斬新な「アイデア」に目を光らせ、解決すべき問題から目を背けていることがある。木下(2016)によると、こうした地方組織には、どうにも、「「アイデアがないから失敗する」と思い込み、現地にも「新規性」のあるアイデアばかりを求め」ている(木下, 2016:289)。地方活性化においては、奇抜や新規性よりも「現実性」が重要である。
 

2.組織におけるアイデア出しの問題点


 実際、地域の取り組みの中で、「アイデアばかりを出し合っている会議に、地元で事業に奮闘している実践者が声をかけられ、巻き込まれてしまう」という問題がある(木下, 2016:290)。巻き込む側は、たいていろくな意見をもっていない。なぜなら、アイデアが出ないから実践者を呼ぶからであり、そもそも事業経験がない人がほとんどであるからである。そうすると、実践者にとっても、単にアイデアを出したところで利益はなく、ただ時間を浪費するだけになる。
 

3.実践と失敗のサイクル


 実践に集中するためにスピード感組織運営することが大切で、実のないアイデア会議に膨大の時間を割くことは無くしていかなければならない。地域にとって必要なのは「賛否両論の中でも小さく取り組みを始めて積み上げ、さまざまな制約条件をクリアし、結果として「成果」と言えるものを残すこと」である(木下, 2016:294)。さらに、そうした小さな取り組み、実践は失敗がつきものである。そこで、その失敗を恐れてやらないとか、責任をなすりつけあってなかったことにしようとするのではなく、「その失敗から学び、再挑戦すること」が重要である(木下, 2016:294)。なぜなら、そこから「本当に地域の抱える課題を解決しうる、現実味のある「本当の知恵」を生み出され」るからである(木下, 2016:294)。
 

4.まとめ


 今回は、「アイデア」に注目し、新規性や奇抜なアイデアに重きをおいてしまい、肝心の問題を直視できていない問題を指摘した。アイデアを出す会議に時間を割くのではなく、実践に時間を割き、失敗と反省を繰り返すなかで、その地域に本当に必要な取り組みを見出していくことが重要であり、そうして生まれる様々な試行錯誤こそが本当の知恵、つまりアイデアなのである。
 

5.おわりに


 今回までで、『地方創生大全』(木下, 2016)を基にした内容は終わりとなります。参考・引用させていただき、ありがとうございました。今後はまた別の著書を参考にしていきます。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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