地方創生 ―人的資源の考え方①―

 

1.はじめに


 今回からは、「ヒト」(人的資源)に注目する。なぜなら、地方活性化の上で重要な資源であるヒトの考え方が間違っていることが多くあるからである。地方活性化においては、ヒトは「人口」と「人材」の二つを区別して考えなければならないが、地方衰退問題では何でも「人口」が原因のように語られる(木下, 2016:148)。
 
 

2.人口ではなく財政問題


 人口軸のみで地方衰退や活性化を考えると、少子化問題や人口減少といった人口問題にすぐ置き換えられてしまう。しかし、例えば自治体の破綻を考える時、人口問題も確かに考えなければならないが、まずは「財政破綻の問題に向き合う必要があ」(木下, 2016:152)る。なぜなら、財政悪化による自治体破綻は、今後多くの自治体が直面することになる可能性が高いからである。財政問題なのに、人口問題だと捉え、「人口減少が悪い、人口減少が改善されればすべて解決する、というのは幻想」(木下, 2016:153)なのである。実際、夕張市は人口減少したから自治体が破綻したのではなく、自治体が破綻したから人口減少したのである。
 

3.自治体の経営方法


 自治体の破綻の話が出ると、自治体の経営方法も同時に考える必要があることは明らかである。例えば、元総務大臣の増田寛也氏は、「今の単位の地方自治体が、今のまま経営していたら潰れる」(木下, 2016:151)という「地方消滅」を唱えた。これは、人口減少していく中で、人口減少前と変わらない自治体経営をしてはいけないことを意味するが、「仮に、地方から大都市圏への人口移動が止まり、多くの若者が地方で子供を産むようになったとしても、それが国全体の労働力として成長するまでには一定の時間がかか」(木下, 2016:157)る。すると考えなければならないのは、「人口が爆発的に増加する時代に対応した自治体経営や各種社会制度を見直」し、「自治体経営の構造を社会の変化に適応させて「破綻に追い込まれない地方自治体」を構築すること」である(木下, 2016:158)。
 

4.変化に対応するために


 社会の変化に適応させて自治体を運営するためには、「人口を闇雲に増加させるような政策ではなく、経済・産業政策をもって新たな財を稼ぐ方法を検討し、乗り越えていくしか」(木下, 2016:164-165)ない。そして、そのためには、「人口に左右されない生産力を確保することが必要で」(木下, 2016:165)である。人口に左右されると、例えば人口過剰になれば食料供給不足の問題が生まれ、古くでいえば米騒動が起こるし、人口減少になれば、今でいえば労働力不足などの問題が起こる。つまり、人口に左右されず、経済や産業の力を高めることで、こうした問題を解決していくことが必要なのである。そうした高生産性社会を実現するために、「労働力をロボットや人工知能などによって代替していくこと」や「資産についても、占有するモデルからシェアリング・エコノミーなどで共有化するモデルへと転換する」といった工夫が重要になってくる(木下, 2016:165)。
 

5.まとめ


 今回は、人的資源の中でも、何でも「人口」問題に注目した。地域衰退問題はなんでも人口軸で考えられがちだが、実は自治体の財政問題や経営問題に優先して向き合わなければならず、その問題解決のためには社会変化に適応し、人口増減に左右されない経済・産業発展政策を考えることが必要であることがわかった。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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