地方創生 ―組織③―

 1.はじめに


 今回は、「合意」に注目する。なぜなら、地域活性化において、事業や政策で意思決定を誤ってしまう要因の一つに「「合意形成」を重視すること」があるからである(木下, 2016:254)。
 

2.合意という形式


 地域活性化分野において、重要なのは「地域がどうしたら活性化するか」という具体的な方法だが、多くの人が「合意形成にとらわれてしまってい」て、その数があまりに多い(木下, 2016:255)。木下(2016)は、ここには「皆で合意しなくてはならない」という、強迫観念にも似たようなものがあるといい、皆が合意することが大事でよいことという形式にとらわれてしまっている問題がある。反対意見の中には的外れなものがあり、合意形成を優先してこうした見当違いの反対を真に受けていては地域活性化ができないからである。
 

3.集団意思決定過程の問題(ワナ)


 合意形成、すなわち集団での意思決定過程には3つのワナがあると木下(2016)は述べる。一つ目は、「共有情報バイアス」のワナである。共有情報バイアスとは、「「集団は皆に共有されている情報に関する議論に多くの時間を費やし、共有されていない情報に関する議論には多くの時間を費やさない」という傾向がある」ことである(木下, 0216:259)。合意形成を優先し、その決定が重要であるとされれば、合意までに共有されていない「第三の情報」(木下, 2016:259)について多くの時間が費やされなくなってしまうのである。
 二つ目は、「確証バイアス」のワナである。確証バイアスとは、「個々人の先入観や選好からスタートし、それを確証する情報ばかりを集めることで、自分の先入観や選好を補強していくという現象」のことである(木下, 2016:259)。自分の地域課題や問題を解決するのに都合の良い情報ばかりを集めてしまう傾向があることから、ある合意形成改定において、合意を図ることを重要視するとそればかりに注意が向けられてこのワナに陥りやすくなる。
 三つ目は、「集団浅慮」のワナである。たとえ賢い集団がこれらのバイアスのワナをくぐり抜けたとしても、自分たちは賢く有能である幻想の共有に基づく集団決定がされたり、逆に集団の外を蔑視して自分たちのマイナス面に目を向けなかったり、そのような集団の中で「おかしい」と思っても声を出せない雰囲気だったりすることで大失敗をすることがある。
 

4.トライ・&・エラー


 地域活性化において、何十人が議論したとしても合意形成を重視して意見を集めても結果が出なければ意味がない。木下(2016:263)は、小さなチームによる、「「衰退を引き起こしている問題の解決に必要なトライ・アンド・エラー」を、どんどんやってみ」る雰囲気を作り出すことが重要であると述べる。まずは取り組んで成果を出す。「合意形成は最初にするものではなく、やった結果をもってなされるべきもの」である(木下, 2016:263)。
 

5.まとめ


 集団における意思決定では、集団による合意を優先したり、自分たちを過信したりすることなく、まずは取り組んで失敗を繰り返しながら成果まで結びつけることが重要であることが分かった。特に満場一致の合意形成では責任も分散してしまい、これでは実行段階において本気で成果をだす雰囲気にならない。そこで小さなチームにすることで、主体的な人間による取り組みが挑戦し続けるという状況を作り出すことが必要であることも分かった。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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