地方創生 ―どう使うか③―

 

1.はじめに


 今回は、「公園」に注目する。なぜなら公園は、「地方が持ち、活用の仕方によっては極めて価値を高めることができるモノ」(木下, 2016:116)だからである。
 

2.公園の現状


 現在、日本の公園は遊び方の「禁止」事項が多く、事実上何もできなくなってしまっているところが増加している。これは、一部の人々の反対の声を聞き入れる「誰もあまり文句を言わないという意味での公共性を確保」(木下, 2016:117)してきたからである。このような禁止事項の増加は、その公園はもちろん、周辺地域の価値を損ねてしまうことになる。木下(2016)は、今後、地域の活性化を考える上では、「減点評価方式」ではなく、「加点評価方式」で公共資産のあり方を考える必要があると述べる。
 

3.加点評価方式による公園


 木下(2016)は、加点評価方式によって公園を運用している代表例を3つ挙げている。一つ目は、札幌の大通公園で毎年開催されているビアガーデンである。「そこでは、街区(丁目)ごとにサッポロ、アサヒ、キリン、さらには外国産ビールなど各社が競う巨大なビアガーデンができ」(木下, 2016:118)、多くの利用客が集まる。その利用客はビアガーデンが終わると、周辺の飲食店等にも行くので、まち全体の効果もある。
二つ目は、富山市の富岩運河環水公園である。ここでは、スターバックスコーヒーが開業し、2008年にグループ主催のストアデザイン賞で最優秀賞を獲得したことで、一躍「世界一美しいスターバックス」として有名になった(木下, 2016:119)。その後も、フレンチ料理店やアパレル店が公園内・周辺に出店するなどして公園やそのまち全体のイメージが向上している。
三つ目は、岩手県紫波町のオガール広場である。法律や条例によって規制が多くなってしまう「公園」ではなく「広場」と名乗り、ここでは「緑地だけでなく、お休みスペース、バーベキュー整備といった火気類の設備も整備され、週末などは大いに賑わってい」(木下, 2016:119)る。
 

4.公園コンセッション


 こうした加点評価方式の取り組みはアメリカではよく行われており、中でも「公園コンセッション」が推し進められている。公園コンセッションとは、「公園の一部での営業権を入札し、その収入によって公園の品質レベルを引き上げていくという取り組みで」(木下, 2016:120)ある。例えば、マンハッタンのマディソン・スクエア・パーク(MADISON SQUARE PARK)では、公園コンセッションで落札した企業である「シェイク・シャック(Shake Shack)」というハンバーガー店が出店されている。この店はあまりの人気で2015年にニューヨーク証券取引所で上場している。日本でも、東京千代田区の「日比谷公園」は開園時から「松本楼」という老舗のフレンチレストランや音楽堂などがあり、これらの収入が公園の運営費等にあてられている。このような高品質なテナントが入ることでエリア全体の価値も上がり、歳入が増加することで公共サービスも充実されるという好循環を生み出す(木下, 2016:121)。
 

5.公園中心にそのまち全体をマネジメント


 木下(2016)は、公園の活用を考える際に本当に重要なのは、このように公園を中心とするエリア全体をマネジメントする視点であると述べる。ハンバーガー店やフレンチレストラン、音楽堂などが建つことで、周辺エリアの価値が上がると、その地価、つまり不動産価値の上昇の契機ともなる。「自治体としては、不動産価値が上昇すれば得られる固定資産税が増え」(木下, 2016:123)る。これは、地域の発展につながる。
 

6.まとめ


 今回は、公園における取り組みに注目した。公園に店などを置き、利用客を増やし、付加価値を高めることで、その公園だけでなく周辺地域を含めたまち全体が発展していくことを学んだ。公共資産を「税金でつくり、税金で維持する」(木下, 2016:123)のではなく、民間を活用することで公共サービスを充実させ、さらに地価を上げ、固定資産税の歳入増加を目指していくことが、地域活性化への一つの道筋であると考えられる。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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