地方創生 ―何をするか④―

1.はじめに


 今回は、「地域ブランド」の取り組みについて考える。これに注目するのは、前回まで取り上げた「特産品開発」が、昨今では商品化までで終わるのではなく、「地域ブランド」として発展させる試みがあるからである。

2.地域ブランド


 地域ブランドは、2006年からスタートした地域団体商標制度をひとつのきっかけに、「地域ブランド」の取り組みが全国に広がっている(木下, 2016:48)。実際、米沢牛、大間まぐろ、といった伝統的に定着し、成果をあげる地域ブランドが商標登録される一方、玉石混交の「なんちゃって地域ブランド」活動が多数、発生している(木下, 2016:48)。玉石混交と表現するように、成功する例もあるが、それをまねて失敗したり、補助金(前回の話関連)目的で始めて失敗したりする例がある。

3.地域ブランド化の問題点


 地域ブランド化に至るまでに失敗する理由を、木下(2016)は3つ挙げる。
 一つ目は、世間一般に知られていないローカルな地域が、世界にありふれているような商品を地域ブランド化して地域活性化を目指すことである。なぜなら、地域ブランドは「一定の知名度のある地域」と「特徴ある商材」がセットになることで成立するからである(木下, 2016:50)。
 二つ目は、国や自治体の補助金を活用し、さらにコンサルタント頼みでその計画を進めることである(木下, 2016:51)。外部に委託すると、同じようなプロセスを経て同じような商品が出来上がるため、結果的に汎用品となってしまう。そうして、地域ブランド化が失敗してしまう。
 三つ目は、難易度が高い地域ブランド化に、地域がそれに見合った人的資源や時間、労力を割くことができないことである。ブランド差別化は顧客に対して特別な感覚を抱かせ、他の商品より積極的に購入したいと思わせるような、極めて定性的な無形資産を形成しなくてはならない(木下, 2016:52-53)。そしてブランド形成は、大企業が巨額の投資をしても簡単にできるものではなく、ブランドを維持していくことも難しい。

4.地域ブランドではなく付加価値


 木下(2016)は、地域ブランドに着手する前に、まずは自分たちの売り方、つくり方に変化を生み出すことによる付加価値向上策を模索することが重要であると考える。さらに木下(2016)は付加価値向上策として二つの実例を挙げる。
 一つ目は、「皆が売っていないときに売る」方法である。例えば、「羽田市場」では、年始年末に魚の消費量が増える一方で卸売市場は閉まっており、新しい魚が流通しないことから、地方の漁師と連携して地方空港から空輸で羽田空港に新鮮な魚を集めている。地方の漁師からすると、羽田で高い価格で魚の取引が行われることから商品の質を上げるために血抜き等の改善努力をするし、自分の名前を売ることもできる。新たな流通システムに対応し、皆が売らないときに売ることで、地方商品の付加価値を高めるのである(木下, 2016:54)。
 二つ目は、「お店の特定メニューに最適な品種をつくって売る」方法である。久松農園がその好例で、一般的な市場流通品種をつくって市場で売るのではなく、先回りで取引先となる飲食店を開拓し、さらにその飲食店のメニューに合わせて最適な野菜品種を選定し、作付けをする工夫を行っている(木下, 2016:54-55)。メニューに適した作物を作り、しかも事前に顧客に先回りもしているので、他にない特別な商品、関係が出来上がる。そして、商品が結果としてブランド化していくのである。

5.まとめ


 今回は、地域ブランドについて、ブランド化に至るまでの問題点と、地域は地域ブランドを考える前に付加価値向上策に取り組むべきであることを述べてきた。ブランド化のために商品を作るのではなく、商品の付加価値を積み上げた結果ブランド化するということを理解することの重要性を学んだ。

引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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